【梅原トレーナーのからだづくり哲学】この時期に新入生がまず取り組むと良いこと(中)
スキルアップ チーム作り トレーニング 指導法 梅原 淳 練習法 育成法
前回の続きです。
新入部員の入ったこの時期、どんなチームでもそれだけで活気が増し、パッと花が咲いた空気に包まれます。
それをただの落ち着きのないお祭り感覚にせず、いまの目的と課題をちゃんと定めて選手各々がそれに向けた行動を取ることが、チームづくりを良い方向へ進ませます。
今回は運動体力の観点から、新入生・新規加入選手が取り組むと良い導入トレーニングをご紹介しましょう。
▽日本の部活動を現実的に見るとこうなる
私があえてここに示す内容ですから、教科書的なありきたりのものは出しません。平たい定番ではなく、たった今の日本で行われている部活動にマッチする超実践的な話をします。
運動生理学やバイオメカニクスといった学問領域で語る内容ではなくて、いまの条件下においてどうやって運動の強化、体力技術力育成をはかっていくか、知恵を絞ります。
1.新入生は徹底的に技術と体力づくり
日本では上級生が練習の主体となり、下級生が練習に入ることは二の次という慣習があります。
先に入部した先輩だから、その人たちの立場を優先的に扱い、新入りは空席待ちのような立ち位置にあります。
年功序列は構わないと思いますが、現実は技術的・スタミナ的により劣るのは新入生であり、課題として考えるならばより鍛練を必要とするのはその人たちのほうです。
新顔はしばらく蚊帳の外で相手にされないという雰囲気から、新入生は入部当初少なくとも最上級学年が引退するまで、まともに練習へ加えてもらえない場合が目立ちます。
即戦力になりそうな者だけその理由からピックアップされることはありますが、多くの新入生は「その他大勢」の扱いを受けます。これは時間的なロス、それも大打撃に近い時間の喪失と考えるべきです。
上級生には余裕があります。たとえば中高生の場合3,2年生には体力的に余力がありますので、新入生を雑用のみに従事させるのではなく、チーム練習についていくための基礎体力を新入生こそ徹底的に鍛え、部活運営に関わる諸用は3,2年生が行うべきです。
新学期の始まる4月以前には、ふた学年で活動していたのですから、引き続き同じように行えば良いだけです。一年生が入ってきたからと言ってさっさと雑用を引き継ぐなんていうのをやめて、新学期になってもこれまでどおりの体制で動くべきです。
実際そのほうが上級生としても余計なポジションの入れ替えをしなくて良いので、大会へ向けて集中できるし、新入生は人間関係も出来ていない情況ですから何にしたって動きは鈍くなります。だったら突然多くの仕事を振るよりも、自分の体力づくりに集中させるほうが生産的です。
▽手狭ならば思いきってトレーニングに絞る
日本の部活動もスポーツクラブも、練習場所をひとつのチームが占有して行える競技はそう多くありません。
外クラブか中クラブかに関わらず、場所という問題は必ず起こります。
人口が減っていても子どもの数が減少していても都市部には人が集中するし、この多様化した現代にあっては田舎でも多くのスポーツ競技が行われていて、その分、部員数は少なくても団体別にするとチーム数は多くなるわけです。
つまりは場所の取り合いとなりますから、平等に割り当てると練習時間は短くなります。
さらには競技場の広さも、狭い規格のところが大部分です。面積の問題も乗り越えなくてはいけない問題のひとつです。
子どもの数が減っている現実以上に、練習環境は条件が悪いと言えます。
2.思いきって上級生とは別メニューで鍛える
そこでもし新入生を上級生に混ぜて練習することで、各選手の伸びに減速が起こる懸念が生まれるのなら、少なくとも平日の練習では新入生のための練習課題をつくることを検討しましょう。
コートの中では上級生が練習を行いますので、新入生は別の場所を確保する必要があります。ボールを使用した練習は限られますが、一人がひとつボールを持ってドリブル練習をすることなら廊下でも可能です。
チームで必ず覚えるべきドリブル技術の項目をたくさんつくり、それを個人で練習させると良いでしょう。
同じようにして體づくりも、入部当初にしっかり身につけるべき項目を立てて、新チームへ移行する夏頃までに習得させておきます。
それができると夏に、今度は2,1年生の練習が開始されたときに、その進行にブレーキを掛けてしまう学年差が生まれず、はじめからプラスの時間をつくることができるというわけです。
ではその具体的な体力トレーニングの項目について、次回にまとめます。
(以下、次号)
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