マンツーマンの秘訣!勝つためのディフェンスとは?基礎練習と戦略すべて教えます!
小中学生でゾーンディフェンスが禁止されたことにより「マンツーマン」という高度なディフェンス指導が求められるようになりました。
マンツーマンディフェンスは細かい基準規則があるため、子どもたちに理解・習得させるにはとても時間がかかります。また、経験がない指導者や保護者だと「どのように伝えたらいいのかわからない」と悩むひとも多いようです。
実際に、マンツーマンディフェンスを指導する現場では、以下のような声があがっています。
- 生徒たちへ思うように伝わらない
- 何から練習させたらいいか分からない
- 自分の指導があっているのか自信がない
- 強豪チームがどんな練習をしているのか知りたい
- ポイントが伝えきれないので教材をもちいて練習させたい
今回は指導者の悩みを解決するために、マンツーマンディフェンスの基礎練習に加え、勝利に導くディフェンス戦略について紹介します。
プロバスケットボールのコーチである星澤純一先生の指導の様子をまじえながら、各練習のポイントまで詳しく解説!
マンツーマンディフェンスの指導になやむ人や、チームのレベルをあげたいと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
※星澤純一のマンツーマンディフェンスとは?
マンツーマンディフェンスとは?
そもそもマンツーマンディフェンスとは、バスケットボールにおける守備方法のひとつです。
「エリア」を守るゾーンディフェンスに対し、マンツーマンディフェンスは「特定の人」を守ります。状況に応じてハーフコートとオールコートを使い分けますが、どちらにおいても想像力や判断力、1対1スキルを高レベルで備えておくことが必要です。
2015年にJBA(Japan Basketball Association:日本バスケットボール協会)からマンツーマンディフェンス推進の取り組みが発表されて以降、15歳以下のゾーンディフェンスが廃止されました。
この施策をうけて、いま小中学生における個々のディフェンス強化が注目されています。
ディフェンス強化が勝利につながるってホント?
ディフェンスを強化すると、以下のようなスキルを得ることができます。
- 粘り強さ
- 予測する力
- チームの協調性
これらのスキルを習得しているチームは、得点力のあるスター選手がいるチームに匹敵するほどのパワーを発揮できるのです。すなわち、攻撃力が伸びなやむチームであっても、ディフェンスを強化していれば強豪チームに勝てる可能性が十分あるということです。
バスケをはじめとするどのスポーツにおいても、得点をあげることだけが大切ではありません。守りぬく勝ち方があることを選手に理解させ、粘り強さや助けあいといった「ディフェンスの楽しさ」を伝えることが、勝利につながる第一歩になります。
ディフェンスで勝つために意識するポイント
バスケの試合においてディフェンスで勝つためには、いかにオフェンスに余裕のあるシュートを減らせられるかがポイントになります。相手に正しいシュートフォームを取らせないのはもちろん、精神的プレッシャーを与えてあせったシュートを打たせるのも効果的です。
たまに「シュートを打たせない」ことを目標にするチームもいますが、この目標をやり遂げるのはなかなか難しいもの。しかし、余裕のあるシュートを減らすディフェンスであれば、チームの協力次第で取り組めそうですよね。
ディフェンスで相手に勝つためには、シュートを打たせないのではなく、機会をへらす。ただそれだけで良いのです。
オフェンスの「時間」をうばうマンツーマンディフェンス
余裕のあるシュートを減らすためには、オフェンスの「時間」をうばうディフェンスがオススメです。
バスケットボールのルールには、攻撃における制限時間がもうけられています。具体的には、オフェンス選手がボールを保持してから「24秒以内」にシュートを決める、もしくはリングにボールを当てなければ相手ボールになるというもの。
この限られた時間に着目し、戦略的なディフェンスをすることで24秒しかない時間を極限までうばう練習に取り組みましょう。攻める時間が短くなればなるほど、オフェンスは焦ります。そんな状態でシュートを打ったとしても、入る確率は高くありません。
ここからは、相手の時間をうばうことに注目したマンツーマンディフェンスについて、具体的に解説します。
