育成期に能力を伸ばしたいなら(前)【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 トレーニングレポート No.118
こんにちは、梅原淳です。
私が育成年代のバスケットボールの現場でよく耳にするお悩みに、「ディフェンス技術がなかなか上達しない・・・」「うちの選手たちは運動神経があまり良くないから・・・」といった運動の基礎能力が育たないことの苦悩があります。
そこを専門家の端くれとして陰ながらサポートしているのですが、運動能力を身体トレーニングでしかアプローチできない、もしくはそれしかないと考えている人がいるならば残念です。
同時に可能性が大いにあります。
バスケットボールのプレイが伸びないのは、運動技術としてアプローチしていないからであり、筋力でも俊敏性でも、心肺持久力の問題でもありません。
腕や脚の精確な動かし方、その力の入れ方と抜き方、タイミングのとり方、リズム感、そういった基礎的な運動する技術をもっと訓練して上達させることが競技力向上の真実です。
それはプレイスキルだから普段から練習しているだろ!
とおっしゃる人もいるでしょう、でも違います。
あくまでバスケットボール的に体を動かしているのと、それを外して広い意味で運動を行うことの違いを理解すると、バスケットボール・スキルはぐっと伸び始めます。
なにをやっても上達しない理由
たとえば私はよくジャンプの練習をさせるのですが、これはバスケットボール競技に特有のものでしょうか。
ジャンプという動作はどんなスポーツにもあります。頻度の差はあっても、跳ぶことは運動のひとつのかたちです。
バレーボール選手は、バスケットボールになると突然跳べなくなりますか?サッカーや野球では競技中に跳ぶ行為は少ないかもしれませんが、だからといってその選手たちはみんな跳ぶ力を有していないのでしょうか?
つまり運動とは競技性や専門性に左右されないものであり、土台をつくることを真っ先に考えれば、それを足掛かりにしてプレイ・スキルもちゃんと向上すると言うことです。
しかしながらほとんどの場合、バスケットボール的プレイ、バスケットボール的動作の視点でしかないために、どうやって運動技術能力を伸ばしたら良いか、何を試しても上手くいかず悩んでしまうことになります。
的を射る
ジャンプの例で言えば、バスケットボール的に高さを必要とする場面の跳ぶ力を上げたいと思い、現実的にリバウンドやランニング・シュートの成功率で判断しがちです。
リバウンドが取れないとか、シュートをブロックされることが目立つようならそれを改善しようと考えます。そのひとつとしてジャンプ力を付けようという発想も生まれます。
ただこのような場合に、大体の人がウエイト・トレーニングで筋力をつけようと思い、またリバウンド的跳び方やレイアップシュート的跳び方などといったことを始めるので、なかなか前へ進みません。
どうして前へ進まないのか、それは本質的な跳べない理由とかけ離れているからです。的が外れているのですね。
呪縛にハマる
なんでもバスケットボール的におこなってしまうと、本当は賢明ではない動作になってしまうことが大半です。
シュートの腕の構えはこうしなさい、しゃがむときは膝をここまで出しなさい、つま先立ちで構えなさいなどと、古い型のような教えを受けた経験はないでしょうか。
必ず教えたとおりの格好でプレイするよう、細かく指導されることもあるかもしれません。
こういうものはバスケットボールに限らず、不思議と広い範囲まで同じように伝わっていくものです。正否の分からない型のようなものが先行し、いつしかその理由もどこかへ忘れてしまいます。
明確な意図や根拠なく、こうプレイしなさいと走り方からボールの投げ方から様々にバスケットボール的動作がつくられ増えていき、もはやその面でしか物事を見られなくなってしまいます。
専門性の呪縛とでも言いましょうか、バスケットボールを特別な分野として見れば見るほどそれは強くなります。
バスケットボールをいったん忘れよう
体を鍛えてもフットワークをどれだけしてもうまく上達しないチームを、不肖ながらテコ入れして改善するのが私という専門家なのですが、現場経験としてひとつの例をお話したいと思います。
勉強熱心なコーチとバスケットボール的練習、それをまったく無視した梅原クリニックで選手の体が変化していきます。
バスケットボール部に、バスケットボールを忘れさせました。次回へ続けます。
(つづく)
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