【梅原トレーナーのからだづくり哲学】所属感から脱却せよ
今日は私が日々、スポーツ現場で実体験することのなかで、読者の方々にお伝えすべき情報と私なりに深く考えた上でさらに読者に考えてもらいたいことを書いてみようと思います。
私はバスケットボールというチームスポーツに深く関わっています。競技者という己ただ一人ではなく、複数人でプレイを行い、力を合わせて勝負に挑みます。
さらに競技が団体というだけでなく、普段の活動においてもチームとして動きます。つまり会社や学校があり、そこに籍を置く個人といったように、◯◯チームの所属部員という立ち位置が生まれます。
ここに人の成長を阻害する悪因があり、あくまで私個人の言い回しですが「所属感」が生まれていて、それが選手の成長を見えざる奥深くの根っこで遮っていると憂慮しています。
あなた自身がここにいない
人間は、いや命あるものすべて他動的に生きていません。強制的にさせられるという事態は存在しつつも、自分を最終的に動かすのは自分にしかできないのです。
人間も自己成長が根幹であり唯一ですので、どのような良い環境と良い教え、恵まれたチャンスがあってもそれは外のものであり、根本には自らの意思と行動が絶対的に必要です。
反対に悪い条件があっても、それに吞まれるか跳ね返すかは自分次第ということです。
それを現代特有の「所属感」によって刈り取られていきます。
僭越ながら私が現場でありありと感じる選手らの印象は、いったい「誰がいまこのコートに立っているのだろう?」という不思議さ、そして少しのむなしさです。
いるだけの人は動かない
本当は「何」を練習しているかより「誰」が練習しているかに、成長の根っこがあります。
自分を伸ばそうと意欲の出ている人と、やらされただこなしている人のどちらに軍配が上がるかは聞くまでもないでしょう。
プレイヤーとしての個人が消え、チームへの所属意識に包まれるとコートから姿が見えなくなります。
集団全体に紛れ込み、自分自身の成長を捨ててしまっている選手は決して少数ではありません。これは集団生活のマイナス面だと、強く懸念します。
皆が必ずそうなるものではありませんが、所属感、従属感に慣れてしまう人は陥りやすいと考えます。
行いやすさを考えれば、流れに身を任せるほうが楽ではあります。どんな人がそうなっているか。自分という選手が先頭ではなく、チームが先になっている人の特徴的な様子を揚げてみましょう。
まず人の話をほとんど聴いていません。意識的に聴かないようにしているのではなくて、ただ注意を向けていないだけです。
練習の説明を把握しないので、実技が始まると自分だけ何をするのかが分かりません。
分からないから周囲を見て、誤魔化して雰囲気だけ真似をします。だからつねに的を外しています。
順番もいつも後ろです。練習の中身はズレていてかつ決まって最後尾、これで上手くなるはずがありませんね。
さらに準備や片付け、移動などの際に、手際よくパッと行動することができません。
また練習中にも注意が他に逸れているため、たとえばボールを持ってくる、列をつくって並ぶ、集合するといったときに反応がすこぶる鈍い、いや実際は無反応です。
所属感に浸りきると、こんな毎日になります。
でも意外と「当てはまっているな」と思った読者もいるのではないでしょうか。
居心地が良くて気づかない
どんな場合においても自分はしないで他の誰かがするという前提に立っているのは、もうコートの外、チームの外にいるのと同じではないでしょうか。
話を聴くのは自分じゃない、受け答えするのは自分じゃない、頑張るのは自分じゃない、準備するのは自分じゃない、見本をするのは自分じゃない、練習の中心は自分じゃない。
ただ自分は紛れて人真似しているだけ。だから上達しないのです。
練習の中心にいないのは、人気者ではないからですか?主力ではないからですか?下級生だからですか?
いいえ、ご自身が一人のアスリートとしてコートに立っていないからです。
自ら主体を放棄して、ただチームに所属することに収まってしまったのです。たぶん自分でも気づかないうちに。
いますぐそこから脱してください。
チームの前にアスリートとして
矢面に立つのが自分ではなく、所属しているチームであれば色々と気が楽です。それはよく理解します。
ただそれは自らの喜びや充実を諦めることでもあります。あなたがあなたではなく、誰でもないただの一部員。何人かいるうちの一人、というだけの存在です。
それは決して気持ちの晴れる日々ではないと思います。
見方によってはただのお節介をあえてレポートに書きましたが、このような中高生が本当に稀でなくて増えていると実感するからです。
私はすべてのアスリートを応援し、活躍を楽しみにしています。お世辞でもなんでもなく、本当に努力次第でまだまだ上達するのです。
そのために、どうぞ所属意識から脱して個人を中心に立ててほしいと願います。
素晴らしい選手のみんなへ、心を込めて。
(了)
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