【梅原トレーナーのからだづくり哲学】ある進学校の自立への歩み その2
スキルアップ チーム作り メンタル(心) 指導法 梅原 淳 練習法 育成法
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日々の練習は探究でありたい。部活動の目的は競技力の向上、競技成績の向上であるから、そうなるためにするべきは腕を磨くことであり、私たちは自ら技術の探究をしているのである。
本当はそうであるはずがいつの間にか数をこなすだけの行為、終わらせるための行為になっていく。本来の目的が失われ、ノルマとなった練習はもはや時間の浪費でしかない。
自分で考えることをしなくなり、自分で腕を磨くことをしなくなり、そうしてただコーチに引っ張り上げられるだけの作られた選手やチームに魅力などあるのか。
▼進学校の思考力でも
数年前、私はあるチームに大きな違和感を抱いていた。関東の学校とだけ言っておこう。男子バスケットボール部の体力づくりを任せられていて、年に6回の定期指導を行っている。
県内でも指折りの進学校で、かつ部活動も活発だ。学校全般に活気のある人気校であるから、優れた人材が育つ良い環境と言えよう。実際に個々のポテンシャルは非常に高いものがある。
しかしだ。
歳の小さい頃からよく勉強してきた子たちなので、頑張ることができるし真面目だし忍耐力も人一倍あるが、そのエネルギーを注ぐ場所がいささかズレているように思えた。
頭の良い子は話せばわかるし素直なので、こちらから言ったことにはよく従う。熱心に取り組むことやスポーツマンらしいエネルギッシュさについて説くと、真っ直ぐにそれを実行する。
しかし彼らが熱を入れているものは、大きな挨拶や返事、気合いの入った掛け声、ダッシュで集まること、隊列を揃えることといったパフォーマンス的な内容が目立っていた。
▼そこじゃない
声が張れるのは良いことだ。キレのある力強い返事はスポーツマンらしいし、こちらも気持ちが良い。男らしくも見える。コート上をバランス良く並んで練習するのも大切だと思う。
私も「行動は迅速に」「皆でまとまって」とたしかにいつも言っている。ただし良い練習とはそれを指すのではない。
勿論そういうこともビシッとしつつ、真に必要なのは練習の中身を深めていくことにある。運動の技量を上げるために體の使い方を探り、ひたすら鍛練を繰り返す行為には、感じ取る力、考える力、工夫する力、耐える力が発揮されている。
これは正直に言って誰にでもできることではない。幼い頃からの訓練と習慣によるものであり、長い時間を要して身に備えた貴重な能力だ。
まさにその力を持っているというのに、彼らはまったく的外れなところに熱を入れているのだ。
▼やっている気になる
元気よく声が出たり、走って集合したり、身なりが整っていると締まりのあるチームに見える。だからそれをしていると自分の姿が良く見え、誇らしく感じるかもしれない。
実際は格好だけであって中身は何も生み出していないのだが、何か良い方向へ行っている気がしてしまう。
チーム全体の雰囲気は良くなるだろう。高揚感とか爽快感も得られて、精神的にプラスの面はある。
ただし本来の目的である競技力の成長が得られていない。無いのに“やってる感”に浸っているものだから、変われていないことを自覚できずにいる。探究に必要な「進化のため常に現状に疑問を持つ」という思考は完全に止まっていた。
このままではせっかくの能力が無駄になってしまうし、競技成績が伸びないどころかその後の人生で苦しむことになるかもしれない。
わずかでも私の受け持つ時間でしてあげられることを考えてみたい。
(以下、次号)
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