読者Q&A「トレーニング方法が正しいか評価してほしい(中)」 【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
前回からの続きです。「トレーニング方法が正しいか評価してほしい(上)」
ミニバスのコーチHさんから、小学生の運動能力を伸ばす方法について質問をいただきました。
トレーニングメニューの正否よりも、それを活かせているかを見ようと提案したところまで書きました。
一度のエントリーで文章が長くなりすぎないように配慮しているため、何度かに区切ります。
そこで、質問内容が分からないと読んでも全体が見えませんから、冒頭に前エントリーで示したHさんの質問をそのまま再掲することにします。
その分では全体量が増えてしまいますが、どうぞご容赦ください。
子供たちは、私たちが自然と培ってきた運動能力を保持していないと感じる為、バスケスキルの前に基本的な、体幹、バランス、ランニングを最初に取り入れています。 具体的には、股関節回りを鍛えるために「蹲踞(そんきょ)」「ランジ」「片足立ちで股関節から前後ろと収縮運動」「腸腰筋・股関節・腿周り・臀部の静的ストレッチ」をおこなっています。 またバスケにおいてはあらゆる動きを同時にしないと行けない為、神経系のトレーニングとしてバスケスキルを練習する事でトレーニングなると思っています。 目下の中心となる課題は、1.上半身と下半身の連動性、2.ストップ&ゴー動作の強化(特にストップ動作)です。 例えばホップジャンプ(足首)からのダッシュを練習しています。 ジャンプとダッシュの連動性を高めたいと思って取り組んでいます。 筋力、練習量が少ないとは感じています。 客観的に上記メニューを評価していただける方がいない為、不安になっております。ご教授いただければ幸いです。
この素晴らしい取り組みについて、私が心から伝えようと思うことは、
「専門知識をどこまでも知って正解を見つける努力以上に、どんなことでもプラスの面が必ずあってそれを引き出すことに力を注ぐと実りが大きい」
ということです。
ドリル的では身につかない
私がつねに選手やコーチへメッセージとして届けていることは、結果をよく見て本当にそれが有効的に行われているかを確かめよ、それを常にしているか?という問いです。
これは己に問い掛けるべきものであり、必ず練習した分の伸びはあるはずだし、もしそれが見られないのであればすぐに次の手を打つべきですね。
物事は絶えず試みとその結果ですから、やっておしまいでは何も得られなくて、トライしたことで得たものを活かして次のトライを行います。
つまりいま取り組んでいる練習なり体力づくりなりを、ひとまず継続していますで留めずに、毎日を結果として「どうなったか」「上達したか」と問う作業が重要なのです。
これには統計的な数値などいりませんし、専門的見解も必要としません。力がついてきている、少しできるようになった、なんだかココがうまくいかない、当人たちにはちゃんと分かるはずです。
自分自身でフィードバックを行うことが不可欠で、それが創意工夫を生み独学や自己流でも成果を出すコツなのですが、ここが抜けている勿体ないケースを過去にたくさん見てきました。
つねに結果までを見る
ここでHさんの質問に戻ります。
股関節回りの強化を目指していて、腸腰筋の柔軟性を高めるトレーニングをしています。具体的に「蹲踞(そんきょ)」「ランジ」などをしていて、練習後には股関節の静的ストレッチングを入れています。
例えばここだけを見ても、その取り組みを日々している結果を実感することができます。
変わってきているか?あまり変化がないか?もし良くなっているのなら幸いだし、変化がないのならば「なにが足らない?」「どこかが違う?」と観察し考えを巡らせて補正を試みることができます。
現場にいる選手本人、それを観察しているコーチや親御さんにも、股関節が柔らかくなってきたのか、そのおかげで走ったり跳んだりの動作で良い影響を見ることができるかなど、トレーニングによる結果として何かしらの答えを出しているはずです。
それをしっかりと見つけることが、いちばん肝心な作業です。
さらに続けると、改善したい点に挙げられているものに、手足の連動性を身につける、ストップ&ゴーの変化とくに止まる能力をつけることに、頑張って取り組まれています。
連動性については、片足立ちになって手足を振る訓練を行い、「動く→止まる」の変化に関してはジャンプとダッシュなどを組み合わせた訓練をおこなっています。
どうでしょうか、ここでも具体性は充分にあり、あとはその内容の妥当性よりも、フィードバックを重視した自前のアップデートが有益だと私は考えます。
ここまでしっかり定まったプログラムがあれば、日々の観察から、細部として工夫してみる点を探すことができるはずです。
練習とは膨大なデータです。ウソのないありのままの結果が毎日得られるのですから、これ以上の情報蓄積はありません。
蹲踞(そんきょ)の中に光を見つける
私はトレーニングコーチの端くれとして、客観的に見てこれらの取り組みが不足したものだとは思いません。とても良いものであり、私も同じプログラムを実践する場合があるでしょう。
大事なことは、それらが伸びを作っているかどうかです。
蹲踞(そんきょ)をして、それで股関節がどう変わっているか、狙いどおりに可動域が広がり開脚にも強くなっているのか、という結果は誰でも知ることができて、プラスでもマイナスでもそれを元に方法を少しアップデートできます。
それは現場にいる選手とコーチで充分に行えることです。
もし成果に乏しいならば何が悪いのか、
- 構えが違っている
- 時間が短すぎる
- サボっている
- まだ始めて期間が少ない
など様々に原因を探ることができると思います。
蹲踞が効果的か否か、正しいか否かに目を向けているところから脱して、蹲踞の中で良き面を見つけることに力を注ぐようにするのです。
ここで一旦区切って、次回でまとめます。
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