「バランスとはなにか」トレーニングレポートNo.136【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
スキルアップ トレーニング フィジカル(身体) 梅原 淳 練習法
皆さんこんにちは、梅原淳です。
今日は「バランス」というものについて、ひとつの視点を話したいと思います。
片足立ちになって両腕を横へ広げると、いかにもバランスを取っているポーズだと誰もが理解しますね。
よろけて倒れてしまいそうなのを必死に堪える人、いとも簡単にやってのける人、あなたはバランス能力に自信がお有りですか?
不安定な中で安定をつくることをバランスと言っているのですが、もうひとつ別の視点でバランスについて考えてみます。
片足になるとフラフラするのは不安定になるからですね。不安定というのはもっと噛み砕くと、力の掛かり方が不均等になる、またはその物体を支えるための押さえが弱くなって耐えられない状態であることです。
だから形状や容積の左右対称をつくったり、足下が末広がりになる構造にしたり、床の接地面積を広くしたり、地面を平らにして、ピタッと動かない工夫をするわけです。これが「安定」です。
いま、上記を読んで人の体そして運動の場面が頭に浮かんだという人はいるでしょうか?
たぶん、全員がイメージしづらかったはずです。
書いている私も、じつは運動をイメージしていません。机の上に置いたコップとか建物とか、そういうものを想像して書いています。
それだったらどうして説明したんだとなりますけども、このイメージできなかった物体的な安定をバランスとして運動に取り入れようと思うからです。
もうひとつのバランス
先ほどの片足立ちは、不安定さをつくってその悪条件で固定を維持しようとするものです。
目を瞑ったりしようものなら、たちまちフラフラしてしまいます。目印、目安になるものが何も見えないということも、体勢の固定を難しくする悪条件のひとつです。
それを克服することはとても価値のある能力向上と言え、さらにもう一方で「安定」という好条件を作り続けることもまた有意義です。じつはここに目が向いている人が少ないので、レポートにしました。
どうしてもバランスと言うと、不安定を支えることだけがフォーカスされてしまいますが、スポーツ競技において実際にバランスが求められるのは不安定よりも安定です。
つまり、競技において多くは「不安定をいかに耐えるか」ではなく、いかに「安定の要素をたくさん持っていられるか」が重要になっています。
フラフラしそうなのを堪えることでグッドプレイがつくられることは少なくて、様々な工夫で体勢をつねに安定させていられることで、理想どおりの動作ができ、またプレイが成功する確率が上がるわけです。
体操競技など一部のアンバランスを難易度としているスポーツは別として、全般としてはあえて弱々しくフラフラとする体勢をつくる必要などありません。はじめから安定的な、どっしりとした構えを目指すことが基本です。
建物の安定から学ぼう
悪条件でも体をビタッと固定できる力は、とても難易度の高い技能です。それができることは高いレベルの運動能力です。でもその力が頼りになる場面は、そう多くありません。
当然、そこが強ければ「安定がさらに増す」ことはあります。トレーニングする意義は大いにありますから、さらなる向上を目指して続けてください。
ただ、そもそも「バランスの不安定が起こらない」ことは整った運動動作の土台ですので、ずっと安定していられる努力というものを忘れてしまうと失敗します。
バランスが崩れそうなのを堪えることより、バランスが崩れようのないパフォーマンスを身につけることが、あなたの競技力をさらに高めてくれます。
もしいま、動と静の繰り返しにおいて、踏ん張りが悪くよろけたり力んでかたくなったりしているのなら、改善の余地があります。その力任せやバランスの欠如は、良い動作の大きな妨げとなっているからです。
不安定のバランストレーニングだけではなくて、安定を増やすトレーニングをおこなってください。工夫しだいですから、どちらかというと技術的なトレーニングと言えるかもしれません。
最初にあげた安定をつくる条件、もう一度書いておきますね。
- 形状や容積の左右対称をつくったり
- 足下が末広がりになる構造にしたり
- 床の接地面積を広くしたり
- 地面を平らにしてピタッと動かない工夫をする
これを改めて、運動に当てはめてバランスづくりに役立てて下さい。今度はイメージできると思います。
それでは、これからも全力であなたを応援しています!
(了)
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