【梅原トレーナーのからだづくり哲学】トレーニングレポート No.2

スキルアップ 梅原 淳 練習法


先日、群馬県桐生市で高校女子バスケットボール部の定期トレーニングを行いました。3年生が全員引退したので、2,1年生を合わせて10数名の新チームがスタートを切りました。その第1回目のトレーニングでした。

練習前、監督さんが「ようやく、少しずつだがチームのかたちが出来てきた」という主旨のことを言われていたとおり、代替わりの不安要素は欠片もなく、選手たちは放課後のいつもより早い時間に集まって、熱心に體を動かしていました。

私は体育館に入って、その雰囲気というか空気でチームのモチベーションがなんとなく分かります。長く現場にいる人間は、経験でそういう感覚を持っているものです。

今年の新チームは意識がすでに「自分」になっています。3年生のチームという影はありません。

私はそんな彼女たちだから「トレーニングの一つ一つを正しく理解して、確実に成果をあげていこう」ということをこの新チーム第1回目トレーニングで伝えました。

3年生がいた時期が悪かったわけではありません。しかし取り組んでいるトレーニングを“ものにする”には、もう一段二段掘り下げていく必要があります。

トレーニングの基本テーマや目標は変わらないのでこれまでと同様におこなっていきますが、その鍛練を確実に自分の力とするには、やはりまだ甘さがあります。

アクションを起こすタイミングはここしかありません。代替わりのこの時期だけです。今回だからこそ言う価値がありました。

実際に彼女たちがどのような體づくりをおこなっているのか。このレポートで少し紹介したいと思います。

このチームでは體を鍛える道具は一切ありません。鉄アレイやバーベルなどトレーニング器具の類いはまったく使いません。すべて自重での取り組みとなりますので、フットワーク系のトレーニングを主体にしています。

これまで取り組んできたのは、走る力を育てることです。ただ走るのではなくて、前後左右や平面から縦といった「方向を切り返す脚の力」をつけようとしています。

それには動と静、つまり走る力と止まる力の二つを鍛えることが必要になります。これが進行方向を素早く展開する“キレ”を生みます。

とくに「止まる力」は重要で、瞬間的に體を踏ん張って動作を止める力強さを身につけなくてはいけません。

その獲得のためにスクワットをし、柔軟トレーニングをしています。

なぜゆえこのトレーニングをしているのかという「目的」を、正しく理解していることが大切です。子どもたちが自分のしているトレーニングに「意味づけ」をすることが、新チーム最初のミッションです。

まずいつもの鍛練として、フリースローラインのエルボー間くらいの距離を往復ダッシュするというものがあります。アイライン(I-LINE)と呼んでいますが、短い距離を膨らまず直線的に何度も行ったり来たりします。

以前フェイスブックでこのレポートの前身となる「プラクティスレポート」を公開していたときにも、この練習について書きました。

練習名のとおり、ラインの上を細く真っ直ぐに揺らぐことなく走ることがトレーニング課題です。

加えて「方向転換」という課題があります。一番難しい真逆への180度ターンです。それから、短い距離でおこなうのもまた難しい課題です。

このように運動が困難になる条件が2つ3つと重なっていて、これをどうやって上達させるかを自分で考え見つけていきます。

私が教えるポイントは「切り返しの動作」です。前述した止まる力と直結していることです。足の着き方、そのタイミング、踏ん張るときの体勢といった體の使い方を磨いていきます。

2年生は上手にターンできていて、1年生は当然バタバタとしています。ここの技術が未熟であると、切り返しが遅くなり、次の動作が崩れ、狙ったラインを走ることができません。単純な練習ですが、これが「キレのある動作」の基本です。

ここから動作を変化させて、次に横の動きを練習しました。サイド・キックとクロス・ステップでの切り返しです。

縦ができれば横も難しくありません。ポイントは同じで、切り返すときの踏ん張り方を知っているかどうかだけです。

それはスクワットを通して感覚を探ることができます。脚の筋力を伸ばすためにスクワットをすることは当たり前ですが、このチームはトレーニング器具を持っていません。

であればスクワットの目的は「筋力」以上に、踏ん張り方の習得になります。それを改めて選手たちと確認しました。

正しい構えというのは重要です。それは見た目のことではなく、どのような力の入れ方をしているかの運動感覚です。私は股関節の踏ん張りを重視させています。

そけい部を絞るように踏ん張りを利かせる感覚を覚えていきますが、トレーニングのすべてはそこに繋がっていきます。

一つ一つ違うトレーニングに見えても、上手な體の使い方を覚える訓練であることには変わりないので、つまりはすべて重なっていて、また繋がっています。

それをただこなすだけでは、何も得るものはありません。何事も「目的」と「意味づけ」が肝心ですので、おこなっている自分が何を掴むためにそれをしているのかを理解できていることが必要です。そこに研究が生まれます。

このことは選手たちにも話しました。終わらせることが目的の練習は止めようと。皿洗いや荷物運びのように、トレーニングを片付けるものとしている人は、何も得られません。

考えること感じることが重要です。

最後には、股関節の可動域を広げるトレーニングを行いました。これは真っ先におこなっている鍛練です。彼女たちの先輩も皆、一番時間を掛けてこれを取り組んできました。

可動域トレーニングをする理由が、はじめにおこなった切り返しのアイライン練習と繋がることがお解りでしょうか。意図すること、掴もうとしているものは同じなのです。

すべてが実は一つになっています。だからこそ練習最初に「一つずつを正しく理解しよう」「確実に成果をあげよう」と言ったのです。必要なのはメニューを消化することではなく、目的を達することです。

自分たちがトレーニングの時間にいったい何をしようとしているのか、何を獲得するためのトレーニングなのかを、改めて勉強した新チーム第1回となりました。とても意義のある一日だったと思います。

(了)

この記事を書いた人:梅原淳梅原 淳
運動技能を向上させる専門家として、またバスケットボールでのファンダメンタル・スキルを教えるコーチとして全国各地に出向いています。またその活動から得た日々の思考や発見を、YouTubeなどSNSを活用して情報配信しています。このコーナーで扱う内容は、それらSNSでは記さない一歩踏み込んだ情報として、トレーニング実践レポートをはじめ自分の育て方、大人の再教育、子育て、健康づくり、みなぎる食事など、あらゆるジャンルをテーマにお届けします。