トランジションでミスマッチになった背景を考察する~MHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクのディフェンスより9~
引き続き、ドイツリーグ及びBASKETBALL CHAMPION LEAGUEにも参戦しているMHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクのディフェンスを題材にしたいと思います。
同チームは、日本バスケットにも縁のあるジョン・パトリック氏がヘッドコーチを務められており、非常に激しいディフェンスが特徴です。
また、同コーチは日々のプロセスに対しても確固たる信念をお持ちのコーチです。
同コーチは、他のチームよりもディフェンスのフットワークや練習を、数多く実施していることを述べられていました。
ただ単にフットワーク等で肉体的に追い込むだけではなく、チームのスタイルを浸透させる意図もあるようです。
チームが要求しているディフェンスの水準、スキル等を明瞭に示し、それらを織り込んだドリルを反復する事で、チームのスタンダードとして定着させ、基盤を構築するアプローチを語っていました。
また、他のチームよりもディフェンスの練習量が多いことについては、「既成概念に縛られずに物事を考える事」(『Think Outside the Box』)でも言及されていました。
選手をリクルートする際にも、自チームの練習スタイルを明確にされている様子が伺えます。
前記事では、トランジションの中でミスマッチになったケースを扱いました。トランジションでのミスマッチを守る
今回では、その現象に繋がる前のオフェンスについて考察をしてみます。両チームの駆け引きに迫ってみたいと思います。
1.構図
2.流れ
フリースローの次のオフェンスです。相手チームは、ゾーンのようなディフェンスを仕掛けてきます。
この一つ前のポゼッションでもゾーンディフェンスをしていました。
フリースロー後、選手同士もディフェンスの合図のようなジェスチャーを相互に交わしています。
ボールマンにはマークをしていますが、1‐3‐1のような陣形を取っています。
そして、画面の左下にはインサイドプレイヤーであるX4(208 cmのカイル・ウィルティエ選手)が配置されています。
画面奥、MHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクのコーナーの選手が図のようにポジションを変えますが、相手はゾーンディフェンスのようにエリアを守っています。
特に、X3の動きを見ていただくと分かりやすいと思います。
ハンドオフでパス交換されるタイミングで、ゾーンディフェンスからマンツーマンのディフェンスのように変更されました。
ここで、オフェンス側のアウトサイド選手と、ディフェンス側のインサイド選手とのマッチアップになっています。(2 vs X4のマッチアップ)
その後、MHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクは、ボールを画面手前のコーナーにパスをし、3Pシュートを放ちます。
ディフェンスリバウンドが発生し、「トランジションでのミスマッチ」のシチュエーションとなりました。
3.まとめ
本稿は少し特殊なシーンといえるかもしれません。トランジションでのミスマッチが発生するケースの一例としてご紹介しました。
代表例は、オフェンスチームのボールスクリーンに対してスイッチで対応し、そのミスマッチを守り切った場面でしょうか。
東京五輪2020での男子日本代表は、スロベニア代表戦でスイッチを実行しアウトサイドシュートを放たれた際、日本のアウトサイドvsスロベニアのインサイドでのリバウンドの攻防で劣勢になり、失点を許す理由の一つとなりました。
ここでは、スイッチ後にアウトサイドの1対1で仕掛けてくるケースを題材として考察しましょう。
この局面で求められるのは、
- インサイド選手が相手の1,2番選手のアウトサイドからの1対1を守ることが出来る
- 2番、3番のポジションの選手が相手のインサイドとのリバウンド争いで優位orチップアウト等で切り抜けられる
のであれば、オフェンスに転じた際に非常に優位になる可能性があります。
同時に、そのようなチームと対峙するチームの場合は、トランジションでのミスマッチの対応策までを含め、ゲームに挑む準備をする必要があるでしょう。
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株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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