【梅原トレーナーのからだづくり哲学】引退した先輩からの宝物(上)
先日ある高校チームの選手たちに、このような話をしました。
「君たちは先輩たちからどんな宝を引き継いだのかな?一緒に練習してきて、この間の大会を以て3年生が引退して新チームとなったけど、先輩たちが残していってくれたものはなんだろう?」
私がいつも思うのは、チームづくりとは初代から末代までそこに所属した全員による合作であるということです。
そうである事実と、そこに気づかないためにチャンスや宝を捨ててしまっている現実があります。
▼学び得たものは全体に広がる
積み上げた知識および経験は、その人だけの力になるのではなく、みんなで共有できる全体的な影響力をじつは持っています。
人類はそうやって文明・文化を育ててきました。培った知恵がその人だけのものだったら、どうして私たちはこんなにも発展した世界を生み出すことができたでしょうか。
もっと簡単に言いましょう。
このチームでは3学年で日々練習を重ねてきました。今年3月までならば3,2年生の2学年で活動してきました。ひとつの場所で一緒に努力してきて、新チームの2,1年生は引退した3年生のことをよく知っているわけです。
その先輩から影響を受けたこと、学んだこと、良くも悪くも糧になることがたくさんあるはずです。いえ必ずあります。
代替わりと言っても、3年生だけがいなくなったのであり、二つの学年はそのまま残っています。
だからチームの流れというものは、末代まで途切れることがありません。学校の部活動ですからほぼ末代が来ることはないでしょう。学校や部自体が存続しなくなったときだけです。
この全体に及ぼす影響というものは、とてつもなく大きな大きなサポートになるのです。
▼流れを潰している
その上で現実はどうでしょうか。あなたは先輩からの流れ、それは一学年上の先輩だけのことではなく、二つ上も五つ上も、ずっと昔の十代上のOB・OGの育みも全部が繋がっています。
それを今の現役チームは大いなる力にできているでしょうか。
残念ながら、こういった力を活かせている選手・チームは少ないと思います。せっかく耕してきた畑を、また一度潰してゼロからまた開墾しているというのが、現実だと思います。
「だって毎年人が入れ替わるんだから、その人たちの腕次第でしょう」
みんなそう思っています。でも実際は違います。現に強豪と言われるようになるチームは、有望選手を勧誘するだけじゃなく勝利の方程式をちゃんと持っているのです。
それは各々が独自のやり方で、自分たちは○○をしっかりやる、必ず○○の力をつける、鬼の○○鉄則、そういった成功法則を長年掛けて作り上げています。
今いる現役選手だけのルールや趣向ではありません。お互いに合ったこともない先輩から後輩まで、チームの名の下にみんなで一つのカラーを手掛けています。
大事にして宝物を代々受け継ぎ、守り、さらに少しずつ膨らませてより強くなっているわけですね。
それが強豪たる所以です。
そういった人たちはどの世界でもごく一部であり、ほとんどの人たちは今の自分だけで物事を考えています。
本当は先輩たちが多くを耕してくれているのに、そこに鍬を入れてさらに進めることをせず、まったく何もない荒れ地に自分たちだけでゼロから耕そうとします。
それだから引退する頃にも、作業はほとんど進んでいません。さほど強化できずに程々で最後の日が来てしまいます。
▼自分だけでは育めない
成長のためには当然本人の努力が必要です。他人に自分の結果をつくってもらおうなんて他力本願は論外です。
でも自分の力だけでは、どんなに手を尽くしても大きく成長はできません。
私たちが学んで力にするのは、先人の過去の経験と実績だからです。
どんなことも真っ白な無から何かを生んでいるのではなく、すでに重ねられてきた経験と知識から発展させて進化したもの新たなものが生まれます。
自分が成長できるのは、そういった自分以外の人が育ててきたものを活用できるからこそ。それを皆で互いに行っているわけです。実際は誰かの残したものから学んであなたは成長できているということです。
▼先輩からもらったもの
話の最初にもどってみましょう。
私から「先輩からもらった宝物は?」と聞かれ、新チームの選手たちは予想通り少し困った顔をしていました。話自体がピンときていないような顔の人もいました。
ではコーチの私の目から見て、このチームの宝物は一体どんなことでしょうか。
もう少し筆を進めたいと思います。
(以下、次号へ)
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