【梅原トレーナーのからだづくり哲学】トレーニングレポート No.112「ディフェンス・フットワークは試合で発揮されない(中)」
前回からの続きです。
誰もが取り組んでいるディフェンス・フットワークを、目に見える成果として試合に発揮し勝利に繋げることが今回のテーマです。
ディフェンス・フットワークが好きだというバスケットボール選手は稀じゃないでしょうか。トレーニングは負荷が強くて足にきついし、ボールを持たない練習はあまり楽しくありませんよね。
でも試合に強くなるためそれが重要であるからこそみんな頑張るのだし、なおのこと努力の証を結果として出したいはずです。
どうしてディフェンス・フットワークは大概にして、試合で実を結ばないのか?
それは前回の最後で記したように、練習としてのフットワークだけが完ぺきになっているからです。
要するに試合になればそう簡単にうまくはプレイできないのであり、ディフェンス・フットワークもきちんと実戦で鍛えていく必要があります。
スクリメージでフットワークをつくる
あくまでも個人的な一例ですが、私の場合はトレーニング・コーチであってもスクリメージを行います。先日は和歌山県のチームで、4対4および5対5で練習しました。
もちろんそこでパスをどこに回すだとか、インサイドをどう攻めるかと教えるのではなくて、体づくりで取り組んできたディフェンスの足の使い方、ドライブの守り方、ボックスアウトの仕方といったことを実戦で試す方法が、5対5になります。
これをしないと、ほとんどの場合はディフェンス・フットワークはものになりません。本当の意味で試合に勝つ武器にはならないでしょう。
実戦では、足の運びとか筋力だけではなく、他にも様々な因果関係を生み出しているからです。
しばしばチームの監督たちから「毎日あれだけフットワークしているのに、なぜディフェンスできないんだろう?」「けっこう頑張っているんですけどねぇ・・・なかなか成果が出ません」などと切実な苦悩をこぼされます。
だから価値を感じなくなって、やめてしまう人も多いのです。
それはとても勿体ないと言うか、次の一手を打たないために鍛えたファンダメンタルを自らが無価値にしてしまっています。
体づくりとしてのフットワークで終わらせず、次は対人のなかで訓練し、さらにスクリメージで訓練して完成していくものです。
人間同士の駆け引きを考慮する
5対5のプレイでディフェンスの仕方を見ると、なにが弱い原因かを探ることができます。それを見れば、単純にフットワークで足腰を強化することで良くなるものではないことに気がつきます。
足の出ない理由、左右に振られる原因、切り返せないのはなぜか、ドライブの一歩目に弱い人のパターン、そういうものがスクリメージにはっきりと映ります。
予測不能な生身の人間を相手にしていますから、いくらフットワークを積んだところで都合良くそのとおりに動けるものではありません。
ではどうして鍛えた足が出せないのでしょうか?頑張って強化した足を活かすために、どこを見てなにを改善すれば良いのか?
それは案外、視界をつくる脳の働きやそれを行おうとする意識の問題であったりします。
たとえば先日の練習では、わずか3時間でディフェンスが大きく向上しましたが、そこで課題としたのはシュート後の戻り方とオンボールへのわずかなアクションでした。
攻守の切り替わりにおいてディフェンスの意識が途切れ、ただエリアに向かって無目的に下がっていたのを、戻る一歩目から気を向けて、下がりながらもディフェンスの圧力を相手に感じさせようと試みました。
具体的にしたことはたったひとつだけ、「ピックアップ」です。
ピックアップすることで自陣への引き方が変わり、動く準備を整えられるようになりました。具体的には目が状況を観察し、頭がこれからを予測し、体勢がニュートラルなポジションに入ってどのようにも動ける状態になっています。
そうなっているので、訓練してきた足がよく動きます。ようやく自分の足の良さをゲームで発揮できました。
これは特殊なことではなくて、オフェンスよりも先にセッティングできていることが良い足を開放したのです。
締めくくりは次回
本レポートはこれまで4年ほど書いてきましたが、その私なりの経験と感じ方で1,800字を超えないように努めています。
あまり長いと読む側が続かないし、あまり複雑にならないようにしたいからです。
それでも書いていると2,000字を大きく超える場合もあって、それをうまく分けられないことも多々あります。
今回も少し半端なのですが、1,800を目処とするためにあとわずかですがここで止めて、次号に譲ろうと思います。
(さらにつづく)
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