【梅原トレーナーのからだづくり哲学】いまこそ「キャプテン」を考えよう その4
スキルアップ チーム作り トレーニング 指導法 梅原 淳 育成法
新チームがスタートしたときに新キャプテンも決まる。
選手同士で話し合い、自分たちでこれからのチームを率いる役職を決めているケースと、もう一方で監督が指名するケースもある。
監督からの指名というのは、選手間のそれとはまた大きく違っている。選手たちの性格や働き、影響力といったものを外からよく見ているし、大人として立場と目線も違うからより的確な判断ができるだろうと思う。
しかし今一度、自分のコーチングに合致する適任者を選び、また自身がキャプテンという存在をより良く理解しているのかを問うてみよう。
▽勝つために必要な要素
コーチにとって、チーム強化のために必要な要素とはなんだろうか。それはもちろん技術レベル競技レベルの高い優れた選手だ。優秀な人材がいれば試合に勝てる。マネージャーよりキャプテンよりアシスタントより何より、身体能力に長けたスタープレイヤーが欲しい。
しかし宝の持ち腐れということもある。実際に成績優秀な人材を集めるだけ集めておいて、試合に勝てない素材台無しのチームは少なくない。これは何を物語っているのだろう。
優秀者が欲しいのはすべてのコーチが同じだ。ただチームづくりにおいて成長していくために無くてはならないものは何か、それが必ずしも人材に頼るコーチばかりではないのだ。
▽能力より「人」を重視する発想
経験豊富なコーチ、本物の実績を持つコーチ（これは一概にタイトルを持つということではなく）は、成績優秀者の獲得よりもリーダーの育成やチーム内の雰囲気作りを大切にしていたりする。
プレイヤーとしての素材がいかに良くても、物事を行うのは個性ある人間同士であって、すべてのことが思考や感情に大きく左右される。たとえ個人競技でも、自身の心が乱れていればパフォーマンスは低下して負けてしまう。
これが団体競技であったなら、影響は果てしなく大きくなることはあなたも予想できるはずだ。とくにバスケットボールやバレーボールなど瞬時のコンビネーションが必要な競技では、息を合わせる力が勝負を決すると言っても良い。
だからチーム内において、ただ選手各々の技術力が高ければ試合に勝てると考えているコーチは少なく、日頃から人間関係を形成することに多くのエネルギーを注いでいる。
▽キャプテン像の共有
人づくりを重視しているコーチが力を入れて育てているのは、優秀なアシスタントコーチ、優秀なマネージャー、そして優秀なキャプテン（主将）である。
もちろんそのような役職についてだけでなく、選手自身の日常の振る舞いなども人づくりのど真ん中だ。育成に尽くしているコーチは、これらをすべて人間関係づくりと捉えている。
なかでもキャプテンの影響力は大きく、それだからこそ誰もが認める人間に託す必要がある。この誰もが認めるというところが重要なのだが、いったい選手は何を認めるのか、どんな者がキャプテンに相応しいのか、その認識が正しく共有されていなければいけない。
チームで一番巧いエースだからキャプテンなどという発想は、まったくの論外と言いたい。それはキャプテン像が見つけられていない証拠である。キャプテンに何を求め、その存在がどのような影響にあるのか、そこの理解が無いかぎりチームに良いキャプテンは生まれない。
コーチも含めチーム内の皆がキャプテンの価値を正しく知っていることが不可欠で、だから安直に試合に勝った負けたではなく日頃から人づくりを行っているのである。
あまり一つのレポートが長くなってもいけないので、続きは次号にしたいと思うが、あなたの理想のキャプテン像もぜひお考えになって、その上で次号を読みご自身の良ききっかけにしていただけたらと思う。
（次号へ続く）
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