マンツーマンディフェンスの5原則
まず、マンツーマンディフェンスをするうえで、大切にすべき5原則を説明します。
- ポジション
- ビジョン
- スタンス
- コミュニケーション
- ボックスアウト
これらの内容について、具体的に見ていきましょう。
1.ポジション(位置)
マンツーマンディフェンスの大事なポイント1つ目は「ポジション」です。オフェンスに対して、どこに位置するのが効果的かを考えたディフェンスを心掛けます。
マンツーマンは自分のマークマンをチェックすると同時に、ボールの位置を把握したポジショニングが必要です。パスがまわるたびに位置を考えるのは難しいかもしれませんが、移動のポイントさえ押さえていれば、自然と適切なポジショニングができるようになります。
相手の攻撃時間をうばうためにも、戦略的な位置取りは大切です。
2.ビジョン(視点)
マンツーマンディフェンスの大事なポイント2つ目は「ビジョン」です。ディフェンスをするときは、相手の「目・お腹」に注目すると、つぎのプレーが予測できると言われています。
相手の目は、視線による予測。お腹(おへそ辺り)は、身体の方向による予測です。相手のプレーが読めると先回りしたディフェンスができるのに加え、ディフェンス能力の向上にもつながります。
マークマンを好き勝手に行動させないことで、思いどおりに攻撃時間を奪うこともできますよね。プレーの予測はメリットしかないので、日頃から相手の目・お腹を見るトレーニングをしておくのが良いでしょう。
3.スタンス(基本姿勢)
マンツーマンディフェンスの大事なポイント3つ目は「スタンス」です。
マンツーマンは自分のマークマンがいるとはいえ、ヘルプに出ることが必要不可欠。急なヘルプにも対応できるよう、正しいスタンスをとっておくことが大切です。
チームディフェンスができるチームは、オフェンスにとって脅威的な存在になります。また、チームで協力すれば、オフェンスの攻撃時間をうばうことも難しくないはず。とっさの判断で動けるようにしておくためにも、スタンスづくりは重要ポイントであるといえます。
4.コミュニケーション
マンツーマンディフェンスの大事なポイント4つ目は「コミュニケーション」です。バスケットボールに限らず、コミュニケーションはスポーツ全般で大事とされています。
コミュニケーションが取れているチームは結束力があり、レベルの高いプレーを繰り広げられるのに対して、声掛けがないチームは攻守ともにプレーが弱々しいのが特徴です。言いかえると、コミュニケーションの改善がスキル向上につながるということです。
5.ボックスアウト
マンツーマンディフェンスの大事なポイント5つ目は「ボックスアウト」です。バスケットボールでは、リバウンド数と攻撃回数が比例しているといっても過言ではありません。
チームの攻撃回数を増やすためにも、相手の攻撃時間は24秒以上あたえない。すなわち、相手がシュートを打ったあとは、それ以上ボールを渡さないことが大切です。
そのためにも、ボックスアウトをしっかりおこない、リバウンドを確実にとることを意識しましょう。
マンツーマンディフェンスのチーム戦術
マンツーマンディフェンスにおけるチーム戦術について説明します。
マンツーマンでは、ボールの所在に応じてディフェンスの呼び名が変化します。ここでは、具体的な呼び名とあわせて、それぞれの役割をチェックしておきましょう。
1線:ディレクションが大切
1線とは、ボールマンにつくディフェンスのことを指します。ポジションは相手の正面に付くのではなく、ディレクションする(行かせたい方向をあける)ことが大切です。
プレーを予測するためのビジョンポイントは、相手の目やおへそあたりを見ること。また、簡単に抜かれないためにも、相手とワンアームの距離をたもつことを意識しましょう。
2線:ディナイディフェンスで封じる
2線とは、ボールマンの両隣にいる選手をディフェンスすること。ショートパス1回でとどく範囲に位置することから「1パスアウェイ」ともいいます。
2線のディフェンスは、ディナイディフェンスで相手のうごきを封じることが大切です。ディナイができないチームは、ディフェンスが弱いといっても過言ではありません。マークマンを起点として、ボールとリングそれぞれを結んだ直線のあいだにポジショニングすることで、効果的なディナイをすることができます。
