【梅原トレーナーのからだづくり哲学】育成という言葉が安くそして怪しいものになりつつある(前編)

スキルアップ 梅原 淳 育成法

育成という言葉が流行りはじめたのはいつの頃だったか。

バスケットボールに限らずスポーツ全般、それからビジネスの世界でも使われるこれからのコーチングスタイルの主たるキーワードとして、あらゆる場面で登場する。

この育成という言葉は良いものとして世間では定着しているが、不肖私は専門家の立場からして如何ほどもそのような言葉には思えない。

ここで何度も記事にしているスポーツスキルの成長や人間成長は、教育や子育ての根幹である。その成長の本質は「自ら育つ力」を養うことにあって、決して外にいる人間がそれをつくることを意味しない。

他人の力でなんとかしようとする時点で、それはなんの力も育まれていないのであり、言葉で育成だなんだと言ってもその中身はがらんどうだ。

だから日本で使われるところの育成の言葉は、まず前提が間違っていると私は考えている。

B.LEAGUEの特別指定選手制度に逆風

現役の大学生をB.LEAGUEの公式戦に出場させる仕組みがある。2016年のB.LEAGUE発足時につくられた。バスケットボールだけではなく、サッカーにも同様の制度がある。

そもそもこれが育成事業に当てはまるのかどうかは別の問題としてあるが、今これに嫌な風が吹き始めている。

この記事を読んでいるあなたには、まだその風は届いていないかもしれない。ただ今後、育成という名の下で議論されるテーマにこの制度への批判がドッと噴出する可能性がある。

もちろん筆者の胸騒ぎであるが、当てずっぽうに申すことは絶対にしない。育成の言葉が流行し出してから、子どもの身に何かあるとつねに大人の育て方が悪いと非難の的になっているのが親や指導者、またはその組織である。

その構図はずっと変わっていない。つねに子どもや選手は被害者という大前提で話が進む。

将来有望な選手のケガ

今回B.LEAGUEについて、すでに一部SNSやネットニュースにおいて批判が出ているのは事実だ。

んな内容かというと、特別指定枠でB.LEAGUEの公式戦に出た大学生が手術を要する大けがをしてしまったことが発端となっている。

将来、日の丸を背負って立つかもしれない優秀選手が、B.LEAGUEのゲームで大きなケガをしてしまったから、これは特別指定選手制度のせいだ、というわけである。

賢明なここの読者なら、とんでもなく横暴な意見であると理解すると思う。しかしこういう批判というのは、正しいものという前提でフワッと広がっていくから、あまり興味のない人や普段バスケットボールを見ない人などには、その批判のままが伝わる。

つまりまるでB.LEAGUEが、育成という今の時代の流れに逆行してデタラメなことをしたかのように話が伝わり、広がっていく懸念がある。

安易な非難、批判というものは、さも言っている者が良いことを主張し弱者の味方であるように立ち位置がつくられる。しかし大概は、現場を知らない空想人間の自己陶酔である。

30名の現役大学生が制度を活用

一万歩下がって、これがもしリーグの絶対的な命令による出場であるとか、ヘッドコーチが疲れてフラフラな選手を無視して強制的にコートへ立たせ続けたのなら、完全に悪だ。

いや倫理的な悪どころか、もはや訴訟ものだろう。

しかし完全なる民主主義でなる我が日本において、本人の同意なしに強行して試合に出すことなどあり得ないし、現実的にそんなことはできない。

その制度を活用するにあたり、選手本人からの申し出やチーム側からの勧誘はあるだろうが、それはきっかけであり双方で話し合った上で合意が形成されるのは法治国家の基本である。

いま多くの選手がこの制度を使って、大学在籍中からB.LEAGUEへ参戦していて、これは選手の希望ともなっている。もちろん中身をさらに充実させていくことは必要だし、良くなっていくはずだが、チャンスすらなかったものに門戸が開かれた画期的な制度なのだ。

だからこそ、数十名もの現役大学生たちがこの制度によって、B.LEAGUEの舞台に立つ結果となっている。これは代え難い事実である。

育成という正義をダシに使って制度やリーグを批判することは、かなり無理のある主張ではないだろうか。

さらに後編へつなげよう。

(以下次号)

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この記事を書いた人:梅原淳梅原 淳
運動技能を向上させる専門家として、またバスケットボールでのファンダメンタル・スキルを教えるコーチとして全国各地に出向いています。またその活動から得た日々の思考や発見を、YouTubeなどSNSを活用して情報配信しています。このコーナーで扱う内容は、それらSNSでは記さない一歩踏み込んだ情報として、トレーニング実践レポートをはじめ自分の育て方、大人の再教育、子育て、健康づくり、みなぎる食事など、あらゆるジャンルをテーマにお届けします。