【梅原トレーナーのからだづくり哲学】 伸びるチームは新入生の慣れが早い(下)

スキルアップ 梅原 淳

 

新入部員がいかに早くチームへ馴染むか、さらに上級生と同じ威勢で練習へ取り組んでいるか。

これはチームの成長と、その将来を知る手がかりになると申し上げました。

きっと多くの場合、新入生は「まだ入りたて」という印象から外れず、できなくても仕方がないと考えるでしょう。

しかしそれが実際は不要な配慮であることを、成長の大きいチームはしっかりと理解しています。

コーチや先輩部員の勝手な思い込みによって、新入生はまだ時期尚早だから「ゆっくりじっくり伸びていくもの」と決めつけるが為に、本当は早く成長できる可能性を捨てているチームが大多数です。

これは入学前からフライングで練習に通っているなどといった話ではなく、入部直後からチームのド真ん中に立たせて思いきり良く練習をさせていくこと、新入生を遠のけるか抱き込むかでその成長速度は大きく変わるのです。

▽問題は新入生だけにあらず

私は外部から携わるトレーニングコーチとして、ささやかにチームへ投げ掛けていることがあります。

それはひとつ上の学年の先輩たちに、新入生の指導係をお願いすることです。

先輩の中では新入生に一番近い年齢であり、存在もやはり近く感じられます。

なにより昨年まではその先輩たちも新入生でした。そのときにどうやって一年目を過ごしてきたか、それが示されるのがまさに現在(いま)なのです。

新入部員として入った一年目をいつまでも落ち着 きなくチャラけ、自分は関係ないような態度でいたなら、この二年目に後輩が入部して来てもまるで面倒を見ないでしょう。

成長に意欲のない、勝利に意欲のない負の空気をまくだけの人間がふた学年にもなります。これでチームは簡単に崩れ落ちます。

じつは注意すべきは新入生だけではなくて、次の学年も一緒に鍛えていく必要があります。

▽チーム成長はシンプル

これは常にセットで、申し上げたように今年の新入生は来年の先輩になりますから、一年目にしっかり地に足を着けないと翌年も同じことが続きます。

そこへ後輩が加入してくるのですから、自分たちの振る舞いを当然ながら見られることになり、同じ行動を取られるようになります。必ずそうなります。

私はいつも、新入生を鍛えるためにこそ上級生たちをシャキッとさせようと働きかけます。

ことさら一学年上については世話係をお願いするので、嫌がられてもしつこく背筋を正すことを促します。

正直に言ってこれが改善されるまでには何年も掛かりますが、チームづくりの根幹だと知っていますから、どのチームをお手伝いする際にも、私個人の意思で大きなお世話をしています。

結果として、これが確実にチームの背骨を太くしていくことになり、成長の薄かったチームから抜群に伸びのあるチームへと様変わりしていきます。もちろん練習環境や人材的な要素に関係なく。

ただありのまま、新入生の意欲と上級生の姿によって上がりもすれば下がりもするということです。

▽真の情報は現場にある

背筋を正して目的を一点、見据えることはそう難しいことではありません。

いまのエナジーを何に注ぐか、それを定めるきっかけと助けを、たとえば大人が少しアシストしてあげれば良いのです。

しかし現実には、それをしていないチームが多い。

ほとんど選手の能力的素材に頼り切っています。心の問題と競技力向上が結びつかないからです。ただ身体的な技能で検証する以外、材料がありません。

本当はもっと人間的性格と行動形態を観察して、成長の可能性を探ることが現実的です。

人を動かすのは心であり、脳が心をつくっていくのですから、ダイレクトにそこへ投げ掛け行動を変えてあげれば、結果は必ず上向きます。

その手綱をチームの皆で引くことで求心力がつくられ、新入生もその良い空気を吸ってすぐに意欲が膨らみます。だから馴染みも早い。

新年度の5月あたりで、もう学年を見分けられないチームもあります。それほど新入生が熱心に練習しているということです。

そんな選手たちの数年後は、どんな素晴らしいチームに成長しているでしょうか。それに続く後輩たちは?

私がチームづくりを新入生で推し量るのは、このような多くの実体験があるからです。現場で目の当たりにしてきた真の情報(現実)が、なによりの教師となります。

これはわずかな私の経験上のことですが、あなたのひらめきに繋がればと思い筆を執りました。思考のアシストとなれば幸いです。

みんなで一緒に考え、全員で成長しましょう!