休まない日本スポーツを考える(前編)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】
日本的な練習は、年がら年中行うのがおおかたです。そう計画して意図的におこなっているものというよりも、いくつかの背景があって自然とそうなっていると考えるのが良いでしょう。
若いうちは体力に溢れています。成長期にある活発な世代というのは、滅多に体力が切れてしまうことが起こりません。
その感覚のまま、成長期の終わった年齢でもやろうとしてしまうところがあるかもしれません。
たったいまの大学や社会人でも、あまりシーズン期とオフ期を分けることなく通年のような感覚で活動する様子があります。
その結果として、めりはりなく練習をし続けるために体力トレーニングも伸びません。ただ疲れるだけになるからです。
日課的にスポーツ活動をおこなうのを改めて、期分けを導入してみることを提案します。
たとえばこんな期分け
まずはゴールを決めます。
つまりどの大会(試合)に向けて積み上げるのか、本番の日をきちんと定めましょう。
たとえば日本の部活動、小学生から大学生までを言えば、年間にトーナメント式もしくは総当たり戦の大会が二〜三つほどあります。
仮に三つとしましょう。それぞれについて、明確にそこへ向けて計画を立てます。年間で三期分けとなります。
一期ずつ区切をつけて必要な分だけの活動とし、それ以外では活動をしないのです。
もちろん個人が取り組むことは自由なので、チームや組織としてまとまった活動について二ヶ月長くて三ヶ月のチームトレーニングの期間とします。
結果として大会数が多くなれば分けることが困難になっていくので、ひとつの期間にふたつの大会が入ることもあるでしょう。それが悪いというのではありません。
大事なことは、あくまで「目標の大会へ向けた準備」という位置づけを原則として、必要な期間のみ活動するというスタンスであることです。
必然的にオフ期が生まれることになります。
休みは有事
日本人の休息日の感覚は、「いつどこに休みを入れようか」と考えることが基本です。
つまり休息は「あえて取るもの」であり、要するに「無いもの」なのです。
この日本人的発想が時と場合によって暗転する、ということですから、その発想自体を真逆にして「必要な時期だけ活動する」と位置づけるのです。
休みは「当然にしてあるもの」となり、反対に活動日を特別な時間にする心理的な方策です。
気力も延々とは続かない
次に、これまでどおり年間を通して継続的に鍛練を進めながらも、その中で適宜オフをつくるかたちがあります。
それはたった一日二日の定期的な休息日のことではなくて、完全に活動を停止する中長期の休暇です。
だいたい二〜三週間、短くとも一週間という暦による区切りを使います。暦に合わせると人間は動きやすいものです。生活で体に馴染んでいますから。
しばらく強度の高い鍛練を積み重ねてからだが酷使されたら、キリの良いところで締めて、思い切って一週間ほど休みを作りましょう。
もしくは学校の予定に合わせて、夏休みや冬休みなどの長期休暇のときに練習も休みにします。それが二〜三週間だと思います。
目標としていた大きな大会が終わった後や、行事が重なっている月、世代交代などでチーム編成の時期など、強化に集中できない期間には思いきって活動を休む選択もあって良いと考えます。
人は延々とは頑張れません。はっきりとした始まりと終わりが必要です。強化のあとには、いくらかのオフを入れてあげましょう。
自分を外から見る時間
十代でも、生活が部活一色になっている人も少なくありません。そんな人はとくに競技と一旦離れる時間を、意図的につくると良いと思います。
寝かせることで脳と体がリフレッシュされ、これまでの取り組みがなぜか自然と整理されます。
練習しないと衰える、と心配するかもしれませんが、それは中途半端に行い中途半端に休むからで、目標値とかノルマを定め頑張り切った段階でオフに切り替えればからだが鈍ることはありません。
むしろ素晴らしい回復期になるでしょう。再開後は上達具合が良くなっているかもしれません。
焦ってしまうことや気持ちが入りすぎていては、良い情報や分析ができません。具体的に自分のなにをどう育てていくと良いか、視野が狭いときには見えないものです。
休むことで体力のみならず、気力も落ち着けるので心身共に回復し、再開後の伸びが良くなります。
そのようなケースはたくさんあります。
やめることでまとまる
これは行き詰まったときも、同じことが言えます。
やってもやってもうまくいかないとき、伸びがなく兆しの見えないときには休みましょう。
良くないかたちで意地になっても仕方がありません。そこで思い切って足を止めてみることで、新しい方法を見つけられる場合もあります。
本当に頑張っている人ほど、それをしない時期、あえてやめる時間をつくることを提案します。
もう少し深掘りしようと思いますので、次回に続けます。
(つづく)
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