【梅原トレーナーのからだづくり哲学】コロナ禍で今後スポーツ選手が選択すべき練習のかたちが変わります
先日、大学生のバスケットボール選手とパーソナル・レッスンをおこなった際に、チームでおこなう場合と個人の場合ではまったく異なる面があることを見つけました。
これはそれぞれの特徴であるので活用のしかたによって良くも悪くもなりますから、コーチとして明瞭に理解することが必要だと思い、少しここでも触れておきます。
スポーツコーチやトレーナーはもちろんのこと、とくに選手と保護者の皆さまに読んで頂ければ幸いです。
チーム指導の価値
チーム指導では内容を複数人の仲間と共有し、同じ境遇を一緒に背負って進んでいくことによって個人指導にはない力と進み方を生み出します。
辛いとき、横を見れば歯を食いしばって頑張っている仲間の顔があり、またエナジーと勇気を沸き立たせることができます。
一人ではできないことも仲間がいることで乗り越えられる、そんなことが実際にあって、その特徴をよく理解しているコーチはチーム指導に長けています。
学校でのクラスとスポーツにおけるチームは同じようでまったく別物であり、一緒の空間で勉強してはいても、教室のあの環境はどこまでも個人が学ぶ場所です。
それとチームは大きく違います。
クラスには40人がいれば40個の目的があって、そこがスポーツにおけるチームの場合は皆が一点に視線を注いでいます。
試合で勝つという全員に一致した目的があり、そのためにこそ選手は日々自分の技量を磨いています。
そうであればチーム指導もその自然なあり方に沿って、一致した目的を果たすためにどのような練習やトレーニングをするかで考えるし、選手が5人でも100人でも課題はチームにあるひとつです。
個人指導は状況が大きく異なる
一方でパーソナルの場合は、選手とコーチがマンツーマンになって取り組みを進めます。
たとえ団体競技の選手であっても練習やトレーニングを専属のコーチを付けてマンツーマンで行うとなれば、それはチームの概念が消えて、アスリートとしての個人が目的をもってレッスンを受ける状況が生まれます。
このように目的の所有がチームの場合と個人の場合で違うために、コーチングの役割とその方法も大きく異なることになります。
つまりチーム指導ではコーチからの投げ掛けが大きなウエイトを占めることになり、個人指導のかたちだと選手からの投げ掛けが増えるということです。
もっと詳細に言えば投げ掛けるというよりも、対話が増えて選手のほうから情報を提供してもらうことが多くなり、それが個人指導では非常に重要な作業になります。
悩んでいる点、つまずいている点、自分の考え、体の状態、悪い原因、改善点、いま取り組んでいる点、練習環境、そういった細部にわたる選手自身の体調や周辺環境にはじまり、思考や感覚にいたるまでを深く情報として入手してレッスンの材料にします。
要するに、コーチ側からの知識や手段の提示よりも、選手本人に自分について話してもらう時間が圧倒的に多くなるということです。
教えるよりも質問が多い
私の多くの時間は聞き役です。
自分から相手へ発信することを減らして、選手に思考してもらい意見を引き出し、解決策を模索してもらいます。
なぜなら選手自身が主人公だからです。
選手が問題点を解決しようと汗を掻いているところに、ときおり後ろからヒントやきっかけを出してあげて、引っ掛かりを除く手伝いをします。
本来のアドバイスというのはそういうものです。
主体はどこまでも選手に変わりありません。専門家に頼ることになっても、あくまで問題は選手自身のものであり、主体的に目的達成の道すじを立てていくことで前進できるのです。
パーソナルでは主体である選手本人の思考と行動が、チームの場合よりはるかに重要です。
だから私は専門知識を出して、選手にはただ「こうしなさい」と言うだけのパーソナル・レッスンは一切おこないません。
具体的な方法論は材料として必要ですし、実技が対面指導の有利な点であることもたしかですが、原則として個を重視する場合は双方向のフィードバックがカギとなります。
