【梅原トレーナーのからだづくり哲学】健康なのはどちらの人か
スキルアップ トレーニング メンタル(心) 指導法 梅原 淳 育成法
小さな風邪症状をしばしば起こす人と、一度の大病をした人は、どちらが健康なのか。
風邪など引かずただ一度、大きな病気をしてなんとか克服した、今は元気、という人がいる。手術や病状が重いものをしたことのある人は、じつは少なくないだろう。
もしくはそこまで至らずとも、医者に掛かって薬をもらったり治療をしたり、入院したことのある人もいると思う。
いわゆる病気に罹りきってしまったというケースである。治すのは少なからず苦労したと思う。風邪の重いものでも進んでしまうと厄介だ。
一方で、ときどき喉やお腹が痛くなるとか、全身が気だるくなって風邪の症状を起こすという人もいる。ただしいつも軽い症状のみ、病気をしたと言えばしたが、重くならないから仕事を休んだり医者にかかったりすることはないというケースだ。
このふたつ、両者はどちらが病気に強いと言えるだろうか。
前者は大病をして、場合によっては死の淵まで追い詰められることにもなるのであり、そういう経験を通して、普段はなんともなく見えてもたった一度のことで取り返しのつかない事にもなり得る、という思いから「病気は怖い」と本人だけじゃなく家族も知友も「病人」の意識が残るに違いない。
後者についても、大病はしていないが、なんとなく印象としては「しばしば体調を崩している」というように周囲からは見えてしまうのではないだろうか。
もしかするとそれは、病弱にすら感じられるかもしれない。本人がそう自覚している場合もあると思う。
▽どこまで重くなるか
重要なことは、病気をしても悪化させないということにある。
初期症状が出たらしっかり養生をして、そこで止める。もしくは体の耐性が強ければ、不摂生さえせずいたら強い免疫力でもって手前で終息してくれる。
熱やだるさなど自覚症状が出たとしても、風邪を“ひきそうになった”で治まる人は病気に強いと言えるだろう。
病気というのはエンジンが掛かってしまうと、勢いがついてどこまでも進んでしまう。たかが風邪と甘く見ていると、それは進行して肺や腸や脳の重い病気にも発展していく。
風邪で終われば良いが、軽い不調だけで済めば良いが、そうはならないのが病気に弱い人の辿る道だ。
▽病気となるライン
季節の変わり目や仕事など、生活上で疲れが溜まることはよくあることだ。
寝ている間に布団が開けて体が冷えたために風邪っぽくなってしまうこともあり、そのようなことはどうにも防ぎようがない。
問題はそれが重くなるところまでいってしまうか、軽いところで治まるのかの違いである。
ただ一度重い病に掛かっただけ、と言う人は自分がそれ以外では至って健康であるかのように言うが、重い病気は突然なるのではなく、小さな悪いものがちょっとずつ長い年月を掛けて溜まっていき、もう蓄積しきれ無くなった満杯の倉庫のようなものである。
だから本当は小さな病をその人もしている。しているが気づかない。それは体の表面に出てこないからだ。
僅かなものでも抵抗反応(熱や悪寒など)として出る人は、病気を追い出す力がある。しかし重い病をする人はその力がないから、體に悪いものが溜まっても何も症状が現れない。だから本人は気づけない。
軽い風邪症状などの不調は、病気と言うほどの段階ではない。免疫の弱い人はそこで体が反応を出さず、重い本当の病気になってしまってから突如症状が飛び出すのだ。
これが癌や糖尿や結石など、治すのが困難な怖い病の典型である。今は健康だと思っていても、本当は体の中で何が起こっているか分からない。真剣に用心しなくてはいけない。
▽本当に健康な人は不調に気がつく
本当に健康なのは、兆候がすぐ表に出てくる体のほうである。炎症も熱も、それ自体が悪いものと認識している人もいるが、それは免疫細胞が悪いものを追い出そうと働いている証拠でもある。
體に良くない状況が生まれたときに、早い段階で免疫機能が働いて、熱が上がり発疹が出て老廃物などを外へ排出しようとする。咳や炎症反応なども同じ類いだ。
比較的はじめのところでこのような症状が出るので、さらに免疫機能が活発になるよう自分でも體を温めるなど養生をすれば、大事には至らず不調は治まる。
もう一度言うが、熱や発疹が出たりしても最初の段階で治まる人は、体の中が強く健康な証拠なのだ。
▽油断は禁物
症状の重い病気、治すことに苦労する病気をしたことのある人には、ぜひ謙虚になってもらいたい。たった一度だとしても、それを学びの材料にしてほしい。
片手で数えるくらいしか病気などしたことがないと自慢しても、それは大きな間違いである。重い症状になるまで抵抗する動きが起こらない、もしくは病の進行を止められない体であるのだから。
たった一度きりでも大病をした人は、もっと体の内側を鍛えることをするべきだ。
食べるものを改め、体をあたためる生活をし、病気に侵食されない防衛体力をつけよう。もちろん運動することも有効である。
油断は禁物と心得て、病に掛かってからではなく、日頃からミナギル體をどうぞ育ててください。
(了)
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