【梅原トレーナーのからだづくり哲学】外遊びと運動能力2

スキルアップ トレーニング 梅原 淳 練習法 育成法


子どもが外で遊ばない。前回の話はそこから始まった。さらに深めていこう。

自ら行う運動経験が圧倒的に少なく、また日常での身体活動もおそらく少ないために、かけがえのない幼い頃の身体的成長期に體を動かす力を身につけることができないまま歳を重ねてしまう。

私はトレーニングコーチの端くれとして、高校生や中学生のあまりに未熟な運動能力を前に日々苦戦している。

現実をありのままに申し上げれば、これほどの歳になれば多くの部分ではすでに手遅れである。

體の使い方を覚える最盛期に身につけたもの、無意識に行われる習得された動きを変えていくことは、いかなる理論やノウハウがあっても至難の業だ。

良くも悪くも體に馴染んだ「習慣」である。高校に入ってからではもう遅い。

中学でもかなり不利と言っていい。

身体トレーニングを施す際、体力的な前提があまりに低く苦慮されているトレーナーやコーチは多いと思う。

それをなんとかどうにかして伸ばそうと、様々な策を講じてトライされていると思うが、よほどの根気が必要である。

ではどうするか。

私たちはこの危機的な現状から何をしていくことができるのかを考えてみよう。

▼幼少期のスポーツ教室

子どもが外で遊ぶことが少なくなった事と偶然重なるように、昨今NPO法人などによる運動教室・スポーツ教室が増えてきた。

子どもの体力低下が以前から問題視されてきた事が、これらの背景として大きく関わっている。

もし文部科学省が実施する体力テストの結果が伸びていたとしたら、このような活動は広がっただろうか。

今は就学前の子らも運動教室に通う。その年代のクラスも用意されている。

もちろん外で遊び回る場所がないことも、これらが活用される大きな理由の一つだろう。

ただ、前回のレポート1で書いたように、習うものというのは度が過ぎると「させる」になり、子ども自身の欲求ではなくなる。

自分で興味を持って熱中して行うからこそ運動の能力は磨かれていくのであり、自分でしたいようにするのが「遊び」の根幹であるから、本当はうまくいく方法を教えてはいけない。

私は小学生のスポーツチーム(スポ少などと言われる)についても、あまり早い時期から入るべきではないと考える。

これはクラブチームでも教室でも同様で、まず「スポーツ」というもの自体が運動要素に偏りがあるためだ。

技能を発達させるならば、運動の種類を限定せずに跳んだり走ったり投げたり転がったり掴まったり登ったりと多くのことをすればよく、そうなると固定された作業になる専門競技をまだ運動が未熟な年代で始めてしまうことはマイナスが大きい。

▼遊べる場所をつくる

もし簡単に物事が解決するというのならば、まず外で遊ぶようになれば問題は片付く。

しかし先ほど触れたように、都心部では場所がほとんどない。

幼稚園や保育園にも、思い切り走り回れるグラウンドがあれば良いが、実際は狭いスペースしかない園が多い。

それならば今増えている運動教室を、レッスンのかたちではなく遊びの場を開放することを業務として行うのはどうだろうか。

習い事形式の「運動の仕方を教える、覚えさせる」という業務はやめて、遊び場と遊具の提供をし、事故や人的トラブルに対処する監視員を配置する。

公園遊びで親が見守っているような状況と近い。

習い事となるとどうしても教える側は「上手にしなければ」となるし、教わる方も「させられている」とか「要求(期待)に応えなくては」となってしまう。

指標がコンクールや大会などの「結果」になるので、やはりそのための養成所にしかならない。

勝ち方や合格点の取り方を伝授する塾と化していることが、現代のクラブチームやスポーツ教室に孕む大きな問題のひとつである。

▼クラブチームに何歳から入るか

もう一つだけ提示したい。

もしあなたの子がまだ10歳に満たないのであれば、その歳を迎えられてから習い事やチームに所属することを検討してほしいと思う。

10という数字に科学的根拠があるわけではなくて、9歳でも11歳でもそれはかまわない。

人により頭や體の成長の速度も違うので、本人を見て判断してもらいたい。

言いたいのは誰かが答えを教えること、成績・結果を求めること、スポーツ競技をすること、これらをまだ運動経験の少ない幼い子にさせることは健全ではないということだ。

習い事やクラブに入ると、目指すものが明確で取り組みが狭く限定される。

他人から「これを覚えろ」というふうに偏って決められてしまうし、最優先が結果を出すための対策になる。

しかもそれが子ども自身の満足ではなく、大人の指標となることが多い。

コーチや先生の満足、親の満足で良否を付けられる。

それは子どもの意欲や探究心や熱中など心の力、また創造や発見など活動する力の芽生えを潰してしまう残酷な環境であることを考えてもらいたい。

個人を尊重し、成長を見守ってくれる場所もきっとあると思う。

それでも大人が答えを教えて上達させてくれるという状況は変わらないので、自分で物事を掴み取る力は育たない。

現代は良くも悪くもサービスが手厚い。

こういった習い事とクラブチームも上達させよう成績を出させようと必死に教えてくれる。

子どもは唯々駆り立てられることになるのであるが。

これから私たちにできることとすれば、子どもの自由度を広げるような環境を探すことだろう。

自分で體を動かし、自分で運動課題を作って挑戦し、見て真似て工夫してと、自ら勉強して自己達成や自己実現を行うこと。

子どもが自由に遊ぶ環境にもお金が掛かる時代になりつつあるが、それが未来の「遊び場」の姿なのかもしれない。

日本人の進む道なら受け入れるしかない。

では次号で、最後に家庭の問題を考えていきたいと思う。

この記事を書いた人梅原淳梅原 淳
運動技能を向上させる専門家として、またバスケットボールでのファンダメンタル・スキルを教えるコーチとして全国各地に出向いています。またその活動から得た日々の思考や発見を、YouTubeなどSNSを活用して情報配信しています。このコーナーで扱う内容は、それらSNSでは記さない一歩踏み込んだ情報として、トレーニング実践レポートをはじめ自分の育て方、大人の再教育、子育て、健康づくり、みなぎる食事など、あらゆるジャンルをテーマにお届けします。

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