【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 緊急提言!「高校リーグ戦問題」を考える その4
リーグ戦問題は、試合数を増やして機会を均等に与えるという本来の目的が薄れ、唯々試合の準備を進めることだけに目が向いてしまっていることが、自分たちを苦しめている原因である。
いま各地方でつくろうとしているリーグ戦は、もはや前提が崩れてしまっている。JBAは試合数を確保するため、レベルを底上げするために総当たり戦を導入してほしいと言ったのであり、大学もどきのリーグ戦を新しく増やすことは提示していないとしている。
だが私が全国を回って耳にすることは、いま実施を始めた都道府県では、既存の年間日程はそのままで、さらにリーグ戦を追加している。今年は地区割りで小さくリーグ戦をプレオープンし、来年度から県内で編成して実施する計画のところも多い。
▼地方協会の腰の重さ
何度も言うが、現在の年間日程にリーグ戦を別途開催することはかなり難しい。もし行うのならば、全体を作り直すことが必要になる。
私は素直に思ったことを、協会役員になっている現場の先生らに聞いてみた。
「既存の大会を残して新たにリーグ戦を追加するのは現実的に無理があるし、そもそも日本のバスケットボールを前へ進めるためにと言うのならば、なおさらそれは賢明な方法とは言えない。リーグ戦をただ増やすだけではなく、すべての大会について一から見直す必要がありませんか」
若手のコーチのほとんどは、これと同じように考えている。また年齢が上でも、常に思考が未来へ向かっていて柔軟な発想を持っている指導者もまた、全体の改編が必要だと認識している。
しかし、地方協会の幹部たちやご意見番となっている人物が首を縦に振らず、今のものを変えるとか無くすということを嫌っているようだ。
これは超のつく日本的思考である。日本人は変えるのが苦手だ。誰かのつくったものを自分の手で違うものにするということに抵抗があり、またそれによって反対意見や反発をもらうことに弱い。自分がその当事者になってしまうことに恐れを抱いている。
先人たちがつくったものを壊すことは、その方々への礼儀を欠く、悲しませる、と言うのだが、物事は常に改めていかなくては前へ進めない。
ではどうするのかと問うと「なんとかしろ」と、実際は無理だと分かりつつ己を保身して、あとは若手に放り投げるそうだ。そういう性格の人間に限って要職に就いていることも、また日本的と言えよう。
▼他県が参考にした良案
このように地方にはまたJBAとは違った問題がある。なおさらにリーグ戦を現状のまま組み込むことは、自分たちを苦しくさせる負担でしかない。
やはりリーグ戦を導入するには見直しが必要となるのだが、実際にそれで動いていた県があった。私の生活の拠点、埼玉県だ。
全容はお話することができない。このパスワードを必要とするメルマガ読者限定の本レポートにおいても、公開できない情報はある。
しかし今話している内容に見合う程度で、少しだけお伝えしようと思う。
埼玉県では一部の独自大会を廃止して日程の空きをつくり、新たにウィンターカップの予選を兼ねて数ブロックに分けたリーグ戦とし、その勝敗で上位チームが県大会へ進むまたはそのシードを獲得する、という案をつくった。
強化に携わる役員から抵抗に遭い、却下されてしまったようだが、この案は良いと全国の都道府県から「どのような内容か」と問い合わせがあるそうだ。
実際に私も東海や関西へ出張したときに、埼玉案は良いという話が広まっていると聞かされた。
しかし、埼玉ではこの案は通っていない。
▼互いの弱さが招いた問題
問題を整理すると、まず大前提として現在動いているリーグ戦の実態は、JBAの考えるその目的や趣旨とはまったく違うものである。
なぜそうなってしまったのかは、会議に参加していないので分からないが、双方共に、説明不足と理解不足であることは否めない。
さらにJBAははっきりとした構想を立てる前に、見切り発車でリーグ戦だけを実施しようと先走った。
頭にあるイメージや「もしかしたら」という段階の話まで出してしまったために、それを聞いた地方協会の役員らは、決まり事だと受け取った。御上に言われるがままではいけないのだが、そこは責められない。
ただし現場サイドも、自分たちの頭できちんと主体的に考え、保身ではなく皆のために必要なこと有意義であることをつくっていけば、道は少しずつでも見えていくだろう。この件に関して、県内行事の改編は必須だ。
その過程で出た疑問や不満、現実的な難しさなどあれば、JBAに問い合わせるなり意思疎通を図って、議論を深めて具体化させていけば良いだけのことである。
ただ一度、御上に言われただけで、あとはよく理解していないまま目的なく進むことは、あまりに無謀で杜撰(ずさん)過ぎる。
▼決める強さと変えられる強さ
いまリーグ戦にまったく手を付けようとしない、例えば九州ブロックのようなところも、この曖昧さ、不確定さ、ビジョンと構想の欠如に反しての正直な態度ではないだろうか。
どのようなものを何年までにどうおこなって最後何年で完成させると、段取りをトップダウンで決定してしまえば、地方はその通りに動くだけだ。それは前向きだろうと仕方なくだろうと、心の持ちようは一切関係ない。
ものをはっきり言わず、決めず、中途半端に気兼ねして忖度するために、会議で行き違いが起こるのだ。それはJBA側も地方協会側も、互いにだと思う。
言うべきははっきり言う、決めるべきはしっかり決める、従わせるは絶対に従わせる、その上で、いつでも変えていける自由度をつくっておく。
それが今後の日本の課題と理想像だと、私は提言する。
(了)
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