【梅原トレーナーのからだづくり哲学】ケガ人の復帰をどう考えるか（２）
スキルアップ トレーニング 指導法 梅原 淳 練習法 育成法
前号からの続きで、いまはケガ人の復帰について考えている。ケガをしたことがその後に影響する人と、しっかり精算する人で競技力の伸びが大きく変わる。
そのことについて、我が身に起こりうるものとして捉えてみよう。
前号ではケガをしている最中に復帰に向けたトレーニングをおこなわず、ただ休み続け、患部が修復された後いきなり以前と同じパフォーマンスを行おうとする行為について触れた。
突き指や打ち身など、軽いものならば問題ないだろう。受傷したのはほんの一部であり、練習を休んだとしても数日だ。しかし骨折やひどい関節捻挫など、長期の安静が必要な場合には、必ずブランクという問題が起こる。
これを作る選手と空白を生まないように努める選手には、復帰後に歴然とした差が生ずる。
ケガをしたときには、必ず「復帰の仕方」を考えなくてはいけない。
いつまでもケガを理由にする
もう一つには、いつまでもケガ人面をし続けてしまい、いっこうにトレーニング負荷を上げない選手も少なくない。
プロの世界ではそのようなことはまず無いが、ノンプロ社会人や大学生以下のカテゴリーではよくあることだ。
痛いだなんだと言っていれば、ケガを言い訳にして辛いトレーニングをしなくて済むので、ケガというカードを捨てたくない、そういう心が透けて見える。
だからたとえ復帰しても、負荷の強いトレーニングになると脇に避け、いつまでも皆より軽めで済ませているという人がいる。まだ自分はケガの後遺症を引きずっていると言わんばかりに。
私は主に高校生スポーツに携わっているが、男女問わず、延々とケガをし続けているように振る舞う選手は未だに多い。
コートの中ではバリバリ練習しているのに、トレーニングとなると「負荷を掛けられないので・・・」などと言ってくる選手がいる。要するに都合良く選んでいるわけだが、当然またしばらくすると體が痛みプレイが続けられなくなっていく。
学生スポーツに関わるコーチやトレーナーには、このケガの復帰にまつわる諸々に注視してもらいたいと思う。
ケガに呑まれて終わる選手人生
この二つのことは、非常に大きな損失を生んでいる。ろくに体力づくりもせず、長期間ブランクをつくり、いきなりパフォーマンスを上げようとしてしまうケースは大変に多い。
體づくりは抑えたままゲームでは目一杯やろうとする、だからまたケガをする。これこそが現場に潜む本当のオーバーワークである。復帰を焦って無理をするパターンは、現実にはほとんど見られない。
ケガを理由にして「段階的に」と言いながら、自分への甘い言葉だけ拾ってずっと楽と手抜きを続けてしまう者もいる。そういう選手はまず最後までそのままである。
気づけばうだつの上がらないままもう引退間際になってしまった、そんなことが多い。それはチームのチャンスも潰れ、その選手の才能と可能性もおじゃんにしてしまっているのだ。
ケガに呑み込まれるチーム、選手ほど残念なものはない。
ジュニア期のあなたへ
先ほども言ったように大学以下のカテゴリーでは、ケガ人への積極的な指導（指示・アプローチ・レクチャー）というものは少なく、子供たちは完治するまでの期間を無駄に過ごすことになる。
アマチュア･スポーツにおいて、それはもうある種仕方のない現実である。
それを受け入れ、ただしそのことによって起こりうる悪影響をしっかり考え用心もして、何かしらの対策を講じることを忘れないでほしいと思う。
體が万全なときも、疲労やケガなどで重いときも、すべてあなたのスポーツ人生のオンタイムである。過ごす時間は全部が積み上がっていくので、１秒も無駄にしてはいけない。
小さく一段登れる階段を地道にいくつも進むしか、物事を進展させる方法はない。誰かに頼ることや任せることはできないと腹をくくり、自分で考え自分で行動することを心掛けよう。
ケガの復帰は休んで空白を作ることではなく、どれだけの取り組みをしたか、その一点で決まる。初めから解っているのだから、どうぞしっかり體を動かしてください。
（了）
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