オンボールスクリーンで発生したミスマッチをチームで守る~MHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクのディフェンスより10~

キャンペーン ディフェンス戦術 動画 片岡 秀一

女子日本代表チームがワールドカップ出場を確定させました。男子日本代表チームも国際試合を控えています。

引き続き、本稿ではドイツリーグ及びBASKETBALL CHAMPION LEAGUEにも参戦しているMHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクのディフェンスを題材にしたいと思います。

繰り返しになりますが、日本バスケにも馴染みの深いジョン・パトリック氏がヘッドコーチを務められており、非常に激しいディフェンスが特徴です。最近では、ドイツ国内で講演会等も開催され「Charging and reloading your team for the new season(新シーズンに向けたチームの準備)」という題目で講演もされています。

同講義の中、コーチとしてのご自身を「コーチングはアーキテクト(建築家)やコンサルタントのような存在」と語られています。

理由は、毎シーズン12人から15人からなる組織であり、かつ新しい選手も数多くいる中で、一人一人を有機的につなぎ合わせ、全体として優れたパフォーマンスを発揮させることを生業とする為、と語っています。

また、練習開始からseasonまでの準備期間は45日間。

その条件の中で、最大限のパフォーマンスを発揮する準備を大切にされていることが紹介されます。

本稿では「一人一人が有機的につなぎ合わされている」素晴らしいディフェンスのプレーをご紹介いたします。

トピックスとしては、これまで通りにポストの攻防に関するディフェンスです。

1.プレーの構図

2.プレーの流れ

MHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクがフルコートディフェンスでオフェンスを苦しめます。相手チームは慎重にボールを運び、トップの位置でピック&ロールを試みます。

ボールを保持する1は、オンボールスクリーンに対してマークマンのX1がファイトオーバーしようとしていることを見抜き、リジェクトを仕掛けます。

虚を突かれた形になりますが、スクリナーのディフェンス(X5)が進路を防ぎます。そのことにドリブラーも気が付き、スピードを緩めます。

センターのディフェンスがいるという事は、スクリナーのマークが甘くなっているはずです。

ゴールへの進路は塞がれましたが、ここではスピードのミスマッチとなりました。

オンボールスクリーンからポップをしたような形で、スクリナーの選手にボールを出します。

ここで、MHPは完全にマークマンを入れ替えました。インサイドの選手にはガードの選手がマークをしています

今回、オフェンスチームが狙うのはサイズのミスマッチです。インサイドにボールを供給するのに、優位なポジションにボールを移動させるべく、反対サイドの45度でボールを受けます。

そのオープンパスの瞬間、X1はX3とマークを入れ替わりました。5を守ろうとする際に、大きくはないマッチアップです。

しかし、X1が5をマークするよりもX3が5をマークする事で、少しでもサイズの不利を解消しようとする発想です。

X3は、インサイドに対して非常に素晴らしいディフェンスを見せています。簡単にポジションを奪われず、身体を張って守ります。

インサイドにボールを供給したくても出来ない状況を作り出しました。

ボールを持つ選手が困惑したことも影響しているのでしょうか。最終的にトラベリングをコールされ、ディフェンスの成功となりました。

3.まとめ

本プレーで注目に値する個所が、もう一つあります。

それは、インサイドにボールが入りそうな場面での他3選手のポジションです。

インサイドの選手に関する攻防としてスイッチが連続的に発生している中で、残りの選手もマッチアップの状況を把握しています。

インサイドにパスが供給される位置にボールが移動した際には、ローポストでのダブルチームシフトを取るべく、連動しています。

実際には、ローポストでポジション取りが優位になり、容易にボールが供給されずには済みました。

仮にボールが渡ったとしても、容易に得点は出来ずに再びパスを回す必要に迫られたことが予想されます。

本プレーは、冒頭のリジェクトによる危険を察知して潰した後に、次から次へと、攻防の局面を転移させていったことが特筆次項として挙げられるはずです。

まず、ドライブインの危機があり、その次にインサイドの選手が3Pエリアでノーマークになる危機がありましたが、身長差を承知した上で守ることでその危機を無くしました。

その次は、高さでの不利です。しかし、危機の質の程度を変えたのちに、残りの選手がポジションでカバーをしました。

状況が刻一刻と変わる中、それぞれの選手が自分の役割を瞬時に変形し、失点のリスクを低くしていきました。

ジョン・パトリックHCは、ご自身の仕事を「アーキテクト(建築家)やコンサルタントのような存在」と語ります。異なる考えを持つ選手一人一人に同じコンセプトを共有する事で、各選手を有機的につなぎ合わせ、全体として優れたパフォーマンスを発揮させることを大切にしていることが分かるポゼッションといえるのではないでしょうか。

本ブログ記事について、本稿を含め、残り3回となりました。

お読みいただいた皆様、ありがとうございます。何卒、宜しくお願いいたします。

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この記事を書いた人片岡秀一片岡 秀一
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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