育成期に能力を伸ばしたいなら(下)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 トレーニングレポート No.120
前回、中学バスケ部のクリニックでディフェンス力を上げるための一対一の足づくりをおこなった話をしました。
育成期に能力を伸ばしたいなら(中)【梅原トレーナーのトレーニングレポート No.119】
育成期に能力を伸ばしたいなら(前)【梅原トレーナーのトレーニングレポート No.118】
バスケットボールのバの字も出さずに、追いかけっこをして逃げる相手を捕まえる方法について皆で考え、選手たちも各々に工夫をこらして足を動かしていました。
私は練習後に先生とのディスカッションで、あまり「バスケットボールの視野に偏らないほうが賢明」であることをアドバイスしました。
それがいけないのではなくて、どんな分野においても現実から離れた専門的思考は必ず生まれるものなので、あらかじめそれを留意していつでも視点を変える準備をしておくことが発展のサポートとなります。
ディフェンスの足が動かないのも、きっとバスケットボール競技でだけそうなのではありません。サッカーをしたって鬼ごっこをしたって、動けない人はいつでも動けないのです。
つまりバスケットボール的ディフェンスの足は、改善の道標とならないことを意味します。それが未熟なのではなく、それがトレーニングとして必要なのでもなく、素直に足さばきがうまくないということになります。
平面を走り回る身のこなしが鈍いだけのことなのですね。
運動神経は良いのか
育成期と言っても、それは年齢によって区切っているだけのことで、上達している最中のことを言うのであれば、それは7歳でも18歳でも関係ありません。
技量が未熟で一定のレベルに達していない人は、まず運動の基礎を習得する段階にあります。
たとえ20歳でもバスケットボールを始めたばかりならその基礎から鍛練するのであり、もしも運動が上手ではないとしたらバスケットボールの専門技術の前にそこを伸ばさなくてはいけません。
これはごく当然のことなのですが、育成を年齢や経験年数で見ているために、ある程度の時間を経ると素人からバスケットボール選手と立場が変化して、専門的な練習しか行わなくなるのです。
しかし大前提として、運動が上達しているのですか?と考えることを忘れてはいけません。
脳と体をつなぐ
ディフェンスの足が動かない人は、目では情報が取れていますからちゃんと脳で理解しています。動こうとは思うのですが、それが体へ伝わりません。シンプルにそれだけです。
その能力はバスケットボール特有のものではなく、人間に備わっている神経系の発達によってディフェンスの足は向上します。
前述の中学生のクリニックでも鬼ごっこでディフェンスが少し良くなったのは、選手らの足が動かない問題点がそこにあるという証拠です。
実際に多くのバスケットボール技術の発達のカギは、基本的な運動技術能力に関わっています。
ベースをしっかり身につけることを省くチームは多く、それは選手もコーチも「バスケットボール」に頭が固まっているからです。
どれだけ勝ち星の多い強豪チームでも、実力が安定しているほど基礎を大事にしています。バスケットボールというゲーム性ばかりにかまけてしまうと、それが見えなくなるものです。
もう一度まとめると
上達の秘訣は、あまりバスケットバスケットしないこと。
専門性がかえって邪魔をしてしまっている可能性があります。そこからしか考えられなくなります。
事実はもっとシンプルです。
バスケット的なステップはこう、守り方はこうと執着しすぎている人は少し下がって目の前を広く見てみましょう。
こんな作戦でこう仕掛けて、それも見当違いです。策が試合で活きることはあっても、気になる足の弱さ重さは改善されていませんよね?
プレイ的技術力や仕掛けの巧妙さではなく、運動的な技術力を見ましょう。あなたの基本的な運動のうまさです。
それがバスケットボールを支える柱であることを、けっして忘れないで下さい。
最後までお読みいただき、有難うございました。
(了)
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