FIBA-OQT決勝「イタリア対セルビアより」イタリアのディフェンス11
東京五輪後、男女の代表チームのHC人事が発表されました。
男子HCはトム・ホーバスさん!ラマスHCのこれまでの功績に感謝しつつ、新しいHCの手腕に注目があつまります。
今回もイタリア代表チームのトランジションディフェンスです。
繰り返しになりますが、ディフェンスリバウンド同様に、上背のないチームが絶対に強化しなければならないポイントです。
今回は、イタリア代表チームの中で、あわや失点につながりそうな場面を抽出します。
1、プレーの構図
2、プレーの流れ
劣勢のセルビア代表は前線からプレッシャーディフェンスを仕掛けます。
イタリア代表は、それを突破し自チームの攻めるリングへと侵入します。
ハーフコートバスケットに持ち込んでも良い場面ですが、ここではイタリア代表は早い展開での得点を狙います。
ドライブインからのステップバッグでシュートを放ち、結果としてシュートは外れました。
この場面で、ボールと逆サイドコーナーにいたオフェンスに着目してみましょう(図3)。
シュートをする瞬間にパスを要求し、その後1、2秒間だけ静止している様子が見られます。
➌の選手がディフェンスリバウンドを保持した際、迷いなくボールを前方へと前進させます。3の選手も懸命に戻りますが、追いつきません。
外側にいる分、リングと選手を結ぶラインに入るためには歩数が多く必要です。
結果として、3Pエリアの手前まで➌の選手を捕まえることが出来ませんでした。
仮に、3Pシュートが得意な選手の場合、これだけのノーマークであればかなりの確率でシュートを沈めたことでしょう。
また、先に戻っていた5番の選手がチェックをすれば、スピードを生かして抜かれてしまう事も考えられます。
また、直ぐ後方に図4(背番号#3)の選手も走りこんでいる為、局地的な2対1を狙われた可能性もあります。
実際には、そのままサイドの方向へドリブルを移動させ、走りこんできたノーマークの選手にボールを出します。
ファールを狙ったシュートは、結果としてノーファールとなりました。しかし、普通に3Pシュートを放つこともできたケースです。
現代バスケでは、コート上の多くの選手が3Pシュートを得意としています。ここでも失点の可能性がありました。
また、時間と得点差を考え、早い展開での3Pシュートは最も許したくないシュートです。間一髪であったといえるでしょう。
3、まとめ
トランジションディフェンスの強化をする際、オフェンス終了時にコーナーにいる選手の振る舞いは非常に重要です。この場面のように、ここのポジションの選手が出遅れることで、僅かですが、数的不利になってしまいます。
本プレーを考える際、ボールを運ぶ選手が3Pエリアに到達する前後を詳しく見ると、「2、プレーの流れ」に記載の通りに、非常に多くのリスクが存在しています。
もし、シュートを放たれた段階でコーナーの#7がスプリントバックをし、ボールを運ぶ選手をマークした場合、このようなリスクについては止めることが出来ます。
ここでいうマークとは、ドリブルの進行をしっかりと止めるわけではなく、少しだけ後方を横並びにスプリントをするだけでも十分です。
反対サイドでノーマークであり、パスを欲しかった#7の気持ちは十分に分かります。
ですが、パスをチームメイトに要求しつつもオフェンスリバウンドに参加しないのであれば、一瞬の迷いもなく直ぐにトランジションディフェンスに参加をする習慣が重要になるでしょう。
私が把握している範囲では、チームのディフェンスのスタッツとして、コーナーにいた選手が立ち止まらずに、
- オフェンスリバウンドに参加するか
- 直ぐにスプリントバックをするか
のチェックシートを作って集計している事もWebinar等で紹介されました。
ルールや仕組みとしてチームの活動に織り込むことで一瞬のスキを無くし、チームの不利益を少なくしようとする素晴らしい取り組みだといえるでしょう。
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株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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