【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 トレーニングレポート No.100「バーベルの基本回数をどう決めるか(下)」
スキルアップ トレーニング フィジカル(身体) 指導法 梅原 淳 練習法
こんにちは、梅原淳です。
レポート前号で、ウエイト・トレーニングで有効な「10回制オーバーロード」という方法について解説しました。
主にバーベルを使うことを前提として書きましたが、もちろん自重であってもウエイト・トレーニングつまり體へ負荷を掛けて筋肉や関節を強化する目的ならば、この10回制は効果的です。
ただし10回という回数が適切かどうかは負荷の大きさ、バーベルで言えば重さによります。15回できる重りで10回をおこなっても、それはたやすくできてしまう負荷ですので適切ではありません。
目安やノルマとして一定の数値をつくるのに「10回」と定めたまでですので、あとはその10回が本当にオーバーロード(過負荷)をもたらすように、その重量を決めなくてはいけません。
ただしそれを計算することは面倒ですから、クリア毎に2.5kgずつ上げていけば必然的に10回にベストな重量にいずれ辿り着きます。ようは計算する必要がないという利点も、このトレーニング方法にはあります。
ちゃんと予め問題点がカバーされているわけですね、高校生くらいでも取り入れやすい方法と言えます。
MAXを測ることは無意味
私が全国の学校を訪問すると、よくトレーニング場の壁に重量の設定方法などが一覧表になって貼られています。
また、コーチからトレーニングをはじめるにあたって「MAXを測定したいんだけど」と連絡をもらうこともあります。
どうやって決めたら良いかという相談が主で、計算方法はネットで誰でも調べることができますから、もし計測したいなら使いやすいものを提供してあげます。
ただ、初心者が最大値を計測することは少なからず危険が伴うこと、チームの全員がそれを測るための時間的な手間、その他の多くの作業も含めれば、それを代償としてまで行うことではありません。
それほどの精確さを求めて計測したとしても、大体で測った人とその後の取り組みで優位な差にはならないでしょう。
取り組むなかで時間を掛けてどれくらい伸びていくかが唯一つ肝心なことですから、最初の計測、厳密な数値の算出は、正直さほど価値のあることではないんですね。
それなので、相談のされ方によっては事実をまっすぐに伝えて、その上で決めてもらうことを勧めています。
精確な数値を出す利点がないから勧めない
たとえば前回教えた「10回制オーバーロード」を取り入れて、重量の設定が分からないから軽めの重さからスタートしたとします。それで10回を3セットは当然、簡単にできてしまいますよね。
それでも次回にはプラス2.5kgにして、もしまた余裕があってもさらに次で2.5kgと徐々に増やしていくことになります。そうしたらいずれ10回がギリギリの重さに辿り着きます。そこから本当のオーバーロードです。
計算しなくても、取り組んでいくことで必然的に正しい数値が分かるのがこのトレーニングの良いところです。
辿り着くまでの無駄な数回がある、と考える人もいると思います。でも取り組みながら「ちょっと軽いな」と思えば途中で重りを増やせば調整できるのだし、そもそも大雑把とは言えあまりに軽すぎる重さになることなどないでしょう。
はじめからある程度は適切な数値に設定できるはずですから、たとえジャストではなくてもトレーニング効果はちゃんと出ますので、計算をしないでおこなった数回のトレーニングも決して無駄にはなりません。
筋肉へは良い刺激がちゃんと入っていますから、気にすることはありません。
その意味から、ますます計算をする利点が見当たらないので、私はMAXの計測というものを一切使わないし、周囲にもアドバイスとして勧めていません。
本当に重要な原則さえ押さえればあとはルーズで良し
前号のトレーニングテクニックをもう一度おさらいしますが、効果をもたらす要素は10回という決めた目標をクリアすることです。それを複数セット行います。
そしてクリアできたら随時重量を増やしていくことで、オーバーロードを掛けることができて伸び続けます。
そのシンプルな原則が守られているならば、あとの部分は多少ルーズというか大体の設定でもトレーニングの成果は確実に上がります。回数も10回じゃなくて12回とかでも構いません。
つまり最初の重量の設定も、そのひとつだということです。
ということで、バーベルを使用したフリー・ウエイトを行うならこの方法を用いることで、ばっちりトレーニングの成果を出すことができます。
妥協せず、デタラメにやらず、格好つけず、もっとも安定的で効果的な10回制オーバーロードで体力を伸ばしてください。
あなたがステップアップの時期になったら、また次を書いてみようと思います。
それでは今日はここまで。これからも全力で応援しています!
(了)
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