選手がコーチに投げ掛けて答えをもらい、さらにコーチからも選手へ投げ掛けてその答えを受け取ることで、良い作品が段々と創られていくのです。
どこまでもキャッチボールをしていくのがパーソナルの原則で、チーム指導にはないものです。
ただしそれは良い悪いではありません。
はじめに申し上げたようにそれぞれの環境、条件における特徴です。
この原則をコーチも遵守して、パーソナル指導での自分の役割を果たすべきだと考えます。
選手からたくさん求めてもらい、その求めに応ずることがパーソナル最大の利点です。このことを熟知しているコーチは個人指導に長けています。
実技よりも大事なこと
さて私のパーソナル・レッスンはいま、選手のプレイの様子をたくさんの動画で確認しているところです。
練習中の様子を「この場面」と指定して撮ってきてもらいます。それを選手と一緒に考え、話し合い、問いを出します。
それは普段でも携帯電話のアプリを使って行うことが可能ですから、非対面のオンラインでもレッスン時間外でも、写真や動画、文章での説明などによって詳細なアドバイスをして進めていきます。
そうなれば質問と課題の提示が盛りだくさんですが、コーチとして私からの発信はそういうものが多く、基本的に答えや方法論などは選手から聞きたいことを投げ掛けてもらいます。
その上で重要なポイントだけ私から示して、あとは選手が工夫してまた報告してもらう方法でパーソナル・レッスンを進めます。
時間や力を注ぐところが、チーム指導の場合とは大きく異なるということになります。
スポーツも個人で学んでいく
さて結論ですが、どうして長々このような話を書いたかというと、選手にもレッスンのあり方をよく吟味して選んでもらいたいと思うからです。
いま学校の部活動だけではなく、地域のクラブチームも少しずつ起ち上がっています。その流れが少し前から起こっていますが、さらに今後、近い未来にはチームに所属することから、個人で上達を目指すスポーツスタイルが生まれてくるでしょう。
学問を自分で学ぶように、スポーツも個人の努力で技量を育てていく考え方が少しずつ広がると、私は考えています。
それは単なる私的な憶測などではなくて、実際にいま個人レッスンや自分で教材を手に入れて自学する人が一部に出てきました。
そのための民間サービスも徐々に構築されています。
さらにコロナ禍でチーム練習が制限、中止させられるなか、独自に動いて技術を磨くことが絶対的に必要となっています。
当然コストが掛かりますけども、これまでのように勉強は学校や塾でやってもらう、スポーツは部活動やクラブに所属してやってもらうという従来のスタイルが、頑張りたい人はどんどん自分で情報と方法を手に入れて自前で習得していくスタイルに、いま日本は変わり始めています。
上達するために「所属」することがすべてだった日本のスポーツが、自己投資をする時代へ進み出していることを、ぜひこのレポートで知ってもらえたらと思います。
自由に学ぶ
最後にこれは本当に蛇足ですが、個人的な話をするとわが家では二歳の息子に英語教材を使っています。赤ん坊の頃から日常的に遊びの中で楽しく覚えていくための、家庭用の学習システムです。
英語は「学校や塾で受験科目として勉強する」という考え方を一切捨てて、生涯にわたって役立つ言語能力の習得として、文字や計算を覚えるのと同じように教養の基礎と位置づけました。
それを国の教育制度に頼らず、家族で考え自らの手で習得していこうと、第一子が生まれたときに導入を決めたのです。
現在、第二子の長女が生後4ヶ月ほどです。彼女はこれから日本語と英語を同時に身につけていくことになります。
私たち両親は日本語しかできませんが、教育費という面で有意義に後押ししてあげたいと思っています。
好きこそものの上手なれ。
意欲こそが学びのエネルギーですので、それを漲らせる方法は「自由」を得ることに尽きます。
これからの時代は所属意識から離れ、あらゆることを自分で計画、用意し取り組んでいって知識と技術を身につけていくことを、みんなのスタンダードにしていきましょう。
(了)
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