【梅原トレーナーのからだづくり哲学】幼い頃の遊び方がいまの成長の大小をつくっている(下)
本レポートの本題は、子どもの頃の遊びであった。前号はそれをいま学校で部活動やクラブをしている生徒さんが、ここからどのように未来をつくっていくか、過去から学んで前へ進もうという話であった。
今回は締めくくりとして、現在小学生から下のお子さんを育てている親御さんに向けて書いてみたい。
大人は関わらないのが一番良い
親子で公園や広場へ出かけ、一緒に遊んだ経験またそのような光景を目にすることがあると思う。月齢が低いほど危険が増えるし、都会では家の近所に遊ぶ場が少ないことも理由の中にはあるだろう。
いずれにせよ、いまはお父さんにしろお母さんにしろ、子どもと一緒に遊ぶ機会が私の子ども時分とは比べものにならないくらい増えたし、そのようなご家庭も格段に増えた。
さて、子どもの遊ばせ方がある、とふたつ前の(上)で申し上げた。遊ばせ方とはなにか。
一番良いのは、親が一切関わらないことである。それは親がその場に入ると、良い出来を望んでしまうからだ。どちらかと言えば父親にその傾向が強い。
レッスンパパになっている人をよく見る。あなたにも経験がないだろうか。気づくと熱心に教えている自分がいたりする。
大人はできて当然だし、またそのイメージもあるので結果を求めてしまうが、子どもの意識はまったく違う。やってみるのが楽しいのだ。やってみて、なんだか面白いし楽しいからもう一回やりたくなる、何度でもやってみる、これが子どもの遊ぶ理由だ。
それと大人の目的が合わないのだから、子どもの遊びに大人が入ることは良い面がない。だから大人はいないのがベストなのだ。
あなたも自分で学んで育ったはず
かく言う私も現在2歳の男児を育てる父親であるが、たまに大型遊具のある公園へ連れて行くと、みな親子で楽しそうに遊んでいて大変微笑ましい。
中には自分も遊具に登ったり入っていったりする親御さんもいて、手取り足取り教えてよく遊びに付き合ってあげている。
良い悪いではなくて、子の自ら育つ力を芽生えさせたいのであれば、本当は放っておいた方が良い。その場にはいないとケガの危険もあるし迷子にもなるから必要だとしても、親は外で見守るだけにすべきだ。
親の手ほどきや付き添いなどなくとも、子は勝手に楽しんで遊ぶ。そしてそうやって遊ぶときのほうが、脳と体がよく刺激されてものを覚えるのも早い。
これが自分で学ぶ能力の発達基盤となる。
学ぶという行為は、自分でつくるものであって決して他人から躾けられるものではないと言うことを、大人は配慮する必要がある。自分の過去を振り返れば、おそらくそうだったはずだ。
教育が成長の妨げをしている可能性
自分で身につけても教えて身につけても、結果は同じだと思う人もいるはずだ。しかしこれが運命の分かれ道である。
子育ての第一段階で、遺伝子に備わっている自己発達の力を抑えつけてしまってはいけない。それこそ生命が育つ原理なのだから、レッスンパパとしつけママは度が過ぎれば成長を妨げていることにもなってしまう。
大人はどうしても自分の望むほうへ、子を導きたくなってしまう。それを大人こそ理性で抑えなくてはいけない。子は育てなくても勝手に学んでいく遺伝子を持っているのだから。
寄り添ってあげることやサポートしてあげることは大切なので、その域を超えないことが大事だ。あくまで物事の習得は、子が自分で遊んで勝手に身につけていくので、何も心配いらない。
学ぶ能力を育てるために遊ぶ
遊ぶことから学びの能力を育てることに、本来の遊びの価値があると私は考える。
学問をすることが勉強で、そうではないことが遊びと位置づけられているが、なにをしたって自由に学べばすべて遊びである。
本テーマでずっと繰り返し申し上げているが、自由であることが遊びであるし学ぶことに遊ぶ意義があるから、それはつまりどこまでも本人の世界だし、本人の課題と言える。
他人が介入することは、それを台無しにしてしまうことになりかねないので、できるだけ親は子の遊びに関わらないほうが、その遊びは濃くなる。
これが果たされず、親の意向が強く反映されると、生きる上でもっとも大事な「学ぶ習慣」が身につかない可能性がある。
学びのない子がする遊び、学ばない遊び方はマイナスしか生まない。現実を言うと、それが多いからこそ「遊び」という言葉が悪いことの意味で使われるのだと思う。
オモチャに使い方などない
もし良い遊びという考え方があるとすれば、それは学びがある遊びだと言える。
あなたのご子息・ご息女は、遊びから学んでいるだろうか。その遊びは学びのつくられる遊びだろうか。
最後に個人的な話をすると、自分も父親として経験上このように思う。
親の選んだオモチャは、大抵が学びのない遊びとなるものが多い。どうも無意識に、そういうものを選んでしまっている気がする。
またその遊び方も大人側にイメージがあるので、それに沿うように働きかけてしまうところもある。
いつ、どの程度、どのようにそれを使うか、それはすべて子の勝手だ。正しい使い方などなく、遊び方などない。ガチャガチャいじってみて、自分で色々覚えていけば良いわけだ。
大人が入るとそれを妨げることになる。公園の大型遊具や野球やサッカー遊びもオモチャだと見立てると、やはり大人はいない方が望ましい。
どう使って遊んでもそれは子ども自身の素晴らしい閃きだし、驚くような発見と工夫だ。いろんな奇跡が生まれる。
これが学びと言わずなんだと言うのか。
賢さはここからつくられる。自分で自分をちゃんと育てていると、我が子を見て実感する。
三回に分けて書き、最後が一番字数を増やしてしまったが、ここまで読んでくれたあなたには、本レポートがわずかでも成長のきっかけとなることを強く願う。
どうぞお子さんの成長をじっと見守ってあげてください。そして学びのある遊びをさせてあげてください。
▼関連リンク
幼い頃の遊び方がいまの成長の大小をつくっている(上) 幼い頃の遊び方がいまの成長の大小をつくっている(中)
(了)
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