「枠を超えないと能力は上がらない」トレーニングレポート No.130【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
こんにちは、梅原淳です。
今回のタイトルは「枠を超えないと能力は上がらない」と書きました。
タイトルだけである程度の意味を伝えるために、違う言い方に直せば「能力が伸びないのは枠に閉じ込められているから」といった感じになります。
前回のレポートにて、走るときの腕の振り幅を大きくすることをお伝えしました。振り幅が大きくなることは、狭められている力の発揮や伝達を解放することを意味します。
私は日頃、選手たちには「からだの自由度を上げる」という言い方をしています。
運動能力の発達、上達には様々な要因があって、ただそれは整理すると類似したもの、重なっている側面が多分に存在します。
ですから言葉は違えども、意味するところは同じである場合が少なくありません。それをどう言葉で表現するか、どのような方法からアプローチするかの違いであって、狙いは一緒であることが本当は多いのです。
今申し上げた「からだの自由度を上げる」「本来の力を解放する」といった話も、じつは抽象的なものではなく脳から神経を通って伝達される情報をどうアップロードしていくか、つまりより高い技量の習得を意味します。
それをただ学問的にはあまり語られることのない表現の仕方で、膠着した現状を突破する斬新さを出そうという試みです。
さて前置きが長くなりましたが、私たちは運動をするとき、からだに身についた型を再現するかたちで動作しています。
それはうまくできない段階からしっかり体得するまでは重要ですが、さらに次のレベルへ伸ばそうというときには行く手を阻む壁となります。
その体得した型が、一段高いパフォーマンスでは劣るものだからです。
ここからが重要で今回の核心になりますが、じつは私たちが自覚している以上にパフォーマンスの域は「体得されたそれに固定されている」ということです。
ちょっとぼやけて言うと、頑張っているのに上達しないとか、いつもより大きく速くやろうと意識的に動作しているがやっぱり記録は変わらず、といった事が経験的にあると思います。
まさにその原因が「能力が伸びないのは枠に閉じ込められているから」であり、言い回しを変えるとタイトルの「枠を超えないと能力は上がらない」となるわけです。
この枠がかなりのくせ者で、ものすごい洗脳力で私たちを今の場所に固定します。
腕を大きく振る、脚を高く上げる、大きく体を使う、そうやっているつもりでも実際はすでにある枠の中でのこと。つまり自分の身についているパフォーマンス能力、技量の範囲内に過ぎないのです。
たとえばこんな例があります。スクワットをすると足幅が狭くなっている選手が多くて、私は「ちょっと狭いからもっと幅を広げよう」とアドバイスします。
それで選手は足幅を変えるのですが、その広げ方がなんとも面白くて、わずか数センチ程度、もうほんの少しだけしか足を動かしません。これはよくある光景で、ほとんど変化のない気持ち程度の広げ方なのです。
私たちの意識は、自分の中では「変えた」と思っていても実際はいつもと一緒でしかないくらいのわずかなものである場合が、日常的に少なくありません。
ですから本当の枠は自覚しているよりも大きくて、また己の行動もじつは小さいとなりますから、この固定を破壊するには脳を裏切る大胆な行為が必要になります。
その点では普段あまり良い評価をされない「トリッキー」さは、膠着した状態を突破する力に長けた能力かもしれません。
前回のレポートで公開した腕振りのトレーニングも、脳に固定された定型を崩すための一風変わったアプローチであるのです。
それでは最後に、脳を裏切るトレーニングの場面を編集して短く動画を作りましたのでご覧ください。
あなたのスポーツライフを心から応援しています☆
(了)
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