もし、しっかりディナイができていれば、オフェンスはボールをもらうためにブイカット(ディフェンスを一度押し込んで外にでる方法)をするしか手段がなくなりますよね。ブイカットでパスをもらう方法は、通常よりも手間と時間がかかります。
ディナイディフェンスは、最初に伝えた「時間をうばう」点において、とても効率的なディフェンスであるといえます。
3線:ヘルプディフェンスが最重要ポイント
3線とは、2パスでとどく位置、すなわちボールから一番遠いところにポジショニングしたディフェンスを指します。ボールマンから距離があるため見落としがちですが、マンツーマンではとても重要なポイントになります。
3線の役割は、ヘルプディフェンスです。2線のディナイディフェンスが抜かれたときに対応できるよう、自分のマークマンからは少し距離をおいてポジショニングします。
ちなみに、3線ではボールマンからダイレクトにパスが回ることは多くありません。そのため、試合を眺めるつもりで心に余裕をもち、ボールマンの目をみてゲーム展開を予測できるとディフェンス力がグンとアップします。
ポジション移動がスムーズにできるかがディフェンスの鍵
バスケットボールは攻撃展開がとても速く、パスが回るたびにディフェンスのポジションも目まぐるしく変化します。そのポジション移動をスムーズにできるかどうかが、ディフェンス上達の鍵になるのです。
そのためにも、ディフェンスの基本動作やステップといった基礎トレーニングをすることにくわえ、日頃からチーム内の声掛けにも目を向けることが大切なのです。
※もっと詳しくマンツーマンディフェンスを知りたい方はこちら↓
マンツーマンディフェンスが上手くなる!基本のディフェンスドリル5選
ここからは、マンツーマンディフェンスの基礎トレーニングとして、オススメのディフェンスドリルを紹介します。ぜひ普段の練習に取り入れてみてください。
1.ディナイディフェンス
まずは、2線のポジションに付くことを想定したディナイディフェンスです。
- ボールマン(トップ)
- オフェンス(45度)
- ディフェンス(2線)
上記3名で、( )内の位置からスタートします。
また、正しいディナイスタンスをとるためにも、ディフェンスは以下のポイントに注意しましょう。
- パスコースを遮断するように片腕をのばす
- のばした腕の手のひらはボールマンへ向ける
- もう片方の腕はファール防止のため曲げておく
この状態でオフェンス選手に約5秒間うごいてもらい、ディナイディフェンスをします。
ここでのポイントは、ウラを守りすぎないこと。もしウラを取られたとしても、実践ではヘルプがいるので問題ありません。ウラを気にしすぎるがあまり、オフェンスと距離があいてしまうほうがミートされやすく危険です。
- ディナイでしっかり付いていく
- オフェンスにミートさせない
- ウラは気にしなくて良い
上記3点を意識したディフェンス練習を心掛けましょう。
2.ボディーチェック
つぎに、3線のポジションで使えるボディーチェック(身体をつかったブロック)の練習です。
- ボールマン(トップ)
- オフェンス(エンドラインあたり)
- ディフェンス(ローポスト、ピストルスタンス)
先程と同様に、上記3名で( )内の位置から練習を開始します。
練習の流れは、以下参考にしてください。
- オフェンス:エンドライン付近からポストにあがる
- ディフェンス:あがってきたオフェンスにボディーチェック
- オフェンス:切り返して逆サイドへ流れる
- ディフェンス:ピッタリくっついたまま流れる
まず、ディフェンスはローポストに位置し、ピストルスタンスを取ります。その状態で、あがってきたオフェンスに対して、身体をぶつけて進行方向をふさぎましょう。
このとき、ボディーチェックはディナイで出していないほうの腕をつかうこと。チェック後も、ウラを取ろうとするオフェンスにシール(ぴったりくっつくこと)し続け、自由にさせないよう意識してください。
一連のながれを上手くするためにも、以下のポイントを押さえておきましょう。
- ・片手でおさえる
- ・低い姿勢でしっかりぶつかる
- ・ウラへ流れるときはサイドステップ
バスケットボールは、身体接触があたりまえに起こるスポーツです。確実に相手をブロックするためにも、練習ではぶつかることを恐れずにプレーすることが大切です。
