【梅原トレーナーのからだづくり哲学】トレーニングレポート No.111「ディフェンス・フットワークは試合で発揮されない(上)」
バスケットボールの練習で、必ずと言っていいほど定番のものに「ディフェンス・フットワーク」というのがありますね。
どうでしょうか、多くは練習の序盤でそれが行われるだろうと思います。全国各地あれども、なぜか練習というものは皆似たようなパターンになっていきます。
私も選手らの運動技術能力を育てるサポートを仕事にしていますから、体づくりはただ筋肉を大きく太くすることではなくて、スポーツ競技力が向上することがゴールです。
人間の運動能力というものは、筋力はもとより技術的にも発達させられますから、私は選手のバスケットボール・スキルを伸ばすお手伝いも自らの重要な仕事だと考えています。
そこでよくディフェンス・フットワーク的なトレーニングを実施します。純粋な筋肉づくりと並行して、体の上手な動かし方を習得するための動きづくりをおこなっています。
試合での実感がある人は多いか
あなたも練習で毎日、ディフェンス・フットワークをしているだろうと思います。ディフェンスの足づくりは、試合におけるプレイ・スキルのベースです。
でもこのフットワークが、ほとんど試合に活かされていないことを知っていますか?
真面目に取り組んでいるかデタラメにやり過ごしているか、という話ではありません。大まじめに頑張って練習している人も、やっているほどの成果はコートに見られません。
考えたことはありませんか?こんなに頑張って辛いフットワークをいつもしているのに、どうして試合に勝てないのだろう?と。
鍛えたものが体力として身についたのならば、試合においてその成果が見えるはずです。足が動き、相手のオフェンスを苦しめ、リバウンドもたくさん取れ、失点が減るはずです。
それが果たせている人やチームはどれくらいあるでしょうか。成果結果が出ないのならば、フットワークなんて頑張る必要が無ければ体力トレーニングもまるで意味がありません。
ディフェンス・フットワークはどうして試合に活きないのか、それをあなたと考えてみたいと思います。
大事な部分を見落としている
ありのままに言って、ディフェンス・フットワークなるものをしているチームは多々ありますし、そこに拘って何十分いや一時間近くそれを頑張っているチームもありますが、その努力分がきちんと試合の成績に出ているとは言い切れません。
どちらかと言えば、頑張っているのにやっぱり勝てない、オフェンスの強い相手にやられてしまうことに頭を悩ませている人は多いのではないかなと察します。
その原因はただひとつ、体力づくりをそれだけで終わらせているからです。
とくにディフェンス・フットワークとなると、シンプルに心肺機能が上がってスタミナがつくようなもの、脚力がついてスピードが速くなるものとは違い、技術的側面の強いものです。
ただその体力要素を専門的な鍛え方で培っただけでは、本番で能力が発揮されることはありません。
なぜなら決まった動作を自分で自由に動かすことはできるようになっても、試合では人間対人間の予測も決まり事もない未知の展開が起こるからです。
咄嗟にその瞬間この瞬間をどう動くか、対処するかは、実戦でじかに磨いていくほかありません。そこが抜け落ちているために、せっかく頑張って取り組んできたフットワークが、本番ではまったく役に立つ事なく終わってしまうのです。
フットワークだけは素晴らしい
私は普段、一対一のディフェンス・フットワークもプログラムしています。でもこれでは実戦にまだ足りていません。
バスケットボールの試合で、当然1on1のシチュエーションはいくつも起こります。起こりますが、それは10人で動く流れの中である瞬間に訪れる状況であるし、コート上は両端にあるゴールを行ったり来たり、つまりラリーの繰り返しになります。
そんなゲーム展開がバスケットボールのスタイルですから、フットワークで一対一の場面だけ取り出して足づくりをしても、全体に混じれば勝手が大きく変わってしまうのです。
分習法などとよく言われますが、分習は全習があってこそ意味を成します。つまり一対一で対人のディフェンス・フットワークをどれだけ高めても、本番では簡単に破られ得点されてしまうことは決して珍しくないのです。
ではどうするか。
今日はここで一旦筆を置いて、次回に続けることにしましょう。
(つづく)
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