【梅原トレーナーのからだづくり哲学】ケガという病魔 その1

スキルアップ チーム作り 梅原 淳

ケガという難敵に今、苦慮している。ケガはスポーツ選手にとって致命的だ。それで選手生命を絶たれる場合もある。

しかし同時にケガは悪魔の囁きでもある。志や目標が生半可な者はそれを口実に修練を怠る。体にきついことから逃げられ、楽をできるから。

この暗黒からの甘い誘いにまんまと呑み込まれて、自ら船を降りる子供がなんと多いことか。

これはたまさか私の指導する現場だけで起こっている事態だろうか。数にすれば日本全国のジュニア・アスリート全体の一握りであるが、日本という一つの環境、同じ年頃の同じ人間のすることだから、決して特異な例ではないと思う。

今回お話しすることは、具体的に名前や場所は一切申し上げられない。ただ起こった出来事について、実例としてお伝えすることは構わないと思うので、どうぞ我が身に照らして考えていただけたらと思う。

 

▼練習前の行列

私のトレーニング指導の時間は、日々様々なチームを回り、ひとチームにつき2週間に一度のペースもあれば2〜3ヶ月おきの場合もある。

練習開始前には、選手が各々に必要な話をしに私のところへやってくる。いわゆるホウレンソウ(報告・連絡・相談)だ。ここにケガの報告と練習をしない旨の話をしにくる選手が、ズラリ並ぶ。

ホウレンソウは普段、多様な内容になっている。例えばキャプテンが「今日は欠席者が3名います」と言いに来たり、補習や面談または生徒会など別の課外活動があるから途中で抜けると伝えに来る者がいたり、大会結果の報告をしてくれる者もいる。

必要な話が無ければ、誰も来ない場合だってある。

そんな中、やたら毎度行列をつくるチームがある。私はその選手の気配で大体話す内容を察知できてしまう。ゾロゾロと近づいてくるたび「またか・・・」と心中で肩を落とす。

それは決して嫌気が差しているのではなくて、本当は焦っている。このままだとチームが潰れてしまうからだ。

 

▼練習を休むための理由

行列と書いたのは、当然それが一人二人の話ではないからだ。5人も6人もが連なり、大小様々に「あそこが痛い」「医者に診てもらったら」とケガの報告にやってくるのだ。

ただ単にケガの部位を知らせに来たりはしない。本題はケガをしているからトレーニングを休むと言いに来ているのだ。

実際にある日において、程度の大小はさておき全部で七名の見学申し出があった。皆口を揃えて「ケガのためできません」と言う。これで焦らずにいられようか。

今日のトレーニングを外れたい、そう思っている選手が七名もいる。全員で十数名のチームで、見学希望者がじつに半数近くになってしまった。

あなたがコーチだとしたら、これを受け入れられるだろうか?

試合でコマが不足することへの心配ではない。もしこのような状況を目前に何も気にならないとすれば、チームを誤る危険がある。

 

▼内に潜む真の病魔

ケガ人の多さを問題にしているのではない。私の焦りはそこではない。ケガを口実にトレーニングを休もうとする発想がチーム内に広がっていることこそ、真の病魔だ。

一時だけのしかも偶然に重なった出来事ではない。一昨年も昨年も今年も、そしておそらく来年も、年がら年中誰かしらがそうやって長期に修練を休んでいる。

これが今だけの個別の状況とお思いだろうか、違う。こういった雰囲気や行動形態は綿々と受け継がれていく。なんとかしなければチームを潰すことになる。

無理強いをするとか根性の話に聞こえますか? とんでもない。大切な短いスポーツライフを心が弱くて勇気がないために棒に振ろうとしている選手たちに、全力で伝えなくてはいけない。

いったい何が起きているのか。

 

(続きは次号)

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