3.ポスト前回り
3つ目のドリルは、ポストプレーをさせないためのステップ練習です。おもに3線のディフェンス時に活用できます。
- ボールマン(トップ)
- オフェンス①(45度)
- オフェンス②(ポスト)
- ディフェンス(ポスト、ディナイスタンス)
今回は4名による練習です。この練習は、ボールマンから45度のオフェンスへパスが渡ったときに、ポストマンを有利な状況にさせないことを目的としています。
ディフェンスの選手は、ディナイスタンスでボールマンをけん制しつつ、相手の前をまわることでポストプレーにつながるパスが出ないようにします。
前回りをするときのポイントは、ポストマンを押しながら素早くまわること。相手のひざを自分のお尻でおすイメージで重心をかけられると、ポストマンは自由な動きがしづらくなります。
また、誰がどこを守るのか共有するためにチーム内で声掛けができると、実践で連携が取りやすくなるのでオススメです。
4.ディレクションドリル
4つ目のドリルは、ドリブルの方向を限定させるディレクションドリルです。
- オフェンス(45度)
- ディフェンス(2線)
このドリルは2名で練習します。一連の流れは、以下のとおりです。
- ディフェンスからオフェンスへパスを出し、クローズドスタンスをとる。
- オフェンス:エンドラインの方向へドリブル。止めてピボット。
- ディフェンス:ドリブルが止まったら素早くつめる。
この練習では、ディフェンスがクローズドスタンスをとるとき、行かせたい方向へしっかりディレクションすることが大切です。オフェンスがドリブルを始めたら、プレッシャーをかけられるようシール(密着)しましょう。
このようにして、サイドラインやエンドラインへオフェンスを追い込み、プレイを制限させることをねらいます。相手をうまく追い込むには、最初のディレクションが正しくできるかどうかが鍵となります。
5.シュートブロック
さいごのドリルは、シュートブロックドリルです。オフェンスのシュート率を下げるためにも、身に付けておくのがオススメです。
- オフェンス(ノーチャージングエリアライン)
- ディフェンス(ハンズアップでオフェンスに付く)
オフェンスは、ノーフェイクでジャンプシュート。ディフェンスは、シュートコースを予測してブロックします。とても簡単なドリルですが、ブロックした手を振りおろしたり、シュートチェックしていないほうの腕で相手を押したりすると、ファールになるので注意が必要です。
しっかり声を出し、左右どちらの手でもチェックがいけるように練習することが大切です。
マンツーマンディフェンスを攻略するには!?
ここまで、マンツーマンディフェンスのポイントや具体的なディフェンスドリルについて紹介してきました。コツコツ取り組めばスキルアップが期待できるので、ぜひ普段の練習メニューにくわえてみてください。
今回紹介した練習方法やコツは、すべてプロバスケットボールチームの名将である星澤純一先生のノウハウをグッとまとめたものでした。しかし、これが全てではありません。今回の記事で紹介しきれなかった星澤先生が指導する強豪チームの練習内容は、ほかにもたくさんあります。
その内容がまとまっているのが「マンツーマン ディフェンスバイブル~ディフェンス基本編~」です。DVDには、今回の記事で紹介したもの以外に、以下の内容が収録されています。
- ディフェンスフットワーク3種
- ディフェンスドリル2種(チーム練習編)
- 実践アドバイス「ワンポイントレッスン」
マンツーマンディフェンスに欠かせないステップのフットワークや、チームの連携をアップさせるためのディフェンスドリルなど、実践でつかえるメニューが盛りだくさん!また、すべて選手による実践形式動画なので、指導のイメージがわきやすいのが魅力的です。
さらに、星澤先生が選手一人ひとりのクセや小さなミスに対して的確なアドバイスをしている様子まで収録されています。「どんな伝え方がいいかな」と悩む指導者のタメになること間違いありません。
チームを強くしたいと悩む指導者はもちろん「強豪チームのノウハウを知りたい」「+αのコーチングが知りたい」という人にもオススメです。マンツーマンディフェンスの攻略にむけて、ぜひ参考にしてみてください。
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