【梅原トレーナーのからだづくり哲学】ある進学校の自立への歩み その7

スキルアップ チーム作り トレーニング 指導法 梅原 淳 練習法 育成法

学力偏差値の高い子らは、何でも真面目にやれるし頑張れる。知識も豊富だ。しかしその良さを活用することを知らない。

いくら勉強しても、情報を持っているだけでは何にもならない。高い理性と精神的強さがあっても、自分で動かなければそれは活きない。

そこを改善するために、私はまずトップダウンで人を動かすことをやめ、彼らが自ら動いて学んでいくスタイルの練習に切り替えた。

私からはゴールへ導かない。道標も道案内も無く、すべて自分で調べ探究していくことになる。大事なところで手を差し伸べれば結局こちらがつくってあげることになってしまうので、戸惑っても迷走しても本人たちで解決してもらう。

荒治療と言われればその通りかもしれないが、思い切るしかもはや方法はないと判断した。千尋の谷に突き落とすとはこのことかもしれない。歯痒いがコーチも試練である。

▼自分たちで取り組む練習スタイル

勉強を自分でやってもらう自学自習法をこのトレーニングの時間に導入した格好だが、部活動では一人ではなく何十人という団体で一つになって活動するため、これがどうも馴染まない。

だが「人に合わせる」「周囲に紛れる」という悪い習性を終わらせるためには、この条件のままで訓練しなくてはいけないと思った

皆で協力し合うこと、相談し合うことは必要だ。それが互いに意見を出し合う方向へ行けば良いのだから、必ずしも不利な環境ではないと思う。

自分の事を頑張り、チームとしても人の事を見てあげて互いにアドバイスしあってと、両面を一緒に身につけていける環境でもある。

もとより高校のバスケットボール部の活動を個人練習スタイルにすることは、部分的・補助的にはできても、中心にはまずできない。だからチーム練習という基本の型はそのままに、意識を自己投資へ向ける訓練をしていくことにした。

はじめは自分の練習を他人へ完全に預けてしまっている選手の多さに、さすがの私もこのスタイルをやるべきかと不安になった。

それでも我慢強く続けていくうちに段々と良くなり、一人また一人と自覚的な行動をする者が増えていく。それは沢山にはならないのだが、影響を受けて真似をし始める人がいるので、全体として少しずつ自己投資する雰囲気が膨らんでいった。

すると今度は、人任せやその場しのぎの「考えない人」の方が目立ってしまうようになる。主には下級生がそうであり、上級生にも「自分はチームの中心ではない」と諦めている選手は後れを取った。

しかしそれで初めて裸になり、動くきっかけになっていく。

▼目的を失わない

選手自身がつくる練習の中でコーチは何をできるか。

私が自分の任務としたのは、一番初めのテーマを立ててそれについて専門的な情報を提供するところと、結論となるそれらの練習方法を明示することだ。

どのような體の能力をつけると良いか、そのためにこういうコツがあって覚えるためにこんな練習をしてみようということは、コーチ側から提案した。

さらにもう一つ、目的から逸れてしまったときに、気づいている者が声を掛けてあげる必要がある。盲目的になっている人は道を外れていることに気づかない。それはこちらから教えてあげる必要がある。

実際に労力の大半はそこに注がれている。目的は何だったか?今のそれで本当に即しているか?取り組みを正しく認識しているか?など、その都度全体ときには個別に問い掛ける。

そうやって少しずつ、考えないで誤魔化すとかやり過ごすという行為、できているつもりに浸る行為を改め、自分に実を付ける本当の練習を行えるようになっていった

▼グループ分け

最近彼らが自分たちで始めたことがある。今は主にジャンプの能力を育てることをテーマとしていて、練習の最中にキャプテンが「よしグループに分かれよう!」と声を上げた。

すると3,4人ずつに分かれて、リバウンドを取る練習をそれぞれ始めたのだ。グループには2年生と1年生が混ざっている。おそらく主に上級生が教えながら練習しているのだと思う。

数十人単位では賄えない部分を、こうして細かく分けることでマンツーマン指導や個人練習の要素に近づけようとしたのではないだろうか。先に私が申し上げた自学自習をしづらいチーム練習における難点を、彼らは見事に克服した

▼集まって何度も確認

また彼らがよくする行動がある。頻繁に集まって輪をつくり、改善点や練習のポイントを確認しているのだ。

これは最初、私から指示していた。今の練習スタイルが始まったはしりの頃、コーチから何かを言うばかりでなく、選手たちで集まって相談するようにさせていた。

そのころはただのフリだけで、話す中身も的を大きく外していたと思うが、それが数年経ち、今では自分たちで必要に応じて話し合いをしている。

まだ沢山の意見が出るところまではいかないが、少しずつ声を上げる人数が増えてきた。自分の考えが無ければ絶対にこのような場面でものを言うことはしない。上面のフリや演技ではなく、己の思考や感性が備わってきている証拠だと思う。

今後はさらに下級生からも遠慮せず声が上がることを期待したい。こうしたらどうかと、試しでも提案することが有意義である。練習や稽古とは、やってみて改善してリトライしての繰り返しに他ならない。正解・不正解などないのだから、思いついたらぜひ提案してほしい

▼自己修正

さてたった今現在の彼らの成長ぶりはどうだろうか。

先日こういうことがあった。

ジャンプ能力を育てるトレーニングの中で、リバウンド・ルーズを取るというテーマを立てて練習していたのだが、私が途中「じゃあ今日はボードを使ってやってみよう」と提案した。

空中でボールをキャッチする技術が大分上達していたので、ゲームの状況に近づけるためにボードにボールを当てて外れたシュートを取るシチュエーションをつくろうと思った。

私からは「ボードで」と言うことだけ話し、あとは選手に任せた。彼らは話し合い、おそらく主にはキャプテンが指示した方法と思われるが、3カ所に分かれて自分たちなりの練習を始めた。

しかし、その練習方法は正直うまいやり方に見えなかった。

リングを囲んで3人が三角形に立ちボックスアウト、外からシュートを打ってもらうという方法であった。

リングにぶつかって跳ね返るボールの動きを規則的につくることができないため、まるでリバウンド練習にならない。誰もボールに触れないような跳ね返り方ばかりで、まずジャンプすらできない。

ゲームのシチュエーションには近いのだが、練習としては有効な手法ではなかった。

しばらくやって3カ所ともまともに練習が進まなかった。私は静観しながら「どうするかな、このままズルズルいくのかな」と心中で思っていると、キャプテンから声が掛かった。

「ちょっと集まろう!」

皆で協議が始まった。

▼自分たちでつくる練習

それを見たとき、私はなんとも言えない喜びと安心を感じた。これが今彼らに生まれてきた力だ。

様子を見ていると、キャプテンだけが違和感を感じたのではない。多くの選手が「この練習はダメだ」と思ったようだ。ただそれを口に出して修正しようとか、変更しようとできるかが一番の壁だ。

協議では各々が自分の考えるところを発言していた。これまでで一番積極的な意見交換をしていたように思う。今度は下級生からも意見が出た。ただの一度だが、自分たちで修正したことはとてつもなく大きな意味を持つ。

最初はパフォーマンスであったが、こうして今は徐々にしかし着実に、本当の自学自習が備わってきている。

これが「自分たちでつくる練習」に違いない。私だけでなく、選手自身もそう実感したのではないだろうか

(次号へ)

 

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