【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 トレーニングレポート No.83「二つの運動を同時に行える能力をつくる 前編」

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運動技術能力を伸ばす上で、大事なポイントを一つアドバイスしたいと思います。

これまでも大事なポイントはたくさん出してきましたが、今回のものは運動というものの見方・捉え方として知っておくと、ものすごく役に立つ内容です。

私はトレーニング指導をする際、力の大きさよりも難易度を大事にしています。難しい運動をやってのける身体の操作能力ですね。

それを発達させようとしたときに、乗り越えなくてはいけない大きな山があって、①2つ以上の運動要素を同時におこなえる、もしくは②一連の動作の中で連続的に入れ替えられる能力を身につけることです。

何かをしながら同時に別のこともするとか、1つの動作から瞬時に違う動作へ変化させそれを何度もおこなう、そういった複合的な運動を覚えなくてはいけない段階が必ずやってきます。

人は同時に2つ以上のことを行えません。訓練すればできますが、そう簡単に身につくものではありません。

でも身体を使って何かをするということは、行為が複雑になることはあり得ます。スポーツならばなおさらです。それをできる人が高度なプレイスキルを発揮して、次々と記録を伸ばしていくのです。

私は年代問わず、あるところで必ずこの複合動作の練習を取り入れます。どこでというのは自分の感覚的な部分が大きいので明確に言えませんが、はじめから導入しても勿論構わないと思います。

今回見てもらう映像は、ディフェンスのサイド・ステップ(横方向への動き)を鍛える流れの中で、難易度を一つ二つ上げた内容のものです。

一度見て頂きましょう。

(動画1)

これは見ての通りですが、立っているペアの周囲をサイド・ステップでグルグル回ります。中心(ペア)が前へ移動するので、その分回ることが難しくなります。

またゆっくりやろうにも中心が動くので、遅れないようある程度の速さが必要になります。必然的にスピードは上げざるを得ません。

私は、
「できるだけ中心にくっついて離れないこと」
をルールとして定めました。立っているだけならそれも簡単ですが、動かれては維持することは少々難儀です。

色々な動き方の人が見られると思います。スムーズにできている人は何が上手いのでしょうか。

この動作でポイントとなるのは、二つの運動要素が噛み合うことです。一つが「サイド・ステップ」ですね。先ほども言いました。

もう一つは何でしょうか?分かりますか?

それは、
「身体の向きを変える」
ことです。

周囲を回ると言っても、なんとなく横へ動いて円を描けるものではありません。さらに小さく回ることがルールですから、頑張って身体の向きを自分で変えなくてはいけません。

このポイントがなんとなくでも感覚的に分かっている人は、そのおかげで衛星のようにキレイに回ることができています。

サイド・ステップにしか気が回っていないと、身体が開いたまま回ることになるので前への移動に遅れます。おそらく空気抵抗も手伝って動きが重くなってしまうでしょう。

では次の練習を見てもらいます。

(動画2)

先ほどは中心に身体を向けていましたが、今度はずっと前方を向きます。前を向いたまま、前進するペアの周りを回ります。

これは先ほどと動作が大きく変わります。なぜならばステップが途中で入れ替わるからです。

お気づきですか?じつはずっと同じ脚の動きではありません。横に来たときにリード・フットとキック・フットが替わります。回りながらも、切り返しの動きをおこなっているのです。

身体の向きがずっと一緒なので要素が一つ減ったと思いきや、今度は「切り返し動作」が加わりました。しかも回る動きなのに切り返さなくてはいけないという、非常に面倒な動作パターンです。

もしかしたら動作要素が3つくらいの感覚になるかもしれません。こういうことをコントロールできるようになっていくと、運動レベルは一気に高まります。

身体トレーニングは大体が1つの運動要素に絞られています。それは基礎基本として必要なので最初につくり込むとして、その先の段階として複合運動というものにトライすると言うことを覚えておいてください。

次号でもう少し掘り下げていきたいと思います。

(了)