【梅原トレーナーのからだづくり哲学】トレーニングレポート No.55

スキルアップ トレーニング 指導法 梅原 淳 練習法 育成法

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こちらの記事は、新型コロナウイルス感染が広がる前に執筆した記事となります。

「熊本クリニック」

熊本を訪問し、高校男子バスケ部にて不定期の講習会をおこないました。不定期と言っても年4,5回ほど呼ばれていますので、しっかりとした積み上げができています。

ジャンプスキルの向上と、平面における切り返し動作の発達を主に取り組んでいて、今回は新チームの2,1年生とくに1年生の基礎訓練を念頭に、内容をひとつずつ丁寧に実践していきました。

動きというのはそれぞれが別物なのではなく、根っこのところで繋がっています。繋がっているし重なっているのが運動動作というものです

ジャンプ練習

まずジャンプから入りました。2人で向かい合ってタップを繰り返します。全身で動作するダイナミックなジャンプを、タップという技術に組み込みます。

最重要は①股関節の使い方です。鼠径部の沈み込みとお尻での立ち上がり、これをマスターします。

上手なスクワット動作を覚えられると「構え」も「ジャンプ」も上達しやすくなりますので、これは重要なファンダメンタルです。

次に必要になるのが②上半身のスウィングです。足先を前へ揃えて股関節スクワットをすると、上半身が自然と少し前後へ振れます(※その原理は省きます)。

その振れに合わせるようにして腕をスウィングすると、全身で振り込むジャンプ動作を掴めます。

スクワットの動きに腕の動きがうまくマッチすれば、股関節を中心として腕の先、脚の先まで、全身の力が一連に作用して、大きな力でジャンプすることができるのです。

これは練習してきた3年生がやはり一番上手です。2年生もまずまずですが、もっと上達の余白があります。1年生はまるで體を操作できません。わかりやすいですね。そうであるからこそ、分解して一つずつ練習していきます。

50分ほどかけ丁寧に取り組んでいった結果、約10名の1年生が皆できるようになりました。2年生も一から練習し直したことで、さらに上達しました。

時間を掛けたのは特別なジャンプテクニックのようなことではなく、基礎となるスクワットの部分です。

ジャンプと切り返し動作の共通点

このジャンプ練習のあと、切り返し動作の練習に進んでいきましたが、じつはジャンプ同様、基本のスクワットができるかどうかが上達の鍵となりました。

切り返し動作のポイントは唯一、床を刺す脚の技術です。脚のどの辺りで踏ん張るかによって、切り返しが軽くも重くもなります。

私が選手たちにアドバイスしたのは、できるだけ膝を伸ばした体勢で脚を突っ張り、鼠径部をしぼって「股関節で衝撃を受ける」ということでした。

これはスクワットの基本そのままです。股関節でのスクワットが習得できていると、この感覚は容易く理解できます。

基本が身についていると、初めて取り組む慣れない動作であっても、あまり時間を掛けずに習得できることでしょう。

何が言いたいかというと、ジャンプも切り返しも、まったく違う動作なのに礎となる體の感覚は同じであるということです。

だとすると運動の技量習得というのは、私たちが苦労しているより実際はそれほど難しいものでもないと考えることもできます。

ひとつの體ですることですから、本来はすべてが繋がっているはずです。だからこそ共通した基礎というものを大切にすべきなのです

ファンダメンタルの意味

この高校チームに限らずとも、スクワットの構えや動作というものが身についていない者は、多くの練習で時間が掛かっています。チームには必ず、基礎がしっかり身についている選手とそうではない選手がいます。

それは一様に頑張っているけれど力に差が出ているのではなく、基礎を大事にしているか軽んじているかの違いです。

ファンダメンタルという言葉をよく耳にしますが、本当の意味するところは、自分の肉体を動かす上で中心となる體の使い方だと私は考えます。

それはどのような動作においても組み込まれているもので、偏ったり特化した動作ではありません。

「どんな運動をするにせよまず脚というのはこのように使うものだ」

それが本当のファンダメンタルです。

人間の身体構造(からだのつくり)を無視して、バスケットボールでの動きはこう、野球ではこうと特別な動作として行おうとしてもそれはうまくいきません。

まず基本となる脚の使い方、腕の使い方、背骨の使い方など、私たちの骨のつくり・筋肉のつくりから表現される自然な動作というものを見つけて習得することが、高度な身体操作への足掛かりとなります。

つまり熟知することです。どんなスポーツをしても特別な動きをしても、必ずベースとなる基礎動作がありますので、それは自分のからだのつくりというものを熟知する必要があるのです。

基礎基本があってこそ

今回の熊本での體づくり講習会でも、下半身動作の基礎として股関節の動きの習得度によって、バスケットボール動作の練習に差が出ました。

3,2年生と1年生で大きく差があり、また同学年で比べてもこれまでの積み上げによって、たとえば2年生10数名で技量に差が見られました。

面白いくらいに、基礎が習得できている者はどのような形態の動作であっても巧みにできており、基礎の無い者はどの練習においてもできませんでした。

人間の脚というのはどのように動くものなのか、どう力を入れるのが基本か、それを身につけることをあなたもどうぞ大切にしてください。

基礎練習に時間を掛け、自分の體をよく知ることで、走る技量、跳ぶ技量、投げる技量といったものがはじめて向上します。

バスケットボールにおける専門的な動きも、基礎があってこそ身につきます。

體づくりとは唯一つそれを習得するためにこそ、必要なのです。

(了)

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