【梅原トレーナーのからだづくり哲学】タッパ飯とスポーツ・メンタルに共通した誤謬(上)
スキルアップ トレーニング フィジカル(身体) 梅原 淳 食トレ
物事を行うときには知識が必要だ。それは「より精確な情報」とも言うことができ、そこから様々にものを考え確率を上げたなかで実践に起こすことができる。
ただ皆が皆、博学となり専門家のような詳細な知識を要することは難しい。それはほぼできないし、深い学問的知識がなくとも物事を正しく理解できていれば充分なのである。
必要なのは複雑な専門言語とか数値ではなくて、大事な押さえるべき趣旨つまり物事の目的や内容を正確に捉えているかどうかだ。
私たちは、ぱっと見でものを判断というか決めつけるところがある。TVで流れた内容をそのまま信じたり、電車の中刷り広告に書かれた言葉(雑誌の目次)だけで、勝手に多くを想像して決めつけたりしてしまう。
スマホアプリに表示されるニュースのタイトル一覧も、それだけを見て一定のイメージを抱いている。
じつはその見聞きした情報は、ほんの一言や一文だけで内容はとても少なく浅いものであるのに、たったそれだけの情報量で知ったつもりになり、ほぼ100%そのまま鵜呑みにもする。
あなたにとって重要なスポーツに関する話題でも、その危うさは少なくない。
タッパ飯がなぜか悪いものになっている誤り
たとえば私の出すレポートには、食に関する内容も多い。
體づくりに必要な栄養について、アスリートのご飯事情を指摘したり思いきった提案をしたりをこれまでたくさんしてきている。
その中で以前に、私が體づくりに携わるチームにおいて日々の食事を保護者らと一緒になって取り組んでいることをレポートした。
部活での運動量、これは体力トレーニングもプラスされた上で「栄養が足りていない場合を考えましょう、それが選手自身の成長に大きく役立ちますね」という投げかけだ。
そこに着手している学校の部活動は少ないので、不肖私からチームに提案して、手が回るチームについては実践を試みてきた。もちろん今もそうしている。
その主軸として、お米を食べられるようにしましょう、というものがある。日本人の主とするものは古来より米(穀物)であり、それを安定的に食べられる慣れの訓練の意味も含めて、弁当は「タッパに米」を基本としている。
さらに摂るべき栄養を専門家ではない選手や親御さんでも簡単に覚えられるように整理して、簡素化した上で確実に実行するためにそうしている。
昨今はそこにタッパ飯などという言葉を創り、それをいかにも悪者にしてしかも場合によっては根性論みたいなものと同義にして、非科学的、不正確、理不尽なことのように語る方々がいる。
言うまでもなく、あきらかな情報の不足と言える。
タッパ飯の本質
これはありのままに申し上げて、賛成派にも反対派にもいい加減さとズルさが垣間見える。
好意的であり積極的に取り入れている人は、精確な食事のプランを持っていない。プランがないのは、基本的な知識がないということだ。だから反対派からそれを非難されても、かばいきれない面がある。
また反対派も、すでに書いたようにタッパ飯やドンブリ飯のフレーズを、自分たちの主張を盛り上げるためのヒール役にうまく利用している節がある。
では自ら食べたくてたくさん食べているアスリートを、真っ向批判しようというのだろうか。食が細い子について、あきらかに不足している現実を「食べなくても良い」とでも言うつもりか。
米だろうと野菜だろうと肉だろうと、量を食べられない人はそれを鍛えねばならないし、一般的に言うところの「ご飯」を食べずスナック菓子やジュースばかりの人間は、今後の人生すべてを考えてもそれは改めたほうが賢明だ。
そういったいくつかの改善点について、具体的に手段を図ったなかにタッパ飯やドンブリ飯がある。
食事を考えるに至る現実
走り込んでもすぐに足が攣ってしまう選手、スタミナが伸びていかない選手、いつも練習中に潰れてしまう選手が、実際にいる。
體づくりをしているのに怪我の受傷率が高いチームも、週3回もウエイト・トレーニングをしているのに體が大きくなっていかない、むしろ細くなっていく選手も、日本の子らのありのままの現実だ。
運動を伸ばしていくために体力づくりをしているのに、反対に色々と落ちている逆さまな現実を変えるために、私たちは食を考えてみようと試みる。
そこに
- 米を食べない子ども
- 量が極端に少ない子ども
- おやつのように好みと気分で食べる子ども
- 水分ばかりの子ども
- 甘い菓子だけで満たそうとする子ども
がいて、それはまさか現在だけの事ではなく、そんな人は幼少からそのような食生活をしてきている。
それを根本から変える手段が必要であり、具体的なアクションとしてたとえば学校に持っていく弁当は米をたくさん詰めて、それがただ普通の弁当箱には入らないので、どの家庭にもあるプラスチックのタッパにみんな入れて持って来ているだけの話である。
それをタッパ飯とだけ言っていれば良いという思考、タッパ飯であることが大事でありそれを主に置いているかのような印象を持たせることは、あきらかなご認識と情報不足だと言わざるを得ない。
私たちはもっと精確かつ客観的な内容を掴んで、ものを考えたり語ったりする必要がある。
さらに
もうひとつ、メンタル・トレーニングなるものが現場に入っていくときの、それを活用する私たちの理解の曖昧さもタッパ飯と似たようなところがある。
それを次回に考えたい。
(つづく)
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