【梅原トレーナーのからだづくり哲学】ウィークポイントを克服してこそ得意分野も武器となる
私はトレーニングコーチの端くれとして、背丈の高い選手には足腰の強さを説き、小柄な選手には高さへの挑戦を説いてきました。
身体的特徴と真逆をよく鍛えるよう選手たちに言い続け、その姿勢は現在でもなんら変わっていません。むしろ経験を積むほどに、それが正しいことを自覚させられます。
日本人は背が低いから高さで勝てない分、身軽さを活かしてすばしっこさで勝負、なんて昔から言われてきました。
それは間違いです。
正確には思い込みと言うべきかもしれません。世界で比べると身長が低いことは事実ですが、そうだから「高さで勝負するのは諦める」というのは完全な思い込みです。
得意で勝つより弱みで負ける
なぜ高さを諦めないのか。
それはいま、日本代表が八村選手などで盛り上がりはじめたからではありません。
背丈が低い人は得意のスピードが生きる道で、背丈の大きい人はそれを活かして高さで勝負という頭が、そもそも違うということです。
本当は、背が大きいからこそ足下を強くして、背が低いからこそジャンプ力を鍛えてウィークポイントを消すのです。
みんな自分の得意なところに目が向きます。恵まれた素質に頼ります。そこにしがみついて弱い部分を見ようとしません。
実戦では弱さが仇となります。得意で勝つより弱みで負ける、いや勝利が手からこぼれ落ちるのです。
天恵の反対にあるもの
身長が低くても跳べるガードは周囲と一味違います。
踏ん張りの弱い長身センターはいくらでもいますが、足腰の強いビッグマンは遥か上のスター選手となります。
天から授かったものは、あなたの本物の武器ではありません。それは貰い物で、本物の武器は弱みを強みに変えた能力のことです。
背が高ければそこが優位なのは当たり前だし、身軽ならば動きが素早くて当たり前です。
そこに未来へのチャンスはなく、真にあなたの鍛えるべきは、恵まれた素質の反対側にあるものだと理解しましょう。
背の低い選手が跳ぶ力を手に入れたら、どれだけ高さへのチャンスが生まれるか。
自分たちには平面しか無い、そう思い込んでいる世界であなただけが跳べる素養を身につけていたら、周囲の選手とは別次元のプレイを魅せることができるでしょう。
同様に、体の大きな選手はみんな走れないし、ディフェンスのフットワークも重いなかで、もしあなただけは背が高くても外回りの選手に負けない平面の素早さがあったら?
まさに「鬼に金棒」です。
自分を固定するな
身長の高さが優位になって楽にプレイを決められることは多いでしょうけれども、そうやって恵まれたものだけを頼りにする人は自分を鍛えることができません。
なにもせずに貰ったものだけに頼ると、自分で頭や体を使って身につけることをしませんから、そのうち優位である高さも廃れていきます。
それをさらに伸ばそうと頑張ることをしないからです。
体格などの恵みは、ほんのきっかけでしかありません。はじめはそれで優位になっても、そこから自分で伸ばす努力をしなければ才能は開かれません。
どうも「身長の高い選手は平面に弱くてもしかたない」という思い込み、いや開き直りが指導者側にもあきらかに存在しています。
- 「高さで役に立ってくれればイイや」
- 「うちはチビ軍団だから高さは捨てる」
はじめから勝負を放棄した言葉がコーチの口から平然と放たれ、選手もそれに覆われていき、不幸にも自らを固定してしまうのです。
可能性を固定してしまえば新しいことに挑戦しなくなって、努力も少なくなっていきます。それは天から授かった恵みすら台無しにします。
可能性は見つけるもの
せっかく他の人よりも条件が良いのだから、たくさん鍛えてより強力な自分の武器にしていこうとステップアップを目指す人が、恵まれた体格を活かせる人です。
そのような向上心があれば、背が高くたって走れて身軽で平面のプレイに強い選手に成長するはずです。
平面での身軽なフットワークがあるからこそ、身長の高さが本物の優位となるし、背が低くとも跳ぶ能力が高いからこそ、元来のすばしっこさでイニシアティブを取れます。
ウィークポイントに思われているところを鍛えて強みに変えること、それがあなたの真の課題であり向上の秘訣であると、強く進言いたします。
それが本当の「可能性を見つける」ことでもありますから、どうぞ広い視野でチャンスを探してよく鍛えられてください。
心から応援しています。
(了)
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