FIBA-OQT決勝「イタリア対セルビアより」イタリアのディフェンス9

スキルアップ ディフェンス戦術 動画 戦術 片岡 秀一

オリンピック最終予選の決勝戦「セルビア対イタリア」のゲームより、イタリア代表チームのトランジションディフェンスを取り上げます。
ハイライト等では、決して特集されない領域ですが、試合の行方を大きく左右する領域です。

以前、日本バスケ協会の主催する全国コーチクリニックに欧州で実績のある氏が登壇した際には、「カテゴリーや競技レベルにかかわらず、自分たちよりも身体能力やサイズに勝る強いチームとの試合で勝機を高めるため、ディフェンスリバウンドトランジションディフェンスは欠かすことができない要素です」と強調していました。

「レイアップシュートでは何種類ものステップワークを練習するのに、トランジションディフェンスで必要な個人スキル、チームファンダメンタルを指導するコーチは少ない」と、十分に指導されているケースが少ないことに警鐘を鳴らします。

この記事では、具体的な練習ドリルではなくゲーム中の事例の紹介となりますが、トップレベルの攻防の現象を通じ、日頃の練習やコーチング等で参考になる事があれば幸いです。

また、同コーチはトランジションディフェンスのゴール設定として『ゴール下での 2 点ショットだけではなく、トランジションでの 3 ポイントシュートまで防ぐことが目標』とも述べています。

それを踏まえ、イタリア代表チームのトランジションディフェンスを分析していきます。

1、プレーの構造

トランジションディフェンス1 トランジションディフェンス2

2、プレーの流れ

トップの位置でのピック&ロールに対し、セルビア代表はスイッチで対応。
ポイントガードのテオドシッチ選手がイタリアのインサイドをマークします。
ボールをサイドに展開後、3Pショットを放ちました。
リバウンドの争いの中で、お互いにボールをファンブル。
混戦状態の中で、イタリア代表はゴール下のシュートをこぼし、再びルーズボールとなります。

ボールの争いの中、イタリア代表としては不利な状況となります。
数的不利な中でセルビア代表がボールを前方に進めます。
ゴール下のノーマークシュートこそ守れますが、3Pシュートを打たれるのは免れない状況です。
しかし、イタリア代表の#31ミケーレ・ヴィターリ選手らが懸命にハリーバックをします。

この場面で3Pシュートを防ぐことは、拮抗した実力同士のチームの場合ほぼ難しいでしょう。
しかし、諦めずにスプリントバックをすることで、オフェンスリバウンドからの安易な2点シュートは防ぐことができます。
コートの状況を把握し、次の危機やリスクを理解しているかのような迷いのない献身的な戻りでした。

結果として3Pシュートは決まりました。
しかしリバウンド争いの際に、イタリア代表の選手がセルビア代表の選手よりも内側にきちんと戻っています。
もし、シュートが外れたらリバウンド争いに加われる状況でした。
このプレーは、試合の公式スタッツには何も記載されないプレーです。
しかし、このようなファインプレーの積み重ねこそが、イタリア代表の強さと言えるのではないでしょうか。

3、まとめ

冒頭で、『ゴール下での 2 点ショットだけではなく、トランジションでの 3 ポイントシュートまで防ぐことが目標』という言葉を紹介しました。

私がトランジションディフェンスのコーチングをする際には、上記に加え「相手のセカンドチャンス、特にリングとゴールの間にディフェンス選手がいない状況でのオフェンスリバウンドを防ぐ」ことも項目として加えるようにしています。

結果として、相手チームの得点となった場合もありますが、目標を設定することで選手にとっても行うべきことが明確になった手応えがありました。

トランジションディフェンスは、刻一刻と状況が変わり混沌とした状況です。

しかし、チームがコントロールできることを明確にし、それに対するデータを集計しフィードバックを提供することで、トランジションディフェンスの質や、各選手の発想力、状況判断能力が向上しました。

コーチとして際立った戦績があるわけではないので恐縮ですが、トランジションディフェンスの向上に対して選手の迷いを減らし、すべきことを明確化することが出来た手応えがあります。

コーチとしての成功体験の一つです。

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この記事を書いた人片岡秀一片岡 秀一
株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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