スペインピック&ロールを巡る攻防6~女子アジアカップ日本vsオーストラリア戦より~
女子アジアカップ準決勝、日本対オーストラリア戦を題材として6記事目となります。引き続き、スペインピック&ロールの攻防を取り上げます。
今回の題材は、以前の記事でも取り上げた形が題材となります。
今回、オーストラリア代表は韓国代表の以前の記事とは異なるディフェンスで対応をします。それに対し、日本代表チームのオフェンスを考察していきます。
日本女子代表チームは、バスケットの局面を下記の5項目で分類しているようです。
- オフェンスに入る→キャスティング
- チャンスを作る→クリエイト
- チャンスができた→チャンス
- アタックする→ブレイク
- シュートをする→フィニッシュ
今回は、「オフェンスに入る(キャスティング)」と「チャンスを作る(クリエイト)」は前回の記事と同じです。
その結果、発生したチャンスが異なっている為、「アタックする(ブレイク)」以降のプレーが異なります。
1.プレーの構図
2、流れ
図のように、ウィングの選手(2番)が横方向にコートを駆け抜けます。
インサイドの2名がスクリーンをセットし、逆サイドのウィングでのボールレシーブをサポートします。
パスをした後に、ボールサイドの選手(図3)にボールを受け渡します。
その後、2番はスルスルとペイントエリアへと侵入していきます。
また、スクリナーの一人の選手は反対サイドのコーナーへと走り抜け、スペースを確保します。
ボールを受けた3番は、再びトップの1番へとボールを戻します。
その瞬間に、5番の選手がボールマンにスクリーンをセット。
ボールを受け取る側と反対側の為、ディフェンスとしてはスクリーンの予測が難しくなります。
同時に、2番の選手はスクリナーのX5にスクリーンをセットします。
この場面、X5はボールスクリーンに対し、マークマンを交代する事で守ろうとしました。
トップに移動する2へはX1が、インサイドにはX3がマークをしています。
ボールを扱っている宮崎選手は、自分のマークマンがインサイドの選手であり、平面的な動きで自分自身が優位であることを自覚した上で、ゴール下へとアタックをします。
その際、X2の選手がボールマンをケアしようとしています。
その隙を見逃さず、3がゴール下へと飛び込みました。
1番・宮崎選手からパスが通ります。
その後、X3が3のマークをしようとした隙をついて、3番から5番へとパスが通りました。
残念ながらゴール下のシュートは外れましたが、5番・オコエ桃仁花選手がゴール下の非常に優位なポジションでボールをレシーブしたことに価値があるといえるプレーでしょう。
3、まとめ
このプレーの特徴は、スペインピック&ロールで発生したチャンスを宮崎選手が見逃さず、一瞬で判断をしたことが非常に素晴らしい局面だと思います。
もし、ゴール下へのパスコースやトップの3Pシュートの『ノーマーク』だけをチャンスと捉えていたら、戸惑ってしまって適切なプレーの判断が出来ないのではないでしょうか。
スペースがない代わりにスピードや高さで優位があることを自覚し、すぐにアタックをする決断をし見事に周りの注意を引き付けたことが、良質なシュートチャンスを作った要因ではないでしょうか。
最後の局面で、3番・赤穂選手の進行方向の先にもパスコースがあれば、ノーマークの3Pシュートを放つチャンスもありました。
映像でも、4番の選手が少しだけポジションを移動し、パスを受ける可能性について準備をしている様子も見て取れます。
各局面で、ボール保持者・インサイドで合わせる選手・アウトサイドで合わせる選手が見事に連携をした場面でした。
女子代表チームの強さの秘訣は、複雑なフォーメーションではなく、各局面で適切な判断を実行し続けられる部分にあると感じさせられる場面でした。
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株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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