トレーニングメニューを決めるときの材料【梅原トレーナーのからだづくり哲学】

スキルアップ トレーニング フィジカル(身体) 指導法 育成法

今回は筋力トレーニングの秘められた意義を、私の提案と合わせて書いてみたい。

この原稿を書いている日も、午前に福島県の高校チームで1dayクリニックをおこなってきた。

監督から、ボールを持った練習以外の時間帯をあえてつくってウエイト・トレーニングを行わせたいとの要望があり、それを題材にして三時間にわたり選手らに合いそうなものを私がチョイスして実技指導をおこなった。

選手に「合いそうなもの」とはなにか

マッチングという言葉を最近よく耳にするが、私の場合は時間なり場所なり人数なりの環境、人間であるからその性格、現段階の競技レベルと運動レベル、目標など、様々なものを引き合いにして必要なトレーニングを見つけ出す。

トレーニングは基本的に運動生理学のセオリーにしたがい、内容をプログラムする。理論的に正しくおこなう当然の方法であるが、実際にはただその点だけで全体の構成を決めるものではない。

ジャンプ力にはこの関節が重要だからこの種目で鍛える、筋力向上はこのように重量と回数を算出して合理的におこなう、バイオメカニクスの観点から正しいフォームと関節角度はこうなる、などといったものはトレーニング理論から発せられるセオリーだ。

しかし実際に子どもらのスポーツ環境に関わると、トレーニング効果を出す要因、競技成績向上にまでしっかりと繋げるための核心は、そのセオリーとはまったく無関係な別のところにあると気づく。

運動科学などまるで通用しない

からだへ影響する因子とは、トレーニングが「科学的であること」だけに限られない。限られないし、本当はもっと別のところを鋭く捉えて正しくアプローチする必要がある。

とくに大学生以下、もっと低く見ても高校生以下の場合においてその大半は、運動生理学やバイオメカニクスのセオリーよりも選手らの「心理」を主体に種目やシステムを構成することが、より実用的で効果的と言える。

これは同じ人間であるから、成人でも変わらずプロ選手でも同じことだ。しかし少なくとも社会人やプロフェッショナルは人生の中心にスポーツがあって、さらに仕事であったりもする。

大学生以下の頃は「気」のオンオフが多く、また集団で行動するのでその気も伝播しやすい傾向がある。とくに注意が必要である年代であると考えたほうがよい。

メニュー構成としては理論立てられていて正確であるにも関わらず、成果がまるで伴わないことがある。それは稀でもなく、どちらかと言えばつねに伸び悩む選手やチームのほうが多い。

その理由は、運動科学的なセオリーしか考えていないからだ。

トレーニングにはもっと大事な、成すべきことと為すべきことがある。

こんなはずじゃ・・・

現場に立つコーチやトレーナーが、そこにいる選手およびチーム全体を前にして得る事実はなにか。どのようなことを感じ取り、ハッと気づき、もしかしたら・・・と良き策を実行することができるだろうか。

ほとんど多くのスポーツ少年少女らは、自分の目一杯を出し切れていない。本当の目一杯までとは言わずとも、少なからず「よしやるぞ」と精力的に取り組んでいる人は確実に伸びるし、成果も出る。

それをできないのが、思春期の子どもたちに見られるひとつの特徴と言える。

厳しいことを言えば、サボろうとすること、楽をしようとすること、フリしようとすること、続かないこと、気まぐれなこと、その場しのぎであること、裏があること、気安いこと・・・・そんな心の未熟さが自らの成長を妨げている。

本当はもっともっと、ウソじゃなくお世辞でもなくて確実にまだまだ大きく上達できるのに、それを果たせず失敗する。そして試合をすれば予想を遙かに超えた惨敗。自分でも愕然としてしまう。

それをどうやって克服するか。

前へ進むための策

コーチは選手の行動の曖昧さをどうやって鍛え上げてしっかりさせるか、言わずともそれがトレーニングの役目であると理解していただけるだろう。

そして材料として大事なのは運動科学の理論と方法以上に、選手を目の前の厳しい鍛練に集中させることにある。

鍛練に集中させ、達成しようと真剣に試み、乗り越えるべく踏ん張り、めげずに次へ向かう。黙々と積み重ねることをできるかどうか、それを問いまた思い出させるワークアウトをプログラムするべきである。

非科学的な悪いトレーニングを行うことはまずいが、それだけしか手立てがないとおそらくほとんど育成年代のスポーツは前へ進まない(大人でも場合によっては同じ)。

うまくいかないときは気力が沈んでいたり、視点が狭く縛られていたりすることが大半なので、固定し留まっている状態を脱する試みをトレーニング・プログラムに入れると良い。

メニューをつくるときの観点を変えてみよう。

狭き一点から脱する

ある高校チームでは、従来型の「部位別に10種目」「10回×3セット(休息2分)」「三人ひと組」のようなウエイト・トレーニングから変えて、サーキットのかたちにした。

重量も回数もガラッと変え、種目の順番や部位分けも考慮していない。組もつくらず黙々と一人で行う。目的がそこにない。

私のサポートするチームで、そのような方法を取っているところは他にない。

彼らの性格的特徴といまの行動から熟考し、望む成果へと繋げうる必要な手法としてそれを選んだということだ。

それは彼らに「合った」方法であり、また「必要な」方法とも言える。

サイエンスよりも大事な材料を中心にメニューを構成した。

これが絶対だとは言わない、あえて「べきである」としておこう。あとはあなた自身の現場に照らしてご自身で活かしていただきたい。

(了)

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この記事を書いた人梅原淳梅原 淳
運動技能を向上させる専門家として、またバスケットボールでのファンダメンタル・スキルを教えるコーチとして全国各地に出向いています。またその活動から得た日々の思考や発見を、YouTubeなどSNSを活用して情報配信しています。このコーナーで扱う内容は、それらSNSでは記さない一歩踏み込んだ情報として、トレーニング実践レポートをはじめ自分の育て方、大人の再教育、子育て、健康づくり、みなぎる食事など、あらゆるジャンルをテーマにお届けします。