食べるトレーニングを考えよう!「炭水化物が悪者になっている傾向をどう考えるか(前編)」
こんにちは、梅原淳です。
今日は久しぶりに「食トレ」をお届けしようと思います。
ここのレポート執筆を引き受けた当初は、担当者さんから「梅原さんのSNSでの食事の投稿も面白いので、それもぜひ記事にしてください」と言われていましたので、本当はもっと書くべきテーマだと思っていますが、いまのところそう多くないのでこれから少し増やしていくことも考えています。
ただ私が書く場合の「食」の記事は、いわゆるアスリート専門の献立や筋肉づくり用の栄養の摂り方みたいなものには、おそらくなりません。
断片的なそれらの書き方は、素直に申し上げて現実的なものとして活きた情報にはならないことがほとんどだからです。
基本的に同じ人間同士、少し運動をしているからと言って、そうではない人とまるで機能が違うかのような食の話は、厳しいですが誇張と言わざるを得ません。
キャッチーをつくりたい側の気持ちも理解していますが、それが横行すると誤った認識が広まっていきます。
いまではフィットネス産業、健康産業も大きくなり、食事や栄養に関する話題は人気コンテンツです。そこへきてスポーツ活動をする子どもたちのからだづくりでも「食」はリンクしますから、スポーツトレーナーはじめ専門家である方々の発信も多くなっています。
世界の研究データや論文から学び、それらを引用してスポーツ活動に役立てようとすることも増えており、もちろんそれ自体は有意義でありつつ極論もあとを絶ちません。
たとえデータや実験結果ではあっても、それで物事の選択がマルバツのどちらかに振り分けられてしまうことはこの世にとって不自然なことであり、発展を望む上で賢明とは到底言えないものです。
どうも食をテーマとする分野では、偏ったものの見方が広まりやすくなります。
それがあるのであえて私のレポートもこの分野は少し数を控えめにして、ときおり話題に触れる程度に留めているのです。
炭水化物が悪いとする雰囲気がつくられる
昨今、血糖値への負担が指摘されるようになり、健康への影響や、運動においてもマイナス作用の懸念があると言われています。
よくお調べになっている読者の皆さまは、各競技の第一線で活躍するアスリートたちが炭水化物を控えてタンパク質中心の食事をしているのを知っているはずです。
彼らの行為は確実に世間へ参考材料として浸透し、ジュニア選手は憧れのスター選手がおこなっている栄養管理を素直に模倣するでしょう。
大人でも健康づくりのために、炭水化物を摂取しない生活を取り入れています。有名なプロ選手たちの行動は、それくらい無条件に彼らの成功と結びついて「あの人がやっていることだから正しい」となりやすいのです。
しかし現実を明確に申し上げれば、炭水化物を減らす食事はトップアスリートには適切でも、あなたに適切ではない場合があります。
ジュニアとプロの運動量の違い
肉体的にも運動的にも成長期である十代の子どもと、たとえ競技パフォーマンスで一流であっても職業としてアスリートをしている完成された成人では、体力の使い方が大きく異なります。
シンプルな面として米や麦をはじめとした炭水化物は、身体の動力源です。車で言うところのガソリンですね。炭水化物だけがそうであるとは言えませんが、その主たる成分が多く含まれていることは誰しも承知のとおりです。
幼い子どもたちは、日々を目一杯に遊んで過ごします。頭もたくさん使います。大人よりもあきらかにエネルギーが多く必要で、その力になるのが米、またパンや麺類の材料である麦です。
ジッとしていることのない小学生や園児らは絶えず体と脳を動かしているため、消化の早い炭水化物から得られるエネルギーを必要としています。
それに見合った食事は、一流成人アスリートのローカーボ食では決してなく、穀物を中心とした一般的な家庭の食べ方で問題ありません。
トップアスリートの持久的な総エネルギー消費量/日は、起きている間じゅうずっと動き回っている子どもとは違い、また同じ成人でもたとえば農作業や工事現場で力仕事をしているような人とも違います。
長短はあっても競技時間というのは限られており、その中でベストなプレイをすることが目的なので、より完成された選手であるほどエネルギーを蓄える必要性は限定されることになります。
いろんな話が渋滞している
炭水化物を摂らないアスリートは、それが我が身にとって必要であるからそうしているので、摂ることが必要な人も当然いるわけです。
どんなことも「適切」が真理であるのに、冒頭に申し上げたネットや書籍などの気安い文言による「話題性」を利用したい欲によって、誤った認識が世間に広まってしまうのです。
きちんと交通整理が必要ですので、次号へ続けたいと思います。
(つづく)
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