ものに頼って良くなる人と無駄な人【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
以前このレポートで、シューズやシャツなど道具は品質が良くて高い物を選択することが賢明という内容を書いたことがある。
また、あまり自分を楽にしてくれる道具に頼ると能力は弱くなる、という主旨の話もした記憶がある。
その意味で私は普段、選手たちには裸足でトレーニングしてもらっている。鍛える上では素足がダイレクトに響くからだ。負荷を和らげるのでは、鍛えることと逆行してしまう。
これらを踏まえて、道具の選び方をどう考えると良いものか。
一般的でありきたりな見解はしない本レポートであるから、今回も思いきった独自の角度で書いてみたいと思う。
道具は使い手を選ぶ
結論を言えば、藁にもすがる思いで低迷や苦しさから脱したいと努力している人にとっては、そのサポートとなり得る良き道具は何よりの武器となるだろう。
たとえばシューズで言うと、頑張って走ろうとしているアスリートには、高性能なソールを搭載したハイエンド・モデルは大いに役立つ。
野球のバットやグローブ、テニスやバドミントンのラケット、水泳の競泳水着、スピードスケートのレーシングスーツなど、あらゆる道具はアスリートの頑張りに比例して、その真価を発揮する。
これは成績の高低ではない。
競技力が高い者は高価な道具が良くて、技量が未熟な者には安価な粗製品が合うとする思考が日本ではどことなく浸透しているが、本当はちょっと違う。
正しくは、どこまでも真剣で、熱が入っていて、上達してやろうとたとえ悪戦苦闘しても諦めず頑張っている人には、良き道具が力を与えてくれるものとなる。
いまの実力や競技成績は関係なく、成人でも10歳以下の子どもでも無論関係なく、当然、男女に差などなくて、頑張り屋には良い道具が必要なのだ。
由って来るところはなにか
こういった話は、安易に便利グッズは良い悪いというものではない。
道具のほうにではなく、使う人間のほうにその素質が求められている。道具があってもなくても自力で成長しようと奮闘しているのか、楽をしたい怠け者なのか。
からだづくりには欠かせないサプリメントとして「プロテイン」がある。おもにたんぱく質を大量に摂取して、筋肉づくりを促進させようというものだ。
食事では間に合わないほど、トレーニングの筋ダメージにはたんぱく質を必要とするということでもある。意図的に強い負荷で筋肉を壊し、それを修復しようとからだは材料を欲する。
その量が異常なほど多くなるので、それに応える栄養摂取の手段がプロテインというかたちで生まれた。(あくまで一般社会におけるサプリメントの話です。医療的な成り立ちのものとは違います)
そのプロテインも消費者の感覚が場合によってズレていき、それを飲めば筋肉がつくものだと間違う人が次第に増えた。
まず飲むことが先になってしまって、自らからだを酷使して努力することが二の次となり、そのうち頑張らずにサプリだけ飲むようなことが起こる。
特効薬と混同してしまうからだろうか。トレーニングには汗を掻かず、ただプロテインだけをマメに飲むような逆さまが、高校生あたりにも浸透している。
ハリウッドとドラクエ
これがなにを物語っているのかはもうあえて言葉にするまでもないが、楽をしようと道具を手にする人は、高いお金を投じて高性能に頼っても大抵はムダ銭に終わる。
高い機能性に期待して、そのおかげで冴えたパフォーマンスを発揮しようと安く考えてしまうからだ。
楽して点数を稼ぎたい人間には「便利」「高機能」といったものは、良くなるどころかその人をきっとダメにしてしまうだろう。
ハリウッド映画の派手なアクションものでは、悪役が凄まじいロボットや薬で兵器化して、ヒーローにやっつけられるのが定番だ。わかりやすい風刺だと個人的に思う。
話を戻して、たとえ技量が低く、下手の代名詞のようなレベルであっても、もがいて、よじ登ろうと踏ん張っているなら、きっと道具は救いの手となる。
そこに頼っていない人は、きっと「よしこれでなんとかなる」と勇気が湧くことだろう。さらにもっと頑張るに違いない。
ドラクエの、剣と盾そして鎧を少しずつ重厚にしていくあのストーリーを思い描いてほしい(やったことのない人はゴメンナサイ・・・)。
漫画はとても解りやすい。
ぜひ良い道具を
キツい言い方で書いてしまったが、ありのままを申し上げてこのようになった。
そもそも自分の頑張りを第一にしないで、安易に道具で良くなろうと期待する人には、たとえどれほどの便利グッズ、ハイスペック製品でもその道具は活きない。
道具があってもなくても関係なく、まず己が頑張って鍛えている人には、それはきっと共鳴する仲間となり、ドラクエのように生きた道具となってあなたを支えてくれるはずだ。
これを読むあなたは頑張り屋で、もしかしたらなにか苦悩を抱えている人かもしれないから、ぜひ道具選びは慎重にかつ変な遠慮をせず、自分に合った良い物を手にしてもらいたい。
(了)
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