【片岡編集長】ナショナルチームのゲームより16『ニュージランド代表のアーリーオフェンス1』
これまで、スペイン代表、アルゼンチン代表、オーストラリア代表、アメリカ代表、ギリシャ代表チームのアーリーオフェンスについて紹介をしました。
各記事では、各国のプレーの構造の紹介と共に、各国のチームコンセプトの分析も試みてきたつもりです。
今回より、ニュージィーランド代表チームを扱います。男子代表チームの試合を観戦されている方にとっては、111対81で男子代表チームを圧倒した試合が印象に残っているのではないでしょうか。
特に、#9 Corey Websterの突破力とシュート力や、トランジションの中でのインサイド陣の正確なアウトサイドシュートに苦しめられました。
本稿では、その中でも、代表的なプレーを紹介します。
1、プレーの流れ
馬場選手の3Pシュートが決まった瞬間、#14 Rob Loe選手が一目散に自チームの攻めるリングへ向かって走り出している様子が動画でも確認できます。
迷いなく、ダッシュをしている様子が動画を注意深く見ると分かると思います。
ここで重要なのは、この場面で#14Rob Loe選手が全速力で走って向かう場所です。ゴール下に向かうのではなく、ウィングの位置を目がけて走ります。
ショットイン後のパスの後、ボールを受けた#0 Tai Webster選手も直ぐにウィングを目がけてパスをします。
パスをした直後、直ぐに#0 Tai Webster選手は#14 Rob Loe選手からボールを受けるべく、全速力で走ります。
結果、トランジションの中でもハンドオフのような形になります。
一連のプレーの中、日本代表チームはゴール下へと戻りつつ、ハンドオフの対処を考える必要性が出てきます。非常に難易度が高い状況です。
このケースでは、最初のハンドオフに対し田中選手はボールマンを追いかける形で追跡するも、通り抜ける前後でスクリナーに接触し、ゴール下にパスコースが出来てしまいました。
渡邊選手もカバーを試みますが、間に合いません。
また、トランジションの中での展開である事も影響し、反対サイドのHelpも間に合いません。ゴール下での2点を許す格好となりました。
2、まとめ
ショットインの次でも、ゴール下のノーマークのshotを成功させている事が本プレーの肝であると言えるでしょう。
ウィングでのハンドオフに対し、渡邊選手としてはリング下を守る必要があり、パスカット等の準備をしにくい事情があります。
また、ゴール下のshotを防ぐ為、Help ディフェンスで対応できたか否かの可能性について考えてみましょう。
プレーでは、ファジーカス選手は、自分のマークマンを捕まえることに目線が向いており、サイドでの状況を捉えきれていません。
しかも、もし今回、仮にファジーカス選手のHelpが間に合ったとしても、元々のマークマンへのパスコースが空いてしまいます。
反対サイドの比江島選手は、しっかりとHelpの準備をしています。
しかし今回、余りにも素早い展開での出来事だった事もあってか、反応をするものの間に合いませんでした。
また、比江島選手のマークマンは反対サイドのコーナーでしっかりと待ち構えています。
もし、比江島選手がHelpをしたとしても、反対サイドのコーナーへパスを出されていた事でしょう。
これがハーフコートディフェンスであれば、コート奥にいる馬場選手がコーナーへのパスをカットするなどの対応も考えられます。
しかし、攻守の切り替えタイミングで、混沌とした状況の為、そこまでの余裕がありません。
ニュージランド代表の素早い走り出し、残りの選手との共通理解も重なり、非常に有効なプレーです。
このプレーは“GET”と呼ぶコーチもいるようです。
次回でも、本プレーを中心に紹介していきます。
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株式会社アップセット所属。GSL(ゴールドスタンダードラボ)編集長として記事の製作、編集、各種のイベントなどを多数実施。近年は『Basketball Lab』にて記事執筆と編集、『バスケセンスが身につく88の発想 レブロン、カリー、ハーデンは知っている』・『バスケットボール戦術学』などで編集協力として関与。トーステン・ロイブル氏を講師とするEuro Basketball Academy Coaching Clinicでは事務局を務める。活動理念は「バスケットボールに情熱と愛情を注ぐ人の、バスケ体験の最大化」・「バスケ界にヒラメキを作る」。JBA公認コーチライセンスC級保有(2021年3月にB級を受講)
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