【続】体づくりの成果が見られない理由はこれかもしれない(後編)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】

スキルアップ トレーニング フィジカル(身体) 梅原 淳

前回、トレーニング負荷のひとつである「重量」について、ひとつの問題提起とも言える常識への反論を記しました。

【続】体づくりの成果が見られない理由はこれかもしれない(前編)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】

いまあなたが取り入れている体づくりの重さ(=負荷)は、あなたの体力を伸ばす上で適確でしょうか。

体づくりを行うときに、セオリーならば前回に記した方法があります。

最大筋力の7割ほどの負荷を掛けて限界まで反復を繰り返すことで、筋肥大と筋力向上と筋持久力向上の三つがまんべんなく起こり、それは要するに体づくりのベースとして良いトレーニング方法であることを示します。

しかしそれが筋力トレーニングの基礎基本だとしても、実際に選手の能力を伸ばすことに効果的な方法であるとは、一概に言えません。

適した方法を見つける

別の方法からはじめたとして、理論の基本に当てはまっていないからうまくいかないとも限らず、事実としてまったく違う方法を取ってもしっかりと筋力が伸び、体が丈夫になり、プレイスキルを上達させられた例はいくつもあります。

このことは基礎部分のみならず、高重量を扱ったトレーニングでも同じく理論と実践が重ならないことがあり、反対の低重量トレーニングでも起こります。

またどのくらいの日数的ペースで行うのが良いか、つまり毎日トレーニングしたり三日おきにしたり、そういうことについても研究データを元に体系化されたとおりではないことがあります。

トレーニングの理論が適確かどうかよりも、あなたの今に適確かどうかをしっかり見定める必要があります。

大半の十代女子選手のベター

たとえば女子選手の場合に、前述の「10回×3セット」の基本でうまく伸びないこともあります。

60〜90分の時間を使って、全身のトレーニングを6〜8種目、すべて10回×3セットずつ行うとします。まさに導入時の定番的なボリュームです。

それを一週間に2〜3回行うのが、筋ダメージ(いわゆる筋肉痛)から超回復する原理に準じた間隔です。

昔からこのようなものが、固定されたトレーニング法の基礎とされてきました。

セット間の休息時間などにもそれがあり、不完全回復のうちに次のトレーニングを行うことが良いとされて、10回程度のトレーニングならば90秒程度、もっと重くなり回数の少ないトレーニングでは長く休むことを教えられます。

しかし私がいまでも現場に出続けているその経験から申せば、たとえば日本の十代の女子選手は一般的なルーティーンにはめ込むよりも、持続的かつ習慣的な要素に期待するほうが体づくりは伸びていくようです。

最初の持続的というのは、重量を気にするよりも何度も反復することに力を入れて、できるだけ高レップつまり50回100回とたくさん行うことです。

また習慣的というのは、その何十回と繰り返すトレーニングを必ず毎日かそれに近い日数でおこなうことで、安定した体力というものを携えていきます。

これを運動生理学の原則で言うならば、筋肉を育てるだけの負荷が足らず、また筋ダメージからの回復の構造も外していて、この方法では「全然ダメ」「デタラメ」となります。

しかし実際は、日本の十代女性アスリートの大半において、体づくりを成功させるならば導入時にはこの方法が手堅く伸びるのです。

男女それぞれの身体的特徴と個々の運動レベル

これは「体を鍛えるならベースとなる理論的方法はこうだ」を現場にはめ込もうとして狙いどおりとなる場合と、則ったのにそのとおりいかない場合があり、実際には後者が多いという現場からの実感をお伝えしています。

原理原則どおりにいかない理由はひとつではないはずで、簡単にこれだと示すことは難しいですが、とにかく「多方面から影響がある」ことは知ることができます。

私の経験で申し上げるとすれば、

  1. 運動技量が未発達であること
  2. 全身持久力が低いこと
  3. 動きが小さく全身でダイナミックに運動できないこと

これらがどの地域どのジュニア年代の女子選手にも見られ、その段階の選手が筋力トレーニングを導入するならば前述の方法が着実に伸びます。

男子についても特徴があり、地味で長くてつまらないトレーニングをするよりも、うちなるパワーを開放的に外へ発散させることを上手にデザインしてあげると体は反応しやすいでしょう。

具体的に申し上げるならば、ウエイト・トレーニング種目は地味な一定の動作の反復が多いので、動作を少し複雑にしてあげたり重りの持ち方を工夫したりして、自由な手足の動き、バランスの確保といった面白さを入れます。

もしくは自重でのトレーニングにして、よくあるフットワークの動作に強い負荷が掛けるなど、全身がくたびれるトレーニングを採用すると、広い運動レベルの選手たちに成果が見られます。

男子の場合は、休憩を短く、種目を多く、動作を速くするなどして、短い時間で強い負荷を掛ける方法が導入時には伸びやすいのです。

バカみたいに追い込んで長々とトレーニングしたり、重りを付けまくってむりやり高重量にすることはあなたの体に合いません。ただ辛くすれば良いものではないことを正しく理解しましょう。

セオリーも自分の頭で整理する

今回は2,000字を超えてしまいました。

このへんでまとめたいと思いますが、体力づくり、筋力づくりをしようと思ったときに、セオリーどおりにはいかないことがじつは多いのです。

それを目の当たりにしている人はたくさんいるはずなのですが、正確におこなっているからとしてアレンジしようとしません。ここが勿体ないところです。

あなたが採用している方法はあくまで運動生理学に則ったものであって、あなたの体がそのとおりに反応(筋肉が成長)する場合も、しない場合もあります。

そこは現場で思いきって方法を見直し、本当に効果の出るトレーニング方法、トレーニング負荷の掛け方を見つける必要があります。

ぜひ自分の頭で考えてオリジナルなトレーニング法で成果を上げて下さい。これからも引き続き応援しています。

最後までお読みいただき有難うございました。

(了)

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この記事を書いた人梅原淳梅原 淳
運動技能を向上させる専門家として、またバスケットボールでのファンダメンタル・スキルを教えるコーチとして全国各地に出向いています。またその活動から得た日々の思考や発見を、YouTubeなどSNSを活用して情報配信しています。このコーナーで扱う内容は、それらSNSでは記さない一歩踏み込んだ情報として、トレーニング実践レポートをはじめ自分の育て方、大人の再教育、子育て、健康づくり、みなぎる食事など、あらゆるジャンルをテーマにお届けします。
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