【片岡編集長】FIBA-OQT決勝「イタリア対セルビアより」~イタリアのディフェンス2~

スキルアップ ディフェンス 動画 戦術 片岡 秀一

今回のトピックスは、「トリプルスイッチ」と呼ばれるディフェンス戦術です。

2018年女子ワールドカップ等で日本代表チームが抜群の遂行能力で活用し、相手チームの得点チャンスを潰していました。

大まかな構造やコンセプトを記載すると

  1. ピック&ロールに対してスクリナーがスイッチで守る。
  2. ロールに対して、一時的にアウトサイドの選手が守る。
    ただし、別の選手のインサイドプレイヤー(または比較的にサイズの大きい3番選手)と入れ替わり、高さの優位性を打ち消す

という狙いになります。

1.を実施する際には、インサイドの選手がアウトサイドの選手をある程度守れなければなりません。
2.については、ポジションや状況に応じた即断・即決が求められます。

1、プレーの構図

2,流れ

ルビア代表チームは、1-4の形から、複数のオフボールスクリーンを駆使し、チャンスを狙ってきます。1つは、AIカットと呼ばれる横方向の動きです。

続いて、3番の選手が5番のインサイドの選手にバックスクリーンをセットします。

AIカットの後にボールは4番の選手に渡ります。5へのパスコースが存在する為、X3の選手はバンプをする必要性があります。
そのタイミングを狙い、3番の選手は4番の選手にボールを受け、ハンドオフからの展開を狙います。

こでイタリア代表チームはスイッチで対応をします。つまり、X4がアウトサイドの3をマークし4番の選手はX3が対応を試みます。
※数字だけを見ると、3番と4番ですが、アウトサイドの選手とインサイドの選手とでサイズ差があります。

ず、X3の選手はロールをしてくる4に対してバンプをし、ゴール近郊への侵入を防ぎました。
同時に、コーナーにいるX5の選手がすぐに加勢します。
X3は、コートの状況をよく見たうえで、即座に判断し、X5とマークを入れ替わります。

時に3番とX4の攻防も見てみましょう。
スピードのミスマッチであることにセルビア代表も気が付き、インサイドへのアタックを試みます。しかし見事にドライブを防ぎました。
その後、インサイドへのパスを狙いますが、素早い連携とポストへのパスコースを遮断する素晴らしいステップワークもあり、パスカットの餌食になりました。

3、総括

トリプルスイッチについて、理論上で語るのはそれほど難しい事ではないかもしれません。

ですが、冒頭に記載した1.、2.の通りに実行するのは非常に難しいです。

そもそも、X4が3に対してドライブで直ぐに抜かれてしまうと、その段階でディフェンスにとっては不利な状況になります。

インサイドへの合わせからのダンクシュートや、ローテーションの隙を狙った的確なキックアウトパスによって3Pシュートに繋がることも容易に想像できます。

アウトサイドを守れるインサイドの選手がいるためにこの戦術を採用しているのか、脚力とサイズで両立している選手を中心に選考をしているのかは定かではありません。

しかし、スピードのミスマッチに対し、ある程度守れる脚力を備えていることが大前提となります。

国内では、WJBLで優勝をしたトヨタ自動車アンテロープスが今回のようなディフェンス戦術を得意としています。

チームの中で、フォワード/パワーフォワードのポジションを担う

  • 馬瓜 エブリン
  • 長岡 萌映子
  • 馬瓜 ステファニー
  • 河村 美幸

らのアウトサイドを守るディフェンス能力に支えられているといえるでしょう。

下記、以前にも掲載をした『選手に示す基準を明確にする』について、ドナルド・ベックコーチが講習会でお話していたことを再掲いたします。

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その際に重要となると思われるのが「選手に示す基準を明確にする」ことではないでしょうか。

B.LEAGUEで長年に活躍しているドナルド・ベック氏は、トヨタ自動車アルバルク時代、講習会にて下記の言葉を紹介していました。

「“what you teach,what you demand,what you accept” 選手に示す基準を明確にする」

基準、優先順位を明瞭にすること及び、チーム戦術を遂行する上で大切なことに焦点を当てて普段の練習することを重視する。

例えば、当時のトヨタ自動車アルバルクは、外国籍選手も比較的オールラウンドに動ける選手を積極的に採用するケースが多かったです。

インサイドの選手にも、トランジションディフェンス、ローテーションでアウトサイド対インサイドのマッチアップになったとする。

それでも「サイドステップ2歩」にトライをして守ろうとする事を要求した。全てを守る事は難しいにしても「サイドステップ2歩」にトライする事は妥協しなかった。

守る事を諦めて手から止めようとしたり、スティールばかり狙ったりすることをコーチとしては許さないという基準を明確にされていたと言います。

また、毎回の練習ではチームファンダメンタルとして2歩のサイドステップの練習もドリルとして取り組んでいた。チームとしての基準を示すと共に、練習の中でも分かるようにした。

最初のピック&ロールのディフェンスについても同様です。

ピック&ロールには、様々な守り方がありますが、選手が困惑しては意味がありません。選手に示す明瞭さも重要ではないでしょうか。

そのポゼッションのディフェンスが成功や失敗をした際に、その理由を具体的に振り返る事が出来ることが重要です。

基準や遂行すべき事が不明瞭であり、様々な要素が混複雑に在していれば、改善をする事が難しくなると思われます。

一例として、U19日本代表チームを率いていたトーステン・ロイブル氏は、基本的にはShowディフェンスをベースに守っていました。

ケースバイケースで、対戦相手によってはピック&ロール戦術を変更したほうが良かったこともあるかもしれません。

しかし、遂行力を高めることでディフェンスのミスによる失点は非常に少なかったことが印象的でした。

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この記事を書いた人:片岡秀一片岡 秀一
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)