スペインピック&ロールを巡る攻防2~日本vsオーストラリア戦より ~

オフェンス戦術 スキルアップ 動画 片岡 秀一

12月15日から19日まで開催され、国内女子バスケット界では、年間の2大タイトルの一つである皇后杯の最終ラウンドが開催されます。

本稿執筆時点で、準々決勝の行方は分かりません。東京五輪で銀メダルを勝ち取った選手を中心に、各対戦カードで素晴らしい試合が展開されているはずです。

さて、前回の記事より女子アジアカップ準決勝「日本vsオーストラリア戦」のスペインピック&ロールの攻防を題材としています。

今回は、第1ピリオドの2分30秒頃のサイドスローインの場面です。攻防の深淵の一部を紹介できるように試みたいと思います。

1.プレーの構図

スペインピック&ロールを巡る攻防~ スペインピック&ロールを巡る攻防~

2.プレーの流れ

サイドスローインからのプレーです。
図のようにダウンスクリーンをし、インサイドの#3馬瓜 ステファニー選手が高い位置でボールを受けます。
その後すぐに、ガードの#32宮崎早織選手がトップの位置に戻り、ボールを受けました。

その後、馬瓜ステファニー選手がボールマンスクリーンに向かいます。
同時に、#81 宮下希保選手は後ろに忍び寄るような格好になり、スペインピック&ロールの形が出来上がりました。

ここでオーストラリア代表チームのディフェンスを見てみましょう。
最初のスクリナーのディフェンスであるX5がボールマンである#32宮崎選手にマークします。
ボールマンにマークをしていたX1は、#3馬瓜ステファニー選手をマークします。
しかし、#81宮下希保選手がトップに出てくる様子を確認し、再び入れ替わります。
#3馬瓜ステファニー選手にはX4が、4にX1がマークをしている状況です。

ここで、#32宮崎選手は1対1を仕掛けます。
しかし、上手くチャンスを作れずにコーナーの#41根本選手にパスをします。
X3の選手も、十分に間に合う距離のクローズアウトです。
ここで、ドリブルから巧みにステップし、横方向に移動。
自らノーマークを作り、見事に3Pを成功させました。

3.まとめ

前回の記事でも言及したとおり、大会も終盤になると各チームの日本対策も明確になってきます。
意思疎通のミスによるノーマークを作るのは難しくなってきました。
本プレーでも明確にマークマンの受け渡し等が対策されています。

それでも、スピードのミスマッチがあることには間違いありません。
宮崎選手が、相手のX5を抜き去ることが出来れば、得点に繋がる可能性は大きいでしょう。
シンプルですが、1対1の局面を打開する能力が求められます。

また、この場面#41根本選手のプレーが見事でした。
チームとしては、完全にオープンの状況で3Pシューターにチャンスを作ることを意図してプレーをデザインしているはずです。
しかし今回のように、相手の対応能力やディフェンス戦術の遂行能力が高ければ、チャンスの質は下がります。
しかし、わずかなクローズアウトを見逃さず、ドリブルから横方向にステップをして且つクイックに3Pシュートを見事に決めました。
今回のように、チームとして意図したプレーが出来ない場合でも、このようなスキルがあれば得点を伸ばすことが可能だとわかる素晴らしい事例だといえるでしょう。

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この記事を書いた人片岡秀一片岡 秀一
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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