【梅原トレーナーのからだづくり哲学】にわかメンタル(中)
(承前)http://basketball-school.jp/skill_up/6056.html
体系的にしっかりとつくられたメンタル・トレーニングと、世間に普及していくものとしてのメンタル・トレーニングや精神面の話について、ひとつの疑問を読者へ投げ掛けている。
困難を乗り越える強い心を身につけるために、なぜか苦しさを悪として排除せよ、とする矛盾点を整理していこう。
気分良くなれる環境整備が必要?
昨今、ポジティブが正解でネガティブが誤りみたいな論調が広がっていて、それと体系的なメンタル・トレーニングを繋げてさも学問的に実証されているかのように語られる。
それを前提としてメンタル・トレーニングや心理学的な話においても、心にストレスを掛けるのはいけないことで、できるだけ人為的にプラスの状態を創り出そうとする向きがうかがえる。
プラスの状態とは、気分が良い、意欲が高い、肯定的といった意味を当てはめることができるが、これを自作しようということだ。
しかも自分の内側(つまり心)でつくるのではなくて、そんな気持ちになれるよう外の環境を用意する、というのが巷に広がる誤ったメンタル・トレーニング論である。
だからおかしな話が生まれてしまう。
心がネガティブになってはいけないから、そうならないように外からポジティブな働きかけをすべきだとして、子育てやスポーツ・コーチング、学校教育に変革を迫る。
すべては教え方が悪いのだと。本人の心を気持ちよくしてあげろと。
賢明なあなたは、ここですでに逸れた方向へ進んでいると察知するはすだ。
メンタルのサービス化
子育てもスポーツ・コーチングも教育も、改善すべき面は多い。
昔だ今だの話ではなく、いつだって考えて努力して改めてと、絶え間ない進化がどんなことにだって必要だ。
それはそれとして、大きく本質を逸脱したメンタルの話は、本人の問題であるものを周囲が気持ちよくしてあげる話に変わってしまい、トレーニングではなくサービスになっていることに、私は異を唱えている。
どんな逆境にあっても前へ進める強い精神を育むことを望んでいるはずが、いつの間にか周囲の人間が持ち上げて心の負担を掛けないで夢見心地にしてあげろと言うものになってしまっている。
メンタル・トレーニングとは本人の話なのか、それとも他人の話なのか。ココが肝だ。
子どもの心に火をつけるとか、選手のやる気を引き出すポジティブ指導と言えば、世間的なウケは良い。
ただそれは苦しさを排除する、見ないフリをするといったことではないし、無いかのように錯覚させることでもない。
一歩踏み出すのなら、厳しい現実と困難が待ち受けていることをちゃんと教えて、本人も受け止める勇気がいる。
その上で、マイナスに引き込まれそうになる挫けそうな心を振り切って、立ち上がるための方法をトレーニングするのが本当の心の鍛練(メンタル・トレーニング)である。
悩みや落ち込む心理的メカニズムを知って、あるいは捉え方や扱い方を見つけて逃げず克服する力をつけることが、本来の目的であるし、それ以外にメンタルに強くなる方法はない。
現在の世間に広がるメンタル・トレーニングもどきは、ただ心地の良い言葉や態度で苦しさをごまかせと言っているに等しい。
さらにその役目や責任は本人ではなく、周囲にあると言うのだ。
自助力を養うことが強い心をつくる
そもそも「メンタル・トレーニング」などと言ってしまうから、苦しい局面を免れて楽に手に入れられると勘違いしてしまう人も現れる。
効率の良い方法、手っ取り早く解決する方法、無駄なくスムーズなルートあるかのように聞こえてしまう。でも実際は上位のアスリートほど、大きな波を自分で漕いで突き進んでいる。
しかも一時の波ではなく、いまもこれからもずっと自ら波にぶつかっている。人生で、一つとして楽に困難を乗り越えられるものなどない。
ポジティブとか、褒めるとか、そういうものばかりが目立ってメンタルの本質であるかのように大衆に広まっていく様子を、専門家はただ座視し、自分の利益を追求することだけに奔走している。
彼らのメッセージが誤っているのか、私たちの解釈が間違ったのかは分からない。
ただひとつ言えることは、自分の弱い心をどうにかするために自助力を養うことがメンタル・トレーニングの原則であり、他人がどうこうしてあげるものではないし、まして力をつけずに気分を良くするだけの方法では断じてない。
(次号へ)
このブログを通してあなたからの質問をお待ちしています
今の取り組みに疑問や苦労があり、ヒントやきっかけを持ちたいと悩んでいる人、
今の自分と違う角度の発想や見方を知りたいと、勉強意欲を湧かせている人など、
動きづくりや体づくりについて、活路を見出したいものがあればぜひ質問をお寄せください。
トレーニングメソッド、教育、子育て、メンタル、社会時事など、あなたの知りたい事柄について、遠慮なくお伝えください。
宛先
・Eメール:info@basketball-school.jp
募集要項
- 氏名 ※フルネーム/ペンネーム/イニシャル/匿名 などの指定があればお伝えください
- 性別
- 年齢
- お住まいの地域(都道府県)
- 内容
内容
- 今の状況
- 自分が取り組んでいること
- 改善・上達したい部分
- これまでのプロセス・経緯
どうぞ自由なテーマでお寄せください。たくさんのご意見・ご質問をお待ちしております。
運動技能を向上させる専門家として、またバスケットボールでのファンダメンタル・スキルを教えるコーチとして全国各地に出向いています。またその活動から得た日々の思考や発見を、YouTubeなどSNSを活用して情報配信しています。このコーナーで扱う内容は、それらSNSでは記さない一歩踏み込んだ情報として、トレーニング実践レポートをはじめ自分の育て方、大人の再教育、子育て、健康づくり、みなぎる食事など、あらゆるジャンルをテーマにお届けします。
ビーレジェンドプロテイン「スポーツ&ウェルネス」の 詳細はこちら