トレーニング場のお父さんたちから学ぶこと~【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 トレーニングレポート No.117~
スキルアップ トレーニング フィジカル(身体) 動画 梅原 淳
こんにちは、梅原淳です。
私は週に二〜三度、近くの公営体育館でトレーニングをしていて、つい最近のことになりますが周囲の方々の様子を見てハッとしたことがあり、本レポートでも整理してお伝えすべき内容だと考えました。
あなたは重りを持ったいわゆる筋力トレーニングを行うときに、関節を曲げ伸ばしする範囲について意識を向けていますか?
レンジと言いますが、バーベルを上げ下げする際に腕や脚の関節をどのくらい動かしているか、ということです。
筋肉は大きく使えばこそ
なにが良いのかと言えば、もちろん動作範囲は大きくしたほうが筋肉への負荷は上がりますから、関節は「深く曲げ、真っ直ぐに伸ばす」ことが原則です。
筋肉はゴムと同じで伸び縮みをして作用します。縮むことで関節が曲がったり伸びたりします。それが複合的に様々な関節で同時に起こることで全身による「運動」となるのですね。
誰でもわかるシンプルな構造です。
それでは次に考えることとして、運動は主に動作が開放されているほうが良いのか、縮こまっているほうが良いのか?
当然、自由に大きく体を使えることでどんな動作にも対応しうるわけですから、関節可動域が小さいと運動レベルは低くなり、大きいほど高度な運動が可能となります。
それなら運動をおこなう場合は、より技量を伸ばすことを目指してつねに量的に負荷を掛けることが重要です。
それは関節可動域の部分で言えば、関節を小さく動かすことは筋肉の伸び縮みも少なく負荷量はわずかです。筋肉は伸縮を大きくすることで強い負荷が掛かり、その能力を伸ばすことができるのです。
いくらデッカい重りを持っても
トレーニング場へ行くと、けっこうな重量のダンベルを手に持っているお父さんたちがいて、さらにトレーニング・マシンへ括り付けて重量を足している人もいます。
物足りないのでしょうけれど、ただ行っている様子を見れば多くの人が腕や脚をほとんど動かしていません。いや実際は全員が、ちょこ・・ちょこ・・とわずかに肘を曲げ、膝を曲げているだけです。
関節を動かしている範囲としては、たとえば肘では三十度も変わっていません。
ひとつ具体的に言うと、ディッピング(またはディップス)という種目があって、腕を曲げて体を沈めてから上げるトレーニングなのですが、肘の動きが本当にちょこっとなのでほとんど動作がありません。
ときには腰に重りを巻いている人もいますが、そんなわずかな動きでは重量がどれだけあっても体は何も変わらないのです。
重いバーベルでやった気になるな
これをあなたのトレーニングで振り返ってみてください。
ベンチ・プレスではどうでしょうか?スクワットではどうでしょうか?その他にも肩や膝を鍛えるウエイト・トレーニングをするときに、必要充分な関節動作をおこなっているか、一度振り返ってみましょう。
関節は鍛えた角度でしか強くなりません。当然のことですね。重りが100kgでも、ほんのわずかにしかしゃがまないスクワットなら、その動いた範囲しか負荷が掛かっていないのですから、深いポジションはまったく強くなっていません。
アーム・カールも同じです。たくましく太い腕をつくろうと思っても、それを競技に活かそうと思っても、ちょこちょことしか肘を曲げ伸ばしできていないとしたら、見た目だけ一丁前に重いバーベルであっても肘の動作は鍛えられません。
重量にしか目が向いていないと、このようなミスが実際にあります。トレーニング上のお父さんたちを悪者にしているのではありません、現実的に負荷というと重量物で考える場合がほとんどですので、視野を広げる必要性をお話しています。
成果を出したいのなら
関節の多くの部位では、機能的にかなり大きな可動域を有しています。
肩の関節や股関節だけではなく、膝も肘も背骨だってじつは大きく動作しますので、できるだけフルレンジ(すべての範囲)でおこなうことを基本としてトレーニングしてください。
最大をきちんと把握した上で、安全面なども考慮して実際のレンジを決定することが必要です。まずは動作を開放して大きく行うことを、ウエイト・トレーニングのベースにしましょう。
関節が動かないほどの重量物は間違った「負荷」への捉え方であり、期待するような成果はいっこうに得られません。
気持ちだけの満足を得るためならそれで構いませんが、競技力を伸ばすためならば適切にトレーニングをおこないましょう。
今回は関節角度にまつわる話でした。これからもあなたの成長を応援しています。みんなで良くなっていきましょうね!
(了)
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