遂行力の高いスペインピック&ロール~アジアカップ日本女子代表のオフェンスより1~

オフェンス スキルアップ 戦術 片岡 秀一

今回より、新生・女子代表チームの戦いを取り上げていきたいと思います。

初回は、アジアカップの中でチームオフェンスの良いアクセントになっていたスペインピック&ロールを取り上げます。

現在、同チームは「夢を与えるチームになること」を代表チームの活動の目的に据えられています。

  • 「夢を与える」については定義があり、右記のように語られています。
  • 「自分もやってみよう、やってみたい」というエネルギーをプレゼントすること。
  • 「(バスケのプレーだけに限らず)生き方や、姿勢を、自分の生き方の中にも取り込んでみたいと思えるようなエネルギーを与えること」

その上で、バスケットボールのコート上では『選手が自信を持って判断するバスケットの追求』をテーマとして掲げられています。

本稿では、選手自身が判断する前段階のプレー紹介も多く、フォーメーションの解説にもなってしまうきらいもあるかもしれません。
ある種、同チームの目指す本質的な部分からは少し離れるかもしれませんが、女子代表チームのプレーであることには間違いありません。

「私たちの金メダルに向かう挑戦によって、私も夢を抱いて挑戦したいという思う人が増え、そんな人で溢れるバスケ界になれば、私たちの目標と目的のどちらも達成できると信じています。ワクワクが溢れるバスケ界に、皆様とともに向かっていきたいと思っています。」とも語られ、志高く取り組まれているチームの活動が、一部だけでも伝えられれば幸いです。

1、プレーの構図

女子日本代表スペインピック&ロール1 女子日本代表スペインピック&ロール2

2、プレーの流れ

ウィングの選手が横方向にコートを駆け抜けます。
インサイドの2名がスクリーンをセットします
逆サイドのウィングでのボールレシーブをサポートします。

パスをした後に、ボールサイドの選手にボールを受け渡します。
スルスルとペイントエリアへと侵入していきます。
また、スクリナーの一人の選手は反対サイドのコーナーへと走り抜けてスペースを確保します。

ボールを受けた3は再びトップの1へとボールを戻します。
その瞬間に、5がボールマンにスクリーンをセット。
ボールを受け取る側と反対側の為、ディフェンスとしてはスクリーンの予測が難しくなります。

同時に、2はスクリナーのX5にスクリーンをセットします。

X5は、ボールスクリーンに対して下がりながら守ろうとしていました。後方からのスクリーンに気が付かず、5がゴール下へと飛び込むことを許してしまいました。

ボールを扱っている宮崎選手は状況を的確に判断し、リング下へパスが通りました。

3、まとめ

まずは、スカウティング等をしていない場合に、相手チームにとっては非常に守りにくいオフェンスであることを解説したいと思います。

3がX5のスクリーン(スペインピック&ロールの最後のスクリナー)になることは、なかなか予測がしにくいと思います。

何よりも、この場面で大切なのはボールを持つ宮崎選手の判断です。

X5が3のスクリーンに当たり、ゴール下近郊のスペースが出来たことを見事に判断し、的確なパスを通しています。

仮に、類似したケースでX3がゴール下のパスコースを消している場面では自らのジャンプシュートを迷いなく放っています。

本プレーが大会の中で有効に機能したことは、フォーメーションが守りにくい構造であると同時に、選手の遂行力の高さも大きな理由だといえるでしょう。

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この記事を書いた人片岡秀一片岡 秀一
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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