日本人は国内リーグでも活躍できないのか?(中)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
我らが日本のビッグマンは、なにをしているのか。
仕事仲間がこのようなことを言っていたのを思い出す。
「背の大きい選手は小さい選手と比べて手足のリーチが長い。そのぶん当然、動作に負荷が掛かるからどうしたって動きは遅くなる」
もちろんこの言葉のままではなく、主旨を私が整理して記している。
野球のバットやテニスのラケットなどを使うとき、短いものと長いものはどちらが振りやすいか。もちろん短いほうだ。軽いし遠心力が小さくなる。剣道の竹刀でも想像しやすいだろう。
つまり、骨が長いのだから不利なのは仕方がない、ということを言っている。
関節に掛かる負担が大きくなるのはそのとおりだ。しかしそれを言ってしまうと、本来と見合わない肉体的に過度な成長をしてしまったことになり、体型的な変異と位置づけられてしまう。
背の高い人間というのは、医学的・生物学的に正常ではなく異常や特異だと言うのだろうか。
骨が長くても、それに見合ったからだ全体の大きさとなるのであって、骨の長さだけ異様に伸びたわけではまったくない。
ここで話を戻そう。申し上げたいのは学問の話ではなく、背の高い選手は動作がのろくて当然という思い込みが、専門家にすら浸透している暗たんたる事実である。
メガホン応援団のビッグマン
あえて強く苦言する。
ビッグマンを甘やかしていないか。
他の選手たちとは違う特別な存在として、言葉も扱いも基準がまるで違っている可能性を考えてほしい。
人間のすることであるから、甘やかしてしまうことを否定はしない。たとえば男性で190cm、女性で180cmの選手がいれば日本ではごく稀であり、大変に貴重な存在だ。
規格外であるからそう簡単に目にするものでもなく、全国常連校ならば県外まで探し回ってリクルートしようとする。
育てることよりも、奪い合いに躍起になっている実態がある。
チームにビッグマンを何人も抱え、エントリーもされず応援席でメガホンを持っている姿をしばしば見る。
それが悪いということではなく、貴重な存在だからこそ勧誘に力が入るし、増えすぎると手に余ってしまうケースもあるということだ。
もし貴重で大切に温めたいと思っているのなら、心を鬼にしてでも鍛え上げて一丁前にしてあげたらどうか。
デカいってだけで満点評価
チームの中で一番のビッグマンが、しこたま檄を飛ばされているのをどのくらい見るだろうか。
デカい選手はミスをしても何も言われず、チビはさほどのことでもないのに絶えず怒られている。
デカはひとつのシュートで「よくやった」と褒められる。
ゴール下でも3Pでも、一本入ると「さすが!」とチームの顔として称えられ、チビは外れたシュートをコーチやチームメイトにがっかりされる。
これが無意識に広がるビッグマンへの、素直な皆の扱いなのだ。
とくにバスケットボールでは周囲よりも一際デカいというだけでスター的な存在ともなり、技術力が伴わなくとも看板選手として主力に起用される。
背の高さが武器になるからだ。
大して上手くなくとも身体的特徴がゲームで役に立つことを期待され、本当はかすかな希望であったはずがいつの間にかお墨付きに変わって、デカいだけですべてOKとなる。
つまりスタミナが無くてもいい、技術が低くても構わない、スピードはデカいのだから仕方ない、と先ほどの専門家のような思考、思考と言うより勝手な思い込みに段々と染められていくのである。
だから日本のビッグマンのほとんどは、才能を開かせることなくそこに汗を掻くこともなく、恵まれた身体的特徴をなんと勿体なくも台無しにしてしまう。
これで全体の底上げなど、できるはずもない。
(次号へ)
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