無いものを創り、いまを変えること【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
2022年の新年度を迎えました。
今日は誠に僭越ながら、私から今年ご入学の新入生たちに、ささやかなエールを送りたいと思います。
あなたにはぜひ、
「過去を壊すことを恐れず、これからに必要な新しいことをたくさんしてほしい」
そのように、心から願い応援いたします。
創ること、変えることを新しい生活環境でたくさんチャレンジしてください。
いつも過去を気にする
日本人は一度決めたことを改めることが苦手、といった為政者がいます。為政者とは、たとえば国会議員などの政(まつりごと)を行う人たちのことを言います。
脈々と受け継がれてきた伝統、それが世界でいちばん長く存在する国「日本」を支えていることは確固たるものです。
でも私はその言葉に、自分のこれまでを振り返り「言えてるな」と素直に思いました。
いまあるものを変えること、やめること、これまで続いてきた手順を手放さなきゃいけないことが、時として起こり得ます。
そのときに尾を引かずスパッと次へ切り替えることのできる人が日本人には総じて少ないと、自分の事だけじゃなく見聞きした経験として強く実感しています。
決めることより守ることが得意
尾を引かず、未来に向けて常に前進する思考でありたい、そう思っているつもりでも、結局、過去に引きずられていて一歩が重たい。
最近はとくに歯痒さを感じることが増えました。
私たちはこの日本において、つねに慣例を準拠します。生活上には絶えず「一般的には」「普通は」「みんなそうだから」「従来どおり」といった、いつもと同じでいこうとする姿勢が圧倒的です。
それは当然、子どもが親に生活を支えてもらっていて何も考えていないから、では断じて無く、大人がすでに慣例の従者となっているのです。
同じことをすれば何も言われず、責任を逃れられ、考えて生み出す苦労もなく、動く面倒もない、もちろんそれはあります。
しかしもっと根本的な理由に、一度決めたのだからそれを変えることは道理に反する、という正義感があるように思います。
時間を掛けて考えて、皆で話し合いもして、なんとか一旦は取り決めたことをやめてしまうというのは、その努力を無下にする行為であり苦労した人たちに配慮がない、また同じ労力を繰り返せと言うのか、という過去への厚い遵奉(じゅんぽう)が日本人の心底にあるように思うのです。
これは決して、私の勝手な想像ではありません。
みんなが植え込まれる原則
こういった日本と日本人の持つ気質は、やはり教育や躾に大きなひとつの原因が隠されていると考えます。
私は人の性格(人格形成)について、育て方よりも触れ合い方に影響を受け、人間関係によって創られていくと信じています。
何を教えようと躾けようとその中身は対したことではなくて、人同士のコミュニケーションつまり付き合う様子で自然と身についていくものが、性格や所作に備わっていくのです。
しかしあえて「教育や躾に原因がある」と申し上げるのは、社会へ馴染んでいくにつれて私たちは自分の発想や行動よりも、世間に合わせる傾向が強くなっていくからです。
その中で絶対的な色として「黙って決められているものに従いなさい」とする原則があって、家庭の躾や学校教育を通してすべての日本人に染み付いていきます。
たった今が大人でも子どもでも、皆育てられる時期に同じ原則を教わりますから、いざ新しくしていかなくては、となったときに「急に違ったことをするのは・・・」と腰が重くなるのです。
変えてこそ過去が生きる
伝承という言葉があります。脈々と続くものは貴重であり、実感できないほどの果てしなく長い年月を経て、世代を幾度も越えて日本人として繋げてきました。
そうして今の発展した世の中があるのは紛れもない事実です。
でもそれは過去に引きずられて「変えない」のとは、まるで意味が違います。
前の世代に誰かが形づくったものを土台として、さらに今の人々が上塗りしていく、修復しまた改築増築してという作業をずっと繰り返してきて物事は長く保ち続けるのです。
だから、現代の私たちだけ何も考えず変えず、ただ慣例通りに従っていくだけで「さらに良いものを創ることはしない」という選択は、大きな誤りです。それを家庭や学校で頭に植え込んではいけません。
過去を土台として、現在と、未来へ向けて前例のないまったく新しい良きものを創り出していくことこそが必要なのです。
おれは新しい自分を創っているか?
新しいことは別に、コロコロと発言が変わるとか無責任ということではなく、わずかでも「さらに良くしよう」と欲せば以前のもの過去のものより、何かしらテコ入れした強化版が出来上がります。
たとえ1mmずつでも工夫された最新版(いまどきで言えばアップデート)が形づくられていくことで、いまと未来に必要な役立つものとなります。
私たち日本人はその歴史的な気質から、壊すことに強い抵抗感を抱いていますが、そもそも創れば前のものは自然と壊れるのです。
創ることは壊すことであり、いまでもすでに過去のものを壊して生きています。
たとえばスポーツで記録を塗りかえることは、過去を壊すことそのものではありませんか?
スマホやタブレットがどんどん進化して驚くような性能を持つのも、過去のアナログやガラパゴスを壊しているのです。
それには何も抵抗がなくて、社会一般的な日常にあるものほど慣例に囚われるのは、なんとも不思議な話です。
未来はすべて新しい
今年、小学校から大学まで、各世代で新しい世界へと飛び込んだ新入生の皆さんには、ぜひこれからのために必要な知恵を絞って、これからのための「新しい」ものをたくさん創り出してほしいと願います。
変えることは悪いことではありません、それが必要であり大切なことならば、未来を見ているあなたの発想が良い結果を生むでしょう。
どうぞ積極的にあなたと、その周囲と、学校、地域、そして社会をアップデートしていってください。
心から、ご入学おめでとうございます。
(了)
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