【片岡編集長】ナショナルチームのゲームより9(アルゼンチン代表のピック&ロール)
今回も、大会準優勝に輝いたアルゼンチン代表のプレーを取り上げます。
同チームも、スペイン代表チームの基本コンセプトと似たプレーを採択しています。
選手の長所、特徴、そして相手チームのDFに応じて使い分けています。動画、図解と共に紹介していきます。
今回は、相手チームのSwitchに対する攻防を中心に扱います。
1、プレーの構造
2、プレーの流れ
シュートを決められた後のプレーにて、アルゼンチン代表のオフェンスがスタートします。
映像では収まっていませんが、何かしらのシグナルが出されたはずです。
ボールサイドのコーナーにいた選手が反対サイドへ移動し、2人のサイドでピック&ロールがスタートします。
ここで、フランス代表チームがICEをセットします。
ICE:ボールマンのディフェンスがスクリナーのいる方向のドリブルコースを消し、インサイドのディフェンスがドリブラーとリングを結ぶラインを守るコンセプト
ドリブラーは無理に仕掛けず、スクリナーの選手は反対サイドへとPOPをしました。
ICEの場合、インサイドの選手がドリブラーとリングを結ぶラインに下がる為、POPをするとインサイドのディフェンスとの距離を作る事が出来ます。
ここで、元々のコンセプト通りに、反対サイドへボールを展開します。
3人サイドの真ん中の選手は、コーナーの味方のDFに対してスクリーンをセット。
ここでは、スクリーンを予測され、スライドで守られます(X1がマークマンを追いかけるコースに注目)。
インサイドの選手がパスをして、その後スクリーンを仕掛けます。
その際、2回目のピック&ロールに対しフランス代表チームはSwitchを選択します。
ここで、インサイドvs相手チームポイントガードのマッチアップとなりました。
そして、ボールマンに対しては、相手チームのインサイドの選手がマークをします。
フォーメーション等のプレーから『このアドバンテージを活用する』考え方へと移行します。
コート上にいるディフェンス及びオフェンスの両選手とも、このMiss Matchに気が付いています。
カンパッソ選手は、インサイドのスコラ選手にボールを預けようと試みます。
一度、ローポストのエリアが味方同士で混雑しましたが、直ぐにスコラ選手の為のスペースを優先します。
フランス代表のガード選手は、ゴールとスコラ選手を結ぶラインではなく、上の位置からスコラ選手に圧力を与えます。
反対サイドから、味方のインサイド選手がヘルプに来ることがチームのルールとして決まっているからでしょう。
ここで、重要になるのは『スコラ選手も、相手チームがダブルチーム等で対応してくる、及び、ベースライン側に待ち構えている事』を把握している事が重要です。
自分のマークマンが上から圧力を与えていれば、ベースライン側が空いていると思うはずです。しかし相手の思惑には乗りません。
コートの状況を的確に見た上で、ドリブルで3Pエリアの外へと移動します。
相手のディフェンスが困惑しているのを確認し、3Pを放って見事に成功させました。
3、総括
コート上にMiss Matchが発生した際の攻防は、近年のバスケットボールの見所の一つと言えるでしょう。
Miss Matchの攻防には、様々なコンセプトや攻略方法がありますが、まずはMiss Matchである事を自覚し、有利・不利を把握する必要があります。
偉そうな表現になってしまいますが、もしMiss Matchという視点を持ちながらゲームを観戦する事が新鮮さがある方は、是非その視点で見ていただけると各ポゼッションでの両チームの思惑が見え、ある程度の予測も立ちコート上の攻防の深淵が掴めると思います。
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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