【片岡編集長のレポート⑩】フルコートディフェンスの精度を高めるための方法とは…?
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前回のメルマガでは、ボール運びを助けるピック&ロールに近しい形に対するオーストラリアのDFローテーションの構造分析を試みました。
ボールマンにダブルチームを仕掛ければ、当然ながら、コート上の何処かにパスコースは発生します。
そこに対し、優先順位を設けてスペースを埋める連動性を駆使する事で、ボールマンの選択肢を奪う事が可能です。
そして、キーワードの1つであった『Buy Time(時間を奪う)』事によってディフェンスを優位に進める事が可能となります。
今回、八村選手がボール運びに関わるケースにて、同じ原理・原則に基づき、非常に面白いローテーションがありました。
そのプレー紹介を通じ、あの場面におけるディフェンス戦術の紹介を試みたいと思います。
フルコートディフェンスの精度、コーチングをする際に一つの事例紹介を通じ、知識をさらに高めたいコーチの方などに参考になれば幸いです。
・リバウンドを獲得した八村選手、PGである富樫選手へとパスを渡して場面がスタートします。
・自分のマーク、及び縦方向に良いパスコートが無かったため、ボールを八村選手へと戻します。八村選手も安易にドリブルを突くことの避け、富樫選手へボールを戻し、ゴールへと走りながらドリブルのスペースを作ります。
※八村選手へのマークマンが前線からのディフェンスをする素振りも無く、直ぐにハリーバックをしていれば八村選手がドリブルでボール運びをしたのではないかと思われます
・富樫選手がドリブルで、ボール運びをしようとミドルラインから進行した瞬間、八村選手のDFがShow Deffenceで富樫選手の動きをストップします。
※ここで、黄色のエリアがフリーになりますが、ソン・メイカー選手が猛然とダッシュをし、ここのパスコースを埋めるべくダッシュをします。同時に、X3の選手は3番と5番の両方を守れるポジショニングへと配置します。
・ドリブルでの突破が直ぐには難しい、八村選手へのパスには、ソン・メイカーが控えている。富樫選手は、サイドライン際にいる比江島選手へのパスを選択しました。
・8秒バイオレーションのリスクも抱えていた日本代表。比江島選手は、直ぐに縦方向へとパスを飛ばし、ボールを進行させます。
※オーストラリア代表としては、ここの縦パスを許さないポジションを確保できていれば、密集地帯で比江島選手にドリブルを選択する事が可能でした。
ここの縦パスを許してしまった事で、イージーバスケットが発生しかねないリスクを抱える事になります。
・縦パスが出た瞬間、ソン・メイカー(X5)、及び、富樫選手のマークマンだった選手が一気にゴール下へとダッシュで戻ります。
アウトナンバーによるイージーバスケットを避ける為です。即座に反応をした効果もあり、3から5番へのパスコースを潰すことに成功。
アウトサイドの選手がマークをしてミスマッチにこそなっていますが、八村選手(4)へのパスコースも消しました。
・リスクを最小限に抑えた後は、オーストラリアの絶え間ないディフェンスが続きます。X2が3番の選手へとダブルチームをし、自由を奪う動きを続けます。
ここで、2番へのパスコースはダブルチームの影響で発生してしまいましが、体力こそ消耗しますが、ゴールと反対方向のパスになるので、大きなリスクは無いと考えます。
結果、3番の選手がボールをコントロールしてスペーシングの調整やコールプレーの指示をさせず、2番へとボールを戻させました。前回同様、ハーフコートに入ってからも様々な工夫で時間を奪う事に成功しています。
ボールマンが余裕をもってボールをレシーブした時点、残りのショットクロックは12秒。オフェンス側に与えられた24秒間の内、半分を消費させる事に成功しました。
<全体像>
・今回の事例の中、縦パスを受け取った3番から5番の選手へのパスコースを潰したことが最大のキモであったと考えます。それを可能にしたのは、前線のパスコースを潰すために張り出したインサイド選手の脚力と判断の速さです。
・八村とX1とでミスマッチになった事は不本意であると思いますが。ハーフコートオフェンスの最中に、より良いマッチアップへとスイッチをしているはずです。
(4番ポジションの選手をマークする際に、X1よりはX2、X2よりはX3というサイズの流れ)
・今回の事例でも十分にフルコートDFが成功したと言えると思いますが、あわや、ターンオーバーになりそうな場面も何個かありました。ディフェンスにとっては、スティールを狙える瞬間です。
①八村選手へのパスをソン・メイカー(X5)がパスカット
②比江島選手から3番のパスコースが無く、ドリブル突破をする際のダブルチーム
③富樫選手がパスを選択せず、ドリブル突破を選択したケース。突破しようとするドリブルに対してコースに入り、ダブルチームを仕掛ける。
<まとめ>
前回と同じく、今回でもオーストラリアのディフェンスは日本チームのオフェンス時間を奪う事に成功しました。
前線からのディフェンスなので脚力の消耗やリスクも伴いますが、ベンチーメンバーをフル活用する事で常に激しいディフェンスを表現する事は可能ですし、高い基準でのディフェンスを志向する事でチームの成長速度も加速するのではないでしょうか?
以前、私がアソシエイトとして関わる一般社団法人Next Big Pivotの催しにて、オーストラリア国内トップリーグNBLの事務局長とスカイプを通じて講演をして頂いた際、2024年のオリンピックで金メダル獲得を狙っている構想が紹介されています。
オーストラリア代表のバスケットボールは、常にアメリカ代表チームを倒す事から逆算しているとも考えられ、日本戦でのフルコートディフェンスは先を見据えた取り組みであったのではないかと感じています。
2019年にはアメリカ代表チームを招待しての国際親善試合も企画されており、オーストラリアのバスケットボールの動向は世界の中でも注目を集めそうで、これからも、意欲的な戦術に数多く挑戦していくのではないかと感じています。
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