理論よりも結果で考える(下)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
結果を出さない理論やエビデンスほど無意味なものはない。人々の生活において実用だけが糧なのであり、学問の正解探しはなんの議論にもなっていない。
この投げ掛けを一緒に考える上で、前回までを読んでいない方はどうぞはじめから通してご覧いただきたい。あなたの日常にも必ず起こっていることである。
理論よりも結果で考える(上) 理論よりも結果で考える(中)
自分にとっての結果とは
到着点はどこにあるのかといえば、それは目的を達することにある。
つまりたとえばバスケットボールで試合に勝つ、確固たる強さを手にしてランキングを上げる、そのために合理的な練習方法や効果的な筋力トレーニングの行い方を知りたいと考える。
そこで勉強し、これまで頭になかった科学的視点での技術体力のつけかた、量的な設計、心理に関わるコーチング、人間関係のつくりかたなどに明るくなる。
勉強した甲斐があって、これまでより効果的かつ着実な上達発達を生み出せるようになり、見事に公式戦で順位を伸ばすことを果たした、というのが到着点である。
スタート時には、まったくの無知でなにから始めると良いかが分からない人がいれば、どうせするならば正しく理論的におこないたいからという人もいる。
立ち位置は人それぞれだと思うが、いずれにしても成果を上げたいのは同じである。
なんのために勉強しようと思ったのかを忘れてはいけない。
自己満足と向き合う
あなたは科学的で理論的なことをしているかどうかを欲しているのか、それともなにか結果を出したいことがあってその手立てを探しているのか。
どちらが大事でどちらを目的としているのかを、冷静になって考えてみよう。
人々が主張しぶつけ合う多くの議論では(本当は議論にすらなっていない)、結果を出さずただ根拠ある正しい方法であることで完結している。
つまり「自分はちゃんと賢くて理論的な方法でやっていますよ」がゴールになっている。
自分の練習の行い方やドリルの内容が最新で科学的なものであることにゴールがあり、論理的だから「技量の高い良い指導」「自分は正しい」と信じたい。
しかし大事なことは結果だ。あなたが欲しいのは、あなたの目的は良い結果を出すことのはず。
根拠あることをしているのならば尚のこと、必ず伸びていくはずだ。それなのにどうして結果が出ない?そこに向き合わなくてはいけない。
お墨付きは支えてくれない
自分が間違ったこと不合理なことをしているのではないかと、謙虚にして学ぶ心掛けを続けることは素晴らしい。
ただしそれが自らの否定になるのならば、考えないほうがいい。
世で正解とされることを踏み外さず自分もする、そんなことに心を煽られるのは健全ではないし自由を失ってしまう。
人間は絶対に、世が認めるその考え方や方法で物事を見なくてはいけないのか?それらは本当に確実で自分を支えてくれるのか?
西洋医学もサイエンスも、それらを活かして自分の人生に役立ててこそ意味があり、人間のほうが縛られるものでは決してない。
あなたの目の前が好転しないのであれば、お墨付きの手段をとっても得るものはない。
一番分かりやすいたとえ
私たちの生命を支える農作物でひとつ。
農家の方々は懸命に土を耕し、種を蒔き、雑草を刈り、害虫や病気を遠ざける努力をして作物を大きく実らせる。新鮮で美味しく栄養価の高い作物ができたら、それを食べた人が健康的に暮らせる。
そのために汗を掻いているのであり、それが目的だ。
農薬を大量に使う方法、有機でつくる方法、自然栽培、添加物で手を加える方法、農家は各々に栽培方法を考えているが、それを選択したことについて社会的に正否があるのか。
またそれを買う私たちには選択の自由がある。農作物の在り方について、研究により根拠が実証されているものを買わなくてはいけないのだろうか。エビデンスがないものは選んでいけない?それを買う人は愚か者か。
からだのことを大事にして自分で判断し、それで実際に不調が改善したのなら、あなたの選択は正解だったのだ。
根拠あるデータがなくとも、権威ある人や機関が推してなくとも、実際に自分で工夫して悪いものが良くなった、それがゴールである。
理論は結論ではない
学問やデータは活かすものであって、選択を阻むものでなければ人を白黒に分けるものでもない。
ですからどうぞ、どこまでも世の正解に引き摺られることから脱して、とらわれず、気にしすぎず、本来の目的に即いてあなたの出したい結果を求めてほしい。
それを見ることだけに集中できるよう、余計な討論議論にはのらないのが鉄則だ。
スポーツライフそしてあなたの人生がより良くなることを、心から応援しています。
(